まず YMO がカヴァーした曲が『ウォンテッド』であることに注目しました。この曲でピンク・レディーは好きになった彼が変装の名人であると歌っています。 それは片岡千恵蔵が演じた映画シリーズ『多羅尾伴内』、別名「七つの顔を持つ男」へのオマージュでした。そして、多羅尾伴内という名前は大瀧詠一がアルバム『LET'S ONDO AGAIN』の編曲のクレジットで使った名前でもあったのです。大瀧は YMOがデビューした同じ月にそのアルバムを発表します。このアルバムは大瀧が日本コロンビア内に設立したナイアガラ・レーベルの不振を解消するために、コミックソングやパロディソングを中心に作られたと語られているものです。
しかし、本当にそうなのでしょうか? 確かに、 A面の最後の曲が『ピンク・レディー』という曲名で彼女らを讃える曲であったり、B面1曲目『河原の石川五右衛門』がピンク・レディー『渚のシンドバット』の替え歌であったりする。かなりめちゃくちゃな作品です。それでもただのパロディであるはずはないのです。そのセールス惨敗のあと、大瀧は松本隆とタッグを組みアルバム『A LONG VACATION』の制作に取り掛かります。そのアルバムは後にミリオンセラーを記録しています。