ハノイの日本人

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2010年代の音。文字起こし。2

 

細野晴臣さんが InterFMでやってる番組『DAISY HOLIDAY! 』のテイ・トウワさん、砂原良徳さん出演回を文字起こししています。3回ほどに分けると思いますが、1回目は下のリンクから読めます。現在の音は、立体的にデザインされた音で、左右の広がりが凄いという話がされています。これ、わかりやすい例を出します。

 

2010年代の音。文字起こし。 - ハノイの日本人

 

 

 

ビートルズ『Come Together』の2009年リマスターと今年アップされたMVの音。別に2009年版の音が悪いわけじゃない、これもいいですよね。で、ギターがどこで鳴ってて、ドラムがどこで鳴ってて、という感じで聴いていきます。頭の中で音像をイメージするんです。全体的にはボーカルを中心にして真ん中に音が集まってますよね。新しいのはもっと広がって聴こえませんか? 耳で聴いてるより、頭で聴いてる感じがする。

 

まず一つ一つの楽器を聞き分けられるよになること。そして、それぞれの音の質感を感じられるようになること。その辺りが意識できるようになれば、音楽が立体的に聴こえるようになるはず。音像が立ち上がる。で、その技術はこれからのミュージシャンが持っていて当然の前提となる。まあ音がわからないで威張ってるプロデューサーも沢山いるでしょうけど。

 

 

細野:でもこの音楽ってヘッドフォンすると、その世界が見えてくるじゃん。

テイ:うん、わかりますね。

砂原:で、自分のやったのを聴くと「うわっ、こんななんだ」と思うことの方が多いですね。

細野:(笑いながら)それは楽しいね。

テイ:僕もほぼ仕上げのときに初めて。シッツェンハイザー(?)とかでして。ちょっと長かったなーとか。

細野:はっはっはっは。そういうこと?

テイ:もういいや!

砂原:短いとあと、レベル入るんですよね。

テイ:そうなんですよ。短いと入れれる。ぶっこめるという。

細野:なるほど。

テイ:大きくしたヤツは特に短いこと、ディレーション気にするという。近年は。

細野:うん、うん、うん。なるほど。

テイ:あとちょっと、昔は音多かったなと。反省してる。

細野:ああー、それはね。

砂原:特に打ち込みは整理しやすいですから。効率的に、この音を出すんだったら、この音は出さなくていいとかってプログラムできるんで。生なんかよりは効率的に鳴らすことができる。

細野:うん。そうだよね。

テイ:画面で観て・・・

細野:視覚的に。

テイ:そうですね。小山田くんもそうだ。結構うちら3人・・・

砂原:縦ラインを観て、ダブってるのを消していく。

細野:なるほど。おもしれー

テイ:勝手に消しちゃったりとか。(一同笑い)。忘れてんじゃねーか、まりんとかって消す(笑)。その瞬間に何効かす。1個とか2個とか。ベースここいらないなとか。

細野:おお、細かいね。

テイ:それが音に出てないんだったらしょうがないですよね。

砂原:いや、出てると思いますけどね。出てますよ。

テイ:そうかな。

細野:うーん、勉強になるな。

テイ:いえいえ、そんな。打ち込みの神様を前にね。

細野:全然ダメよ。若い頃は、20代の頃は「10年早いから受けないよ」とか注意されたの。今、10年遅くて受けない。(一同笑い)

砂原:そんなことないと思いますけどね。

細野:いや、出遅れてんですよ。本当に。

砂原:あと打ち込みじゃなくても、生でも、音楽のジャンルとか、リズムとか、流行りもあるんですけど。それよりも音像が一番時代を象徴してる感じがするんですよね。

細野:そう。2010年代もそろそろ終わるけど、音像の時代ですよね。

砂原:そうですよね。ですから、音像が今であれば、どんだけ演奏が古くても新しい。

細野:そうなんだよ!

砂原:こないだ幸宏さんの『Saravah! 』をマスタリングしたんですけど。あれもその考え方に沿ってやったんですよね。

細野:『Saravah! 』もよかったよ! ちゃんと聴こえた。全部。

砂原:それは気にしてやりました。

 

Saravah Saravah !

Saravah Saravah !

 

 

テイ:あれミックスも飯尾さんがやり直して。ミックスもよかった。

細野:ミックスもよかった。

テイ:あんまりやることないって言ってたもんね。

砂原:そうですね(笑)。

細野:最近のユキヒロの中じゃ凄い好きだな。最近じゃないけどね(笑)。

砂原:聴こえがよくなった分、周りから聴こえてくるのは、こんないいアルバムだったんだって。

細野:それはリメイクって言うか、リマスターって言うか、甲斐があるよね。

テイ:『サンセット』聴きません? 細野さんのベースが聴きものという。

細野:ああ! 僕もそれね、ベースを聴いちゃったよ。好き(笑)。

砂原:全体的にベースはさっきの皿の話じゃないですけど、なるべく。

細野:うん、うん。

テイ:でも、これこそ今のクワイエット・ストームじゃないですか?

細野:そうだね。横に広がってる(笑)。

砂原:横に広げました。

細野:まりんのせいだ(笑)。

砂原:ユキヒロさんとビートニクスのツアーのときに、そういうことを話してて。ノスタルジーだけじゃなくて、今新しくやるなら新しい物としてやってほしいと伺ってたんで。じゃあ、そうしようということになったんですけど。

細野:正しいね。今、昔のを引っ張り出してきて、リマスターするのは大事だよ。YMOをそうだったし。

砂原:ちょっと前に、白黒の写真とか、フイルムとかに・・・

テイ:ああ、着色?

砂原:着色して「うわっ何だこの感覚!」ってそれにちょっと近いのがあるんですよ。

テイ:そうかもね。

細野:あるね。ドキドキとするんだよね。

テイ:10年前、20年前のリマスター技術ではできなかったものがあるもんね。

砂原:ありますね。変わってないように見えて実は、凄く変わってる。

細野:凄く変わってる。遠くから聴いてるとわかんないけど。

テイ:10年くらい前も、ヒスノイズ取るくらいで「うわっ」とか言ってましたけどね。カセットとかのね。

細野:そういう時代だったね。

テイ:今はもうちょっと音像をいじれるって言うか。

細野:そう。それがやっぱり次元が変わったけど、もう一つ思うのは、これは完成形の音像だと思って。これから先どこ行ったらいいの?って(笑)。

砂原:どうなるのかな?と思いつつやってるんですけど。

細野:そうなんだよね。

砂原:まあ、どんな物でもそうなんですけど、行くとこまで行くと言うのが全てそうなんですよ。

細野:そうだね。(笑いながら)本当だよ。人間て止まんないわ。

テイ:まりんの方が僕よりも、ミックスとか、マスタリングとか、ね? 考えてる。

砂原:気にしてはいますね。

細野:それはもうマスタリングのプロだよ。

砂原:ええ(笑)。全然そんなことはないんですけど。

テイ:僕はまりんがいるんで考えなくていいって。

細野:いいねー、僕もそうしよう。次のやつは(一同笑い)

砂原:いやいや、欲求だけですよ。こういう風に聴きたいって。

細野:おんなじ。感覚でしかないけど、例えば、2年前の音聴くと「あっこれ違う!」とかね。感覚じゃない。音の。

砂原:そうだと思います。

細野:それが凄く差があって。それで僕はドキドキしてたわけ。ワクワク、ドキドキ。何聴いてもすげーと思って。

砂原:ええ。ただ、このことって口で言い表しにくいじゃないですか?

細野:そう、そう。

砂原:ここが赤くなるのが今っぽいからもっと赤くって言う、そんな簡単なことじゃない。だから、人に言ってもなかなか伝わりにくくて。テイさんとよく言ってたのは、音圧感みたいなものはちゃんとキープしようと、META FIVEのときは言ってたり。あとは左右の広がりだったり。

 

 

細野:例えば、昔だったらコンプレッサー使うじゃない?

砂原、テイ:はい。

細野:そうすると音圧は出るけど、ヘッドフォンで聴くと揺れるの。ブーン、ブーン。今の音楽は音圧があっても、ヘッドフォンは揺れないの。

砂原:そういうこともできますね。

テイ:それ倍音のコントロールがうまいということですか?

細野:倍音なんだよ。倍音が肝なんだよ。

テイ:ですよね。

細野:その分析は昔にできてて、それが商品化されてるんでしょ。例えば、Macについてるガレージバンド。あれでさえ、そういう音になってるから。

砂原:みんな開発してる人は意識するんだと思うんですよね。今のコンプレッサーの話じゃないですけど、例えば、圧縮するとその部分は圧縮されるんで。ヘッドフォンがブルブル震えちゃうんですけど。水が圧縮される感じと、蒸気で圧縮される感じでは違うじゃないですか。

細野:なるほどね。

砂原:水だと強すぎるから、これ蒸気にしたいんだということも、イメージとしてはできるんですよね。蒸気だと圧力はあるんですけど、そんなに密閉感はなくすことはできたりとか。

細野:透明なままだよね。そう、透明感ってのはあるよね。

砂原:ありますね。湿度が高いと遠くまで景色は見えないし。色もはっきり見えないんですけど。それを視界を綺麗にすることもできたり。

細野:今のテクノロジーは、例えば iPhoneもカメラ2つ着いてるでしょ? あとで遠景をずらしたりとか。

テイ:あとでピントを変えるとか。

細野:そういうことに近いよね。(つづく)