ハノイの日本人

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映画『リズと青い鳥』を観た。

 

 

 

山田尚子監督の映画『リズと青い鳥』(2018年)は、テレビアニメ『響け!ユーフォニアム』の成功を受け、そのシリーズと継続して京アニで制作された作品です。原作は武田綾乃の小説で、それをコミック化、さらにアニメ化したものとなっています。

 

 

例によって以下は映画を観てから読んでください。現在アマプラで観られます。

 

 

 

 

 

テレビアニメ版でも語られたように、北宇治高校の吹奏部には、前年に2年生と1年生の対立があった。そして次の年にも余波が残り、新入部員の1年生も巻き込んだ事態の収拾がテーマとなった回があった。上の動画でも紹介されています。

 

追記:登場人物の学年を間違えてた。修正しておく。

 

 

具体的に言うと、真剣に演奏に向き合わない2年生に怒った1年生の半数が退部した事件があったのだ。中学時代から仲良し2人組、当時1年生だった鎧塚みぞれと傘木希美の間にもヒビが入る。

 

この映画はそれから2年後、3年生になった2人を主人公にしたスピンオフで、2人の関係が大きく変わる瞬間を切り取り、そこに向けて全てが作られているのです。

 

それは競技において一番美しくもあり、一番残酷な瞬間でもある、才能の開花の瞬間が描かれている。だからこの作品はアニメファンだけでなく、スポーツ選手やミュージシャンが観ても面白い作品となっている。

 

 

はっきり言って、私はめちゃくちゃ興奮した。素晴らしかった。でも実のところ、この映画を観るのに、かなり苦労もしたのです。公開当時、アニメファンの間で話題になっていたので、作品の存在は知っていました。だけど観なかった。日常系の京アニという先入観があったから。観ても何も起こらないだろうと(本当はいろんな作品がある)。

 

 

今回、映画館で『きみの色』(2024年)を観て、山田監督の作品に興味を持ちました。なのに、それでも、この『リズと青い鳥』の前半を観るのに3日かかりました。やはり映画館に閉じ込められ、逃げられない環境で90分観るべきだった。

 

違うんですよ。説明します。映画『リズと青い鳥』は前・後半90分でお送りします的な作品でした。静かな前半、そして後輩の存在をきっかけに物語が展開しだす後半。静と動、詫び寂び? 少し違うか。とにかく後輩(認めてくれる存在)によって、彼女は変わりだす。

 

 

要するに、私がじれた前半は全て、後半に起きることの準備として描かれていました。その1点を目掛けて計算され尽くした表現だった。最後まで観てやっとわかった。これを理解するかどうかで作品の評価が変わるのです。

 

私は『リズと青い鳥』を観たあと、今度は通してもう一度見直し。さらに、テレビ版と劇場版『輝け!ユーフォニアム』、さらに『聲の形』、『平家物語』も観ました。偉いでしょ?

 

 

もう少し内容について書きます。内向的なみぞれは、中学時代に唯一声をかけてくれた同じクラスの希美に誘われ、吹奏部に入る。そしてオーボエの演奏を高校でも続けている。しかし誘った希美は部内の対立で辞めてしまった。テレビ版で描かれたように後に戻るのだが。彼女を中心にして生きていたみぞれは混乱するのだ。

 

映画では、童話『リズと青い鳥』をテーマにした楽曲が、彼女にとって最後のコンクールの自由曲に選ばれており、その物語がみぞれの成長と重ねられている。

 

その物語は、嵐で傷ついた小鳥が、リズによって助けられ、元気になって旅立つまでが描かれている。仲良くなったリズと小鳥が別れるまでの話なのだ。みぞれと希美も別の道を行くことになるのか?

 

そして『リズと青い鳥』という楽曲には、みぞれが吹くオーボエと、希美が吹くフルートが掛け合いをする、第3楽章があった。2人はこの演奏で対決することになる。それだけではない。2人はさらに言葉でも自分の思いをぶつけ合う。山田監督は自立した大人がどういうものであるかを描いている。

 

 

私は凄く興奮した。爆音上映でもいいから映画館で観たいよ。でも、いくつか批評や感想を読んだが、この映画の構造は説明されていないようだ。細部について取り上げ、いちゃもんつけてるのまである。完全にずれてる。

 

ようやく映画『きみの色』(2024年)という作品のことがわかった気がする。その映画の主人公3人は、明らかに山田尚子、吉田玲子(脚本)、牛尾憲輔(音楽)のことだろう。『リズと青い鳥』をつくった過程を新たに作品化し、外部からその状況を俯瞰して観る。

 

京アニという強固なカラーがある製作集団の中で、はみ出していく2人と、外部1人による作品づくり。楽しくもあり、窮屈でもあった京アニでの経験。それを総括したのが映画『きみの色』なのだと思う。もう1回観に行くか。