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ジャニーズの教科書。第1章「トップグループ制」②

ジャニーズのヒット曲の歌詞を分析したところ「トップグループ制」というシステムがあることがわかりました。それはジャニーズ・タレントの世代交代を行うシステムだと前回解説しました。下のリンク先で読んでください。ところで、みなさんは深夜ドラマ『お兄ちゃん、ガチャ』を観ていますか? 目力が強いジャニーさん好みのタレント岸優太くんが出演していることでも注目なんですけど、他にも沢山ジュニアが出演していているんです。しかも、それだけではなくランク付けされてるんですよ。岸くんは「Sランク」。でも消されるジュニアもいて・・・この物語はフィクションなんですよね・・・・



◉ジャニーズの教科書。第1章「トップグループ制」①
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150302/1425298187



ジャニーズ事務所の中核戦略トップグループ制とは
1972年、郷ひろみはまだ新興のレコード会社だったCBSソニーからデビューしている。ちなみに、CBSソニー邦楽第1号アーチストは先輩グループ、フォーリーブスだった。そして、プロデューサーも彼らと同じく酒井政利だ。酒井は、最初のアイドルとも言われる南沙織で導入した方法「私小説路線」を基に郷の楽曲を制作する。その路線はのちに、酒井がプロデュースする山口百恵松田聖子などにも活かされて行くが、「南沙織が長女だとすると、長男は郷ひろみである」と語っている。(酒井政利著「プロデューサー」2002年、時事通信社


酒井のつくりだした私小説路線とは、タレントの「生地」を活かして行く方法で、タレントの等身大の成長を歌詞に取り入れて行くものだった。郷はデビュー曲からヒットを放ち、西条秀樹、野口五郎と共に「新御三家」と呼ばれるようになった。


郷のシングル曲で描かれた私小説路線が、後にジャニーズのグループに受け継がれる最初の物語となる。それは「少年から大人へ」という成長の物語だ。タレントの成長に合わせて歌詞で描かれる人物も成長して行く。それは楽曲、タレント、ファンが共に成長して行くことを意味し、息の長い人気を保つタレントを育てることに繋がる。そして、その物語を受け継ぐ者こそ、ジャニーズ事務所のトップグループだった。

 
実際にはどのような名前でそのシステムが呼ばれているかはわからない。しかし、それは確実に存在する。トップグループの主な特徴を提示し、さらにその内容を解説して行く。


 ◎トップグループという、戦略的に用意された、年代ごとの中心グループが存在する

 ◎トップグループは18歳未満でデビューし、「少年から大人へ」の成長物語をCD、レコードで披露する。そして、少年と大人の「境」には、通過儀礼を表現した曲が用意される

 ◎70年代生まれで SMAP、80年代生まれで 嵐、90年代生まれで Hey! Say! JUMP が選ばれている

 ◎次のトップグループと世代交代をするとき、何らかの形で交代の儀式を行い、内外にそのことを伝える


ちなみに、1914年にスタートした宝塚歌劇団には、トップスターというシステムがあるが、それは80年代に入って確立されたものだ。宝塚では歌劇を演じる各組の主演男役とその相手役(ヒロイン)が固定されている。それは観客にわかりやすくスターを提示するためにあるシステムのようだ。

 
しかし、ジャニーズにおけるトップグループ制は、そのように明確な差別化を示すものではない。「現在のトップは嵐だ」というようにファンに公表されたものではないからだ。例えば、「SMAPと嵐、どちらがジャニーズのトップか?」という質問があったとして、その解答は世代によってもばらつきを見せることだろう。それでも、その答えははっきりと存在している。以下で証拠を示しつつジャニーズのトップグループ制をさらに解説して行く。



光GENJI:1987年8月デビュー(平均年齢16.0歳)
男闘呼組:1988年8月デビュー(平均年齢19.5歳)
◎ 忍者:1990年8月デビュー(平均年齢21.0歳)
SMAP:1991年9月デビュー(平均年齢16.8歳)
TOKIO:1994年9月デビュー(平均年齢19.4歳)
◎ V6:1995年11月デビュー(平均年齢18.7歳)
KinKi Kids:1997年7月デビュー(平均年齢18.0歳)
◉ 嵐:1999年11月デビュー(平均年齢16.6歳)

 
平均年齢18歳未満でデビューしているグループ、光GENJISMAP、嵐 がそれぞれに大ブームを起こしたのは、偶然なのだろうか? 私はそう思わない。そこに明確な理由があると考える。それは同年代の他のグループとの関係を見ることでよりはっきりとわかる。

 
次の表『現在ジャニーズで活動するグループ』は、現在活動するグループを生まれた年代によって3つに分けたものだ。SMAPは70年代生まれのメンバーを集めたグループとして最初にデビューし、3年後に次のグループ TOKIO がバンド形態でデビュー。そして、ダンスミュージックに強さを発揮するレコード会社、エイベックスからV6 がデビュー。さらに1年を空けて、デビュー前に少年の心情を歌ってきたKinKi Kids が、少年時代の終わりを告げる曲でデビューしている。それぞれに別の個性を与えられたグループなのだ。


◉現在ジャニーズで活動するグループ(1990年以降デビュー組)
 ◎ 70年代生まれ *カッコ内はデビュー年
 SMAP(91年)、TOKIO(94年)、V6(95年)、KinKi Kids (97年) 
 ◎ 80年代生まれ
 嵐(99年)、タッキー&翼(02年)、NEWS(03年)、関ジャニ∞(04年)、KAT-TUN(06年)
 ◎ 90年代生まれ
 Hey! Say! JUMP(07年)、NYC(10年) 、Kis-My-Ft2(11年)、Sexy Zone(11年)、A.B.C-Z(12年)、ジャニーズWEST(14年)
岡田准一は1980年生まれ
Kis-My-Ft2光GENJI 以来の世代またぎグループ
Sexy Zoneは平均年齢14.4歳でデビュー(トップ候補ではない。理由は第5章で解説)。メンバーのマリウス葉は2000年生まれ

 
SMAP以降は、各年代で最初にデビューするのがトップグループとなっている。70年代生まれで成長物語をシングルに記録したのはSMAPだけである。それ以外のグループは平均年齢18歳以上でデビューし、成長の変化を歌うことがない(例外としてKinKi Kidsはアルバムに少年時代の曲を収録)。各年代で最初のグループがデビューし、3年のブランクが空けられているのは、SMAPがデビュー時に売れなかったことがきっかけだが、それが後にも活かされた。

 
各年代のトップは70年代生まれがSMAP、80年代が嵐、90年代がHey! Say! JUMPである。そして、現在のトップは2008年にSMAPからトップを引き継いだ嵐である。さらに、Hey! Say! JUMPもすでに通過儀礼を済ませた大人のグループであり、数年内には嵐とのトップ交代が行われることだろう。

 
2008年9月、嵐は国立競技場でライブを開催した。実は2011年まで国立でのライブ開催は1年に1組のみ許可されていた。施設側が競技場の芝や近隣住民に配慮してそのように決めたと言われている。そして、それを儀式として利用したのがジャニーズだった。


国立霞ヶ丘競技場でライブを行ったアーチスト
 2005年9月3、4日 SMAP(単独コンサートは同競技場で初)
 2006年9月9、10日 SMAP
 2007年9月22、23日 Dreams Come True
 2008年9月5、6日 嵐
 2009年8月28、29、30日 嵐
 2010年8月21、22日、9月3、4日 嵐
 2011年9月3、4 嵐
 2012年5月26、27日 L'Arc〜en〜Ciel
 2012年9月20、21日 嵐
 2013年9月21、22日 嵐
 2014年 国立改修を前に、L'Arc〜en〜Ciel、ももいろクローバーZAKB48

 
単独アーチストとしては初めてSMAPがライブを行った「国立」。2005、2006年と SMAPが行い、2007年にはDreams Come Trueが行っているが、2008年にそこでライブを行ったのは、先輩グループSMAPではなく嵐だった。それはジャニーズ事務所のトップが嵐になったことを世間にお披露目する儀式であった。

 
光GENJIからSMAPにトップが交代したときには、CDでそのことが表現されている。光GENJIのシングル『WINNIG RUN』(1991年8月)がそうだ。光GENJIはトップとしての役割を果たし、ファンに手を振るウイニングランをしてトップ交代を告げた。そして、翌月には次のトップSMAPがデビューしている。

 
後から見ると、このような儀式が行われていたと気づくのだが、それはトップグループ制の存在に気づいたからで、特にそのような報道や発表があったわけではない。次にこれまでのトップ交代を紹介する。(つづく)