ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

新中野 イル ヴェッキオ ムリーノ。第3回

イタリアンのシェフになりたいという人がおられたら、新中野の「イルベッキオ・ムリーノ」を覗いてみてはいかがでしょうか? 私が東京にいた頃、田中シェフはコックの見習い、もしくはホールの募集をされていました。問い合わせてみてください。
連絡先:03−3380−0275 
住所:東京都中野区本町4−21−9 京マンション1階

◉これまでのインタビュー
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20080622/1214136775
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20080713/1215975862

東京の新中野にいた頃、毎週2回イタリアン・レストラン「イル ヴェッキオ ムリーノ」でおいしいランチを食べていました。前菜3種+生野菜、パスタ、デザート、コーヒー、、、これだけ盛りだくさんで1500円! しかも、前菜の3種はそれぞれ丁寧につくられた料理でしたし、コーヒーもデザートも、もちろん、メインのパスタも、田中シェフのこだわりを感じられる料理でした。ああ、この濃厚な味のプリンをいますぐ食べたい。

<このお店がおいしいのはなぜか?>
——私はイタリア料理を食べ慣れているわけではないんですけど、これまで食べて来たなかでは、いろいろやってるのはわかるけども、結局、味にはつながってないというか、、、。つまり、ここの料理はシンプルで味がしっかりしてると思いました。
田中:いま多いんですよ。ボヤけた味っていうのが。
——そうです。ボヤけた味っていう表現はすごくわかります。
田中:基本的にイタリアでは味はしっかりしているんです。ここの料理はイタリアで習ってきたものを主体にしていますから。フレンチの影響もありますけど。
——田中さんの作られたパスタで言うと、パスタとオリーブオイルと塩とで、すごくバランスが取れてる感じがします。
田中:そうですね。例えば、味を濃厚にするためには、、、塩を沢山入れるというのではないんです。ペペロンチーノなんかだと、さっと作れますけど。トマトソースなんかだと、非常に手間もかかりますから。シンプルですけど、ちゃんと手間ひまかけてるんです。
——やっぱり、そこなんですか? どこまで丁寧にやれるか?
田中:あっ、それは一番ですね。手間ひま懸けることによって、喜んでもらえるものを作るという。ランチだと朝から来て、2時間ぐらい仕込みをする、そして、またディナーはディナーで仕込みをする。そうなると、仕込みは1日中やってないとダメですよね。即席じゃないですからね。幸いにもいままで働いて来た店というのは、全部そういうところだったので。手を抜くことがなかったので。昔からのやり方を続けてる。だから、いまいろいろあるじゃないですか? 旬の料理、ブームがきてるとか。
——ありますよね。
田中:ああいうのは、ただのブーム。そういうブームでやってるレストランにイタリア人は行かないですし。昔ながらのやり方をやってるレストランに、こう一気に集まるんですよ。街の人たちは。
——街のレストランということですと、なぜ、新中野にお店を出されたんですか?
田中:それは、、、帰ってきて、いろんなお店で働いて行くなかで、やっぱり、他人の会社で働くとなると、それなりに制約があるわけじゃないですか? 売上をこれだけ上げなくてはいけない。そのためにはどうするか? そういうのは、ここでも一緒ですよね。でも、「もっと、こうした方がいいんじゃないか?」と提案した場合に、抑えられる。「それはお前、やり過ぎだ」と言われてしまう。だったら、自分でお店をやった方がいいんじゃないかと思い出して、それから物件を探し始めた。でも、やっぱりね、お金っていうのはすごい大きいわけですよ(笑い)。イスひとつにしても、もう少しお金があれば、自分の理想のものになる。でも、最初からそんなにはうなく行かないというのが、僕の人生ではいつもですから。自分で積み上げて、どんどんよくして来たわけです。そういうことが自信になるんですよ。こうしたい、ああしたいというのは、いくらでもありますよ。青山にお店をだしたい、西麻布にだしたいとかね。でも、逆にここにしたのは、あんまりイタリア料理のお店が多くないじゃないですか?
——はい。ないですよね。
田中:青山だったら競合店がいっぱいあるのですけど。ここだったら、地元密着型で、それこそイタリアの古い街の一角にある小さなレストランと一緒だと考えればいい。そこから、どこまで上がって行けるか、それしかないですよね。いかにしてレベルを上げて行くか? 内装もきれいにしなければならない。もちろん、料理の質も上げなければいけない。それには料理の素材もよくしなければならないから、値段も上げないといけない。そういうことも若干ついてくるんですよ。
——そうでしょうね。
田中:いい素材を使えば、おいしくなる。そういうのも若干はあるんですよ。でも、気持ちの問題もあるんです。「おいしくなれ!」って思って作っていれば、本当においしくなるんですよ。気持ちは凄く入りますね。最終的には人間対人間ですから。いくらいい素材を使って、いくらいい器材で調理しても、気持ちが入ってなかったら、絶対においしいと感じないんじゃないかって思うんですけどね。それはずっと思ってます。
都心にある店より、ある意味ここの方が厳しいですよ。青山に行く人なんかは、「ああ、ここが青山なんだー」とか思ってるわけですよ。なにを食べても、「これが青山の料理だー」って。それは完全に錯覚なんですよ。でも、地元の人が来るここなんかだと厳しいことも言われるんですよ。
——どんなこと言われるんですか?
田中:オープンしたときには、すべてについて言われましたよ。まず、「なんで、ここで店を開いたの?」とか。
——それは気になりますよ。単純においしいレストランができたというサプライズがあるからなんですけど。それは近所の方ですか?
田中:そうです。僕はここを見たとき、それまでいろんな場所を見たんですけど、ここを見て、「ここにしよう」って即決しましたから。
——ここは前はなんだったんですか?
田中:お寿司屋さんです。だから、まだ座敷が残ってるんですけど。
——じゃあ、だいぶ作り替えてあるんですね。そういう難しいことを言う人はいまも来てくれてるんですか?
田中:来てくださってます。
——じゃあ、いいじゃないですか。
田中:僕も味に関しては自信があるんですよ。もちろん、他にもおいしいところいっぱいあるでしょうけど。この辺りにはイタリア料理もないですからね。
——フレンチのお店がわりと近くにありますよね? ここからずっと北にずーっと歩いて行ったとこに。
田中:あそことはよく比較されたんですよ。本当に嫌っていうほど言われたんですよ。あそこはおいしいって。「勉強してきなさい」くらい言われて。
——それはないですよね。ここの方が絶対おいしいですよ。
田中:そういう人たちは来なくなりましたけどね。だから、「なんでここでやってるの?」という言葉をどうにか跳ね返したいとおもってるんですけどね。
——いや、そんなに悪い意味で言ってるわけではないと思いますよ(笑い)。
田中:僕はここの人間ではないですから、わからないんですよ。こうやってwakitaさんと話してみると、やっと刺激になってきますけど。(つづく)