ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

ジャニ友、HAL さん編。前半

また、新たな方の登場です。KinKi Kids ファンの HAL さんです。今回は フィギュアスケート を中心にお送りします。素晴らしい動画の数々をご覧ください。



——今回は moemarchさんの回にコメントをいただいたHALさんにお話をお伺いします。よろしくお願いします!
HAL:よろしくお願いします。


——moemarchさんのときのコメントでは、KinKi Kidsのライブに行かれたということでした。キンキのファンということでいいでしょうか?
HAL:KinKiのファンです。いいなと思った曲はCD買ったりもしてますが、ジャニーズでライブにまで行ったのは今のとこKinKiだけですねえ。


——好きになったきっかけはなんですか?
HAL:もともと彼らが出ているドラマやバラエティは普通に見ていて、シングルで気に入った曲は買っていました。
本格的にはまったきっかけは、『G album』からです。その年にリリースされた3枚のシングルがどれもいい曲だなと思ってて、それならいっそ全部収録されてるアルバムを買えばいいかと『G album』を手にとって。


——『G album』はシングルで言うと『永遠のBLOODS(G-mix)』『薄荷キャンディー』『心に夢を君には愛を』が収録されています。
HAL:1曲目の『Bonnie Butterfly』を聞いて、完全にファンになりました。ダンサブルなナンバーですが、刹那的な歌詞と哀愁のある二人の歌声がぴったりとはまっていて、いつ聞いても素晴らしいと思います。


——いきなり刺激的な音で始まるんですよね。おおっと思いましたよ。初めてのライブはいつですか?
HAL:これはKinKiのってことでいいんですよね? 2004年の『font de Anniversary』ツアーの名古屋ドーム公演です。


——2004年の年末から始まった KinKi のドームツアーですね。Wiki で見ると、ここから生バンド、生ストリングスの今のスタイルが始まったと書かれています。
HAL:そうです。生バンド・ストリングス導入は光一君の意向だったらしいですが、生演奏で歌えることがよほどうれしかったのか、とにかく剛君が生き生きしてて本当に楽しそうだったのが印象的でした。


——そういう意味でも2人は息があっているんですね。
HAL:ジャニーズのライブ自体初めてだったのでいろいろと新鮮でした。まず客電が落ちた時のペンライトの光の海に感動しましたね。
メインステージのほかにサブステージ2つにバックステージがあって、そのすべてをまんべんなく使って歌い踊り、しかもリフトを使ってかなり高い位置で歌ってくれたりと、どの位置にいる観客にも疎外感を感じさせない、飽きさせない演出に、ジャニーズってすごいなと思いました。


——ああ、そうですよね。私もバンコクの山Pのとき、目線が同じところまで来てくれる感覚は新鮮でした。
HAL:バンドなどのライブでドームや野外などの大規模会場だと、後列にサービスするのはアンコールの時くらいで、それ以外は後ろの方は置いてけぼりでモニターを見るだけだったりって結構あるので、それに比べるとなんてファンに優しいんだろうと。ジャニーズのライブって目で見ても音を聞いても楽しませてくれる複合型のエンターティメントですよね。


——他のジャンルの音楽も聴かれるのでしょうか?
HAL:個人的な好みではワールドミュージックやヒーリングミュージックが好きで、Lunasa や サラ・ブライトマン、シークレット・ガーデン、あと NHKの「シルクロード特集」をずっと見ていたので、その BGMを手掛けていた 喜多朗も聞いてました。クラシックだとバロック音楽の定番曲ですが、パッヘルベルの「カノン」が大好きで、いろんな演奏の「カノン」を買い集めてます。
Lunasaのアルバム「Red Wood」から「Temple Hill」。



——日本のものは?
HAL:J-POP だとヴィジュアル系が多いですね。有名どころだと L'Arc〜en〜Ciel や GLAY もライブに行きました。ラルクヴィジュアル系というと tetsuに怒られそうですが(笑)。


——ヒーリングからヴィジュアル系。広いですね。ヴィジュアル系はその頃だと、ファンがみんな手を前に出して、手のひらを差し出すみたいなのをやってたと思うんですけど、やりましたか?
HAL:やりました(笑)。腕が疲れましたけど。この振付け「捧げ」というらしいんですが、バンドによっては「ロックならこぶしを突き上げろ」ということで禁止の所もありましたね。でもラルクでは普通に「捧げ」やってましたけど。今思うと良かったんだろうか…。


——たしかに「捧げ」てますよね(笑)。
HAL:ヴィジュアル系つながりで T.M.Revolution も聞くようになって、彼のプロデューサーの朝倉大介さんがやってた access を聞き、そこから T.M.network も聞きました。TKサウンドTMN 時代が一番好みです。コンセプトアルバムだった『 CAROL 』は木根尚登さんが書かれた小説も含めていまだに大事に持ってます。
他にバンドではBUMP OF CHICKENも何枚かアルバム持っています。女性アーティストだったらレベッカcoccoや鬼塚ちひろが好きです。



——私もいろいろ聴く方ですが、HALさんの話を聞いてると、KinKiのファンもいろいろなんだと思います(笑)。私は朝倉大介がプロデュースしたFayray『YURA・YURA~Vibration』に驚いたことがありますよ。雛形あきこも彼でしたね。
HAL:Fayray 懐かしい。ミステリアスな感じの人でしたね。余談ですが、KinKiのデビュー前後の頃って音楽番組にトーク力が必要とされる時代で、TMR の西川君なんてそれに乗っかって出てきたようなものだともいえるんですけど、やはりファンの目から見ると「いじり」と「いじめ」の境界線ぎりぎりのものがあって、結構見てて悲しくなることも多かったんです。


——そうでした。売れたグループと同じようなタイプで、関西弁が話せる人たちがたくさん登場しましたよね。ヒステリック・ブルーとか。
HAL:ヒステリック・ブルーが関西人だったのは初耳です。
同じ関西弁でもKinKiの二人はおっとりしているというかあたりが柔らかくて、彼らと吉田拓郎さんが司会をやってた『LOVELOVE愛してる』に、自分の好きなアーティストが出演する時は楽しみに見てましたね。光一君司会だった頃の『 POP JAM 』も、彼だったら酷いことを言わないし、何かあってもフォローしてくれるだろうという安心感がありました。そのあたりもKinKiに好感を持った理由でした。


——HALさん、音楽以外の趣味もありますか?
HAL: スポーツになりますが、フィギュアスケートが好きです。


——フィギュア、いいですね! 私も日本にいるときは主要な大会をテレビで観ていました。HALさんにとってフィギュアの魅力はどのあたりなのでしょうか?
HAL:氷の上を滑走することによって地上ではありえない動きができるので、単純に見ていて楽しいというのがまず一番。それに下位の選手であってもその選手にしかできない演技というものが必ずあることも魅力です。


——そうなんですか。そういう見方もあるんですね。
HAL:もちろん応援している選手の順位が良いに越したことはないんですが、作品として素晴らしいと思える演技に巡り合えることが一番楽しみです。


——そうですね。私はサッカーファンなのですが、結果も大事ですけど、やはり素晴らしい試合に出会えたことの喜びは格別です。会場に足を運ぶのはそのためですよね。
HAL:下位の選手はテレビの中継にもなかなか映らないので会場じゃないと見られない場合も多いですしね。
あとクラシックからミュージカル、オペラ、ロック、ポップス、ジャズなど多種多様なジャンルの曲が使われていて、それらが全部同じ土壌で評価されるごった煮感が面白くて。

こういうのとか

こういうのとか

こういうのが


1度に見られる機会ってそうないじゃないですか。


——なるほど。コンサート的にも楽しめるのか。ロボットダンスみたいなのもあるんですね。会場にもよく行かれるんでしょうか?
HAL:試合のチケットはブームのおかげもあって取りにくくなり、なかなか行けてないですね。
アイスショーは年に何度か行っています。テレビの画面だとスピード感とか迫力と言うのはなかなか伝わらないので、実際に見てみると圧倒されます。特に五輪のメダリストになるような選手は、その場に立っただけで会場を支配してしまうオーラがあります。ひきつけられて一瞬も目が離せない。これは会場じゃないと味わえない感覚ですね。


——それは凄そうですね! サッカーでもありますよ。昔、国立で鹿島 VS マンU を観ましたが、そのときクリスチアーノ・ロナウドの普通のドリブルをする後ろ姿に見とれたことがあります。
HAL:訓練されたアスリートの動きって何気ないしぐさでも芸術的に美しいことがありますよね。逆にテレビで見るとすごくよく見えた選手が、会場で見るとそうでもなかった、ということもありますし、試合ではふるわなかった選手がショーだとものすごく輝いていたといようなこともあります。
話がそれますがジャニーズに所属していたフィギュアスケートの選手もいますよ。小林宏一(ひろかず)選手と言って、ジャニーズジュニアの頃は KinKiのバックにもついてました。光一君の舞台『 SHOCK 』の一番最初に出たDVDでローラースケートでスピンしてるのも多分彼です。



——そんな選手がいたんですね。
HAL:上のリンクはオーストリアで毎年開催されているアイスチャレンジという国際大会に出場した時のSPの映像です。手足が長くてダイナミックな動きが出来る選手でしたね。
彼は今『プリンス・アイス・ワールド』というアイスショーでプロスケーターとして滑っていますけど、やはり昔取った杵柄というか、群舞などでも一人だけ体のキレが違っていて、目がそこに行ってしまいます。集団の中でお客さんの目を自分に引き付けるにはどうしたらいいか、そういうアピールの仕方が自然と身についているんですよね。
ただアイスショーに関してはクオリティはピンからキリまであって、フィギュアに興味を持った人を連れて行くのをためらうショーもあります。学芸会の出し物の延長みたいなものもあるので…。エンターティメントという観点から行けばアイスショーというのはまだまだ改善の余地がある分野です。


——そんなに多くのアイスショーが行われていること自体知りませんでした。
それでは、フィギュアスケートのベスト演技をYoutube の映像から紹介してもらえますか。BEST5でいいでしょうか?
HAL:順位なんてそんなのつけられません! しかも各種目ごとに挙げてみましたが5つに絞りきれません。すみません。


——わかりました(笑)。では、いくつでも。
HAL:伊藤みどりさんとか荒川静香さんとかここに挙げていない選手でも素晴らしい演技はいっぱいあるので、かなり悩みます。


——伊藤みどりさん、私は昔、近鉄なんば駅でお見かけしました。ジャンプ力がある、技術力の高い演技で注目を浴びた選手ですよね?
HAL:どうしてなんば駅にいたんでしょう? 講演か何かでいらしてたんですかね?


——コーチとかされていたんですかね? 一応、選手たちと一緒のジャージを着てられましたよ。
HAL:でしたら山田満知子コーチの助手として選手たちを引率してたんでしょうね。本格的にコーチをされているわけではないですが、山田コーチの指導する大須のリンクにいらしたりして門下生には時々アドバイスしたり、試合にも顔を出したりされていたそうです。
フィギュアスケートに興味を持ちだしたきっかけは伊藤みどりさんでした。私が中学生のころに、伊藤さんがアルベールビル五輪で銀メダルを取ったんです。でも彼女の本当のすごさを知ったのはきちんとルールを勉強し、いろいろな選手たちの演技を見た後からです。
フィギュアスケートのジャンプは6種類。難しいほうから順に、アクセル・ルッツ・フリップ・ループ・サルコウトウループとなっているんですが、当時は男子で5種類のトリプルジャンプにプラスしてトリプルアクセルを跳べるのは、トップ選手のほんの一握り、女子ではトリプルジャンプは2・3種類がやっと、というレベルだった時代に、5種類のトリプル+トリプルアクセルまで跳んでしまった彼女は、時代を超越した選手でした。


——『エースをねらえ!』じゃないですけど、性別を超えた演技なんですね。
HAL:それにジャンプの質、高さと幅が綺麗に調和して、跳躍の動きそのものが芸術のレベルにまで昇華されています。後にも先にも彼女ほど美しいジャンプを跳ぶ選手はいないと思います。
 それほど他の選手が届かない高みにいるために、ジャンプばかりが強調されてしまっていますが、芸術的にも素晴らしい選手だと私は思います。この演技なんて曲の雄大さと彼女のダイナミックな滑りが組み合わさって一大スペクタクル映画みたいです。


◉1990年世界選手権 伊藤みどりFS「シェヘラザード」
 

 
——おおっ、これはいま観ても凄いw めちゃくちゃキレがある。完全にノッてますね。素晴らしい! 感動しますよ。そうか。山田コーチを最初に知ったのは、伊藤みどりさんのときだったんですね。
HAL:それではベスト演技のほうを。旧採点新採点入り混じってます。こうして挙げて見ると私はタンゴとフラメンコが好きなんですね。


◉女子シングル
サーシャ・コーエンアメリカ) 2004年世界選手権ショートプログラム(以下SP)「マラゲーニャ」


HAL:コーエンはトリノ五輪の銀メダリスト。以前から高い評価は受けていましたが、初めて世界選手権で表彰台に上がったのがこの大会です。最初から最後まで飽きさせない、人を引き付ける演技だと思います。これだけきびきびと踊れる選手は女子ではあまりいません。彼女は幼少時体操をやっていたこともあって、とにかくポジションが綺麗。ジャンプの後の両手を広げるポーズをチェック姿勢というのですが、それもばっちり決まっています。背筋が強くないとこうはいかない。あと滑ってない方の足をフリーレッグと言うのですが、彼女はそのフリーレッグの処理の仕方がとにかく美しい。スピンの時の足の位置やスパイラル(片足を高く上げて滑る技)の時のポジションは、彼女に限らずアメリカ女子は皆気を使ってますね。


アイスダンス
オクサナ・グリシュク&エフゲニー・プラトフ(ロシア) 1997年ヨーロッパ選手権オリジナルダンス(以下OD)「リベルタンゴ


HAL:アイスダンス史上初の五輪二連覇を成し遂げたカップルです。これは二度目の金メダルを取った長野五輪の一年前ですね。
二人の間に火花散る愛憎が見えるようで大好きなプログラムです。二人で組んで滑っているのに、相手を凌駕してやろうという気迫があり、殺気さえ感じます。この二人は一度も恋愛関係にあったことは無いのですが、それでもこれだけの雰囲気が作れることはアイスダンスという競技ではとても重要だと思います。 


◉ペア
シュエ・シェン&ホンヴォー・ツァオ(中国) 2003年世界選手権フリースケーティング(以下FS)「トゥーランドット


HAL:のちのバンクーバー五輪金を取るペアです。この時は世界選手権にアジアのペアとして初めて優勝しました。出てきたときは技術優先と言われた彼らがその技術の高さを残しつつ、これほど素晴らしい作品(プログラムという言い方をします)を残せるようになるまで力をつけてきました。ペアの名演技では必ず名前の挙がるプログラムです。
彼らに限らず中国ペアは本当に空間の使い方がダイナミックで、ツイストリフト(女性の体を回転させながら真上に放り投げる技)やスロージャンプ(男性が女性を放り投げるジャンプ)での高さは目を見張るものがあります。それに加えてこのプログラムは二人の間にながれる細やかな愛情と信頼関係がにじみ出てくるようで、この場にいて演技を見たかったなあとしみじみ思います。
 

◉男子シングル
アレクセイ・ヤグディン(ロシア)2001年世界選手権SP「革命(ショパン)」


HAL:ソルトレイクシティ五輪の金メダリスト。ヤグディンと言えばソルトレイクシティ五輪SPの『ウィンター』だろう、と詳しい人には言われると思うんですが、悩んだ末に『革命』に差し替えます。
この時、怪我もあって予選で出遅れたヤグディンが背水の陣で臨んだSPです。一人の選手が会場すべての観客を引き込み熱狂させるという点でこれに勝る演技は無いかと。とにかくすさまじい気迫でした。


高橋大輔(日本) 2010年バンクーバー五輪FS「道」


HAL:バンクーバー五輪で、日本というかアジア男子として初めて銅メダルを獲得した演技です。この後に行われ優勝した(こちらもアジア男子史上初でした)世界選手権のほうがミスが少なく良い演技だったと思うのですが、やはり五輪と言う特別な場でのことなのであえてこちらを。
人間の弱さも強さもすべてを包み込むような滑りだったと思います。深刻な怪我を乗り越えてここまでのものを見せてくれた高橋選手に、当時中継を見ていて心から感謝した覚えがあります。
それに日本選手は技術優先と言われてなかなか芸術面で評価されなかった(実際国籍が日本だというだけで、先入観で点数を下げられた時代もあったそうです)のが、この五輪FSで高橋選手のPCS(プログラム・コンポーネンツ・スコア(演技構成点):旧採点における芸術点に相当するもの)は全選手中1位でした。約120年の男子フィギュアの歴史の中で、日本選手が芸術面で高い評価を受けて、初のメダルを取れたという意味でも歴史的な瞬間だったと思います。そういうことを日本のメディアにはもっと取り上げてほしいんですが…。


ステファン・ランビエール(スイス) 2007年世界選手権FS「ポエタ」


HAL:この時のランビエールはその前年のトリノ五輪で銀メダルを取って、世界選手権も二連覇して、これ以上何を目標に試合に出たらいいかわからない、とモチベーションが保てない状況にありました。主要な大会を欠場して、世界選手権も出場するかさえわからなかった。そういう不安定な状況で臨んだSPは大きなミスを二度して6位。正直FSは棄権するんじゃないかと、こちらが危ぶんだほどでした。でも彼はSPの得点発表がされた後に「See you tomorrow.」とカメラに向かって話し、ちゃんとFSも滑った。ミスも出ましたが、魂の底から表現しきった演技だったと思います。後半ステップシークエンスからのたたみかけるようなスピンの構成を見ると、今でもこれを見た時の興奮がわきあがります。
上記はフジテレビの放送ですが、自他共に認めるフィギュアスケートファンの西岡アナウンサーの熱い実況。高難度ジャンプの成功にテンションの上がる解説の本田武史さん、チャンピオンとして大会を迎える厳しさを実体験をもとに解説する荒川静香さんに混ざって、ゲストとして招かれてた TOKIO国分太一さんと松岡昌宏さんのコメントも聞けます。感動しまくってる実況解説陣の中で「正直もうちょっとやってもらいたかった」とか言っちゃう太一君はジャンプの成否でしかフィギュアスケートを見てないんだなとちょっとがっかりした覚えがあります(笑)。
フィギュアスケートは精神面が大きく影響する競技ですので、モチベーションは非常に重要なのですが、彼が何を目的として滑っているかについて、安藤美姫選手との対談を収録したこちらの動画が、フィギュアスケートの魅力の一端を示していると思うので、参考までにご紹介します。


http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=32127406


HAL:フィギュアスケートというのはスポーツですから、アスリート気質が強く何より勝敗にこだわる選手もいます。それはもちろん悪いことではないのですが、それ+@で自分が表現したいものを持ち、それを滑りに込めることの出来る選手というのは素敵だなと思います。中には減点されるのを承知で、禁止されている小道具を使ってまで自分の世界を表現しようとする強者もいますが(笑)。どちらが正解だとかそういうことではなくて、根っからのアスリートから表現にこだわるパフォーマーまで、多種多様の個性が共存を許されているのが面白いと思います。


——解説、ありがとうございました。いやー、どれもこれも凄かった!! 特にアイスダンスの2人に驚きました。私は名香智子先生の『パートナー』という社交ダンスのマンガを思い出していました。ダンスのパートナーは出来れば私生活でもカップルの方がいいという話でした。でも、この2人は恋愛関係にないんですね?
HAL:恋愛感情は無かったと思います。女性のグリシュクはとにかくトラブルメーカーで色々なゴシップやスキャンダルの渦中にいた人です。プラトフはグリシュクの奔放さに疲れ切って、長野五輪後には解散してしまいました。当時の経緯を読むと、むしろ解散前はお互いに憎悪のほうが強かったんじゃないでしょうかね。それほど憎みあいながら、それでもパートナーとしてお互い以上の相手がいなかった、というのがこのカップル独特の緊張感を生み出していたと思います。


——それはそれで凄い話ですねー!!
HAL:現在は和解して長野五輪10周年の記念アイスショーでは久々に二人で滑ってくれました。プラトフの方は今はコーチ業がメインで、荒川静香選手 や 高橋大輔選手のスケーティング(滑りの技術)指導も一時期してくれていましたね。


——そうだったんですか。
HAL:お気に入り演技の数を見ればわかるとおり男子シングル中心に応援してます。入口は女子の サーシャ・コーエンで、彼女のことは今でも大好きなんですけど。


——とても、かわいい選手ですよね。この演技も素晴らしかった! 
HAL:可愛いですよね!フィギュアの女子選手はよく「氷上の妖精」と形容されることが多いのですが、妖精って子供が虫の羽根をちぎって遊ぶような無邪気な残酷さを持っている存在だと思うので、ただ可愛いだけではなくてそういう毒っ気を持ってるサーシャは、まさに「妖精」だと思います。


——あと、高橋選手の演技も私が日本にいたときに観たより、スマートに見えると言うか、しなやかになってて美しかったです。
HAL:高橋選手は五輪1年前に右ひざ前十字靱帯断裂という深刻な怪我をして、一から身体を作り直したので、以前は固かった股関節の可動域が広くなり、身体の動きが以前より柔らかくなっていると思います。


——そうですね。柔らかい。
HAL:あと彼はイタコタイプというか憑依型のパフォーマーなので、曲によってガラッとイメージが変わる選手ですね。正統派のクラシックからドラマチックな映画音楽、ヒップホップに陽気なマンボや気だるいブルースまで幅広く表現できる貴重なスケーターです。次にどんな曲で滑ってくれるのか非常に楽しみな選手です。


——先ほど、旧採点、新採点という言葉が登場しました。フィギュアはテレビの視聴率も高く人気のあるスポーツですが、採点のこととなると一般視聴者にはわかりにくいことも多いですね?
HAL:旧採点では6.0点満点から減点されて評価されていましたが、「5.7」とか「5.4」といった数字の羅列だけを見ても、一般視聴者には何をどう評価されたのかは分からないと思います。せいぜい高い点数が出てればこの選手の演技はすごかったんだな、と思うくらいでしょう。


——印象と点数の高低が一致してるか?くらいです。
HAL:この採点法が大きく変わるきっかけになったのは2002年のソルトレイクシティ五輪の「ペア判定疑惑事件」からです。この時ペアで優勝を争っていたのはロシアとカナダなのですが、FSでロシアのペアはわずかにミスがあったにもかかわらず、ノーミスで滑ったカナダのペアを上回り優勝した。これはアイスダンスでフランスを勝たせる代わりに、ペアではロシアに点を入れるように、フランスとロシアの間で取引があった結果で、ロシアの優勝はおかしい、というのが当時の北米メディアの言い分でした。
本当にロシアとフランスの間で取引があったのか、この事件の真相自体は今でも闇の中なのですが、実際の演技内容に目を向けるなら、ロシアのペアは非常に難度の高いプログラムを滑ってわずかなミスをした。カナダのペアはロシアより難度が低いプログラムをノーミスで演じた。ジャッジたちは難度の高いプログラムを滑ったロシアのペアを評価しただけとも言えます。
こうした採点に対する疑惑が持ち上がった時に、国際スケート連盟はジャッジが何を評価して点数を付けているのか、これに対する明確な説明を毎回すべきだったのですが、それを怠ってきたことで、結果的にこれだけの騒動に発展してしまった。
そこで「ジャッジがどこを見て評価してるのか」をもっと見て分かる形で公開しようと導入されたシステムが新採点(正式名称Cord Of Point略してCOP方式)ですが、こちらも公開された得点詳細を初めて見たときは、これは何かの暗号なのだろうか? 見方が全然わからない、と思いました。慣れれば平気なんですが、一般の人が興味を持って調べようとしても敷居が高いことは事実です。しかも公開されている試合結果は国際大会の物はすべて英語表記ですしね。
それもあって詳しくない人と一緒に競技を見ていて、あれこれ質問を受けても、どこから話せばいいのか、何から手を付ければいいのか、困ることは多々あります。


——丁寧に説明していただき、ありがとうございます。では、初心者がわからない内容かもしれないが、透明性は高まったということですね。なるほど。
HAL:透明性が高まったかどうかはファンの間でも関係者の間でも正直賛否両論みたいです(笑)。


——そうなんですか。
HAL:まあ人が作るものに完璧なものは無いですから。ただ何が減点され何が評価されたのかは、得点詳細の見方さえ覚えてしまえば一応わかります。
納得のいかない結果が出たからと言って、「よくわからないけどこれはおかしいと思う」と批判するのではなく、まず自分でなるべく調べてから根拠を持って問題点を指摘してほしいな、と昨今の採点論争には思いますけど。
『ワールドフィギュアスケート52号』という専門誌で男子シングルの現世界チャンピオンのパトリック・チャン選手(カナダ)が『(採点に関して)簡単に理解してもらう、というのは難しいかも。このスポーツも採点システムも、簡単なものではないので。(苦笑)日本に来るのが好きなのはそのためもあります。日本のファンはスケートに対する理解が深いし、もし理解できなければ、少なくとも理解しようと努力してくれますから。ぼくの夢は、スケートを見ているすべての人にスケート靴をはいて滑ってもらうこと。簡単そうにやっていても、ぼくたちのやっていることが、どれほど難しいのかわかるでしょう』と、話していたのですが、選手にこう言ってもらえるスタンスのファンでいたいと、個人的には思います。
3月末にはシーズン総決算の世界選手権がフランスのニースで開催されますが、どの選手も終わった後に笑顔になれるような良い演技をしてほしいと心から願っています。


——では、後半はジャニーズの話に入って行きます。しばらくお待ちください。