ハノイの日本人

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作詞家 阿久悠と スター誕生! 番外「アイドルは進化しますか?」

このブログでアイドル史を書こうと思ったのには理由があります。最近読んだ本に女性アイドル史が書かれていたのですが、そこでは『スター誕生!』がスルーされていたのです。あり得ないでしょ? アイドル史なのに、山口百恵ピンクレディー小泉今日子中森明菜を生んだ『スター誕生!』に触れないなんて。


◉作詞家 阿久悠と スター誕生! その6「ポニーキャニオンの時代」
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20130705/1373035376


ある人なんて巻末のプロフィールに「幼少時より沢田研二ピンクレディーを踊りつつ育つ」と書かれているのに、本文では『スター誕生!』に触れてないんですよ。不自然ですよね? そういう不自然な本のタイトルや帯には必ずある言葉が登場してるんです。「AKB48」です。恥を知れ! でも、今回紹介する本には、ちゃんと『スター誕生!』も登場してますよ。まともな本だってことです。2011年1月に「進化論」を名乗るアイドル書が2冊出てるんですよね。でも、アイドルってそもそも進化するものなんですかね?


アイドル進化論 南沙織から初音ミク、AKB48まで(双書Zero)

アイドル進化論 南沙織から初音ミク、AKB48まで(双書Zero)


共に時系列で人気を得たアイドルの紹介がされています。ですが、太田省一『アイドル進化論』は珍しく男性アイドルについても記述されています。これは橋本治の明星本を除くと初めてなのではないでしょうか? 例えば、バラエティ番組に積極的に登場したアイドルとして、よくキャンディーズの名前が挙がります。しかし、それ以前に郷ひろみ西城秀樹野口五郎の「新御三家」が『カックラキン大放送』などのコントで笑いを取っていたわけです。この本ではそれがきっちり押さえられてるわけです。


「明星」50年601枚の表紙 カラー版 (集英社新書)

「明星」50年601枚の表紙 カラー版 (集英社新書)


『アイドル進化論』では ジャニーズについても20ページ以上割いています。その部分は私の考えとかなり違っているのですが、そんなことは問題ではありません。まずは男性アイドルと女性アイドルを別にしないアイドル史が書かれたことを喜びたいです。お薦め出来る本だと思います。そうだ。「キムタク公園」の考察はとても面白かった。


さて『アイドル進化論』にはサブタイトルとして「南沙織から初音ミクAKB48まで」と書かれています。この本も AKB48を頂点とした進化論なのでしょうか? いえ、そうではありませんでした。たまたま、その発売時期の人気アイドルが AKB48だっただけのようです。著者のスタンスを示す以下のような記述がありました。


 ⇒もともと「進化論」とは、そうした進化とも退化ともつかぬ混沌たる状況を性急に整理したりせず、可能なかぎりその実態を直視し、現実のさまざまな出来事のざわめきを受け止めようとする方法論だったのではないだろうか。(あとがきより)



もう一冊の進化論は『グループアイドル進化論』です。こちらは2010年の年間シングルで1位、2位を嵐から奪った AKB48を頂点にした進化論が書かれています。そのためか、他のグループについては厳しくダメだしされています。第一章のタイトルは「AKB48という革命」でした。


 ⇒02年7月に事務所より発表されたハロプロの大規模改変、通称 “ハロマゲドン” はハロプロファンに大変な衝撃を与えた。(中略)ファンの思いを完全に無視した、一方的な再編成がその内容だった。こうした運営の態度はファンの不信感を募らせ、結果的にハロプロの衰退へとつながっていった。 AKB48の運営は、ハロプロとは真逆だった。ファンと積極的に意見を交換し、ファンニーズを常に掌握しておく。サプライズ的発表で注目を集めることはあっても、ファンの気持ちを裏切るだけのことはしない。時代が AKB48を選んだのは、必然だろう。


ハロプロがボロクソに書かれていますw 「ハロプロを反面教師にして」だの「モーニング娘。の失敗を参考にした」だの書かれ放題です。この「ハロマゲドン」はモーニング娘。の中心メンバー後藤真希の卒業や、派生ユニットの再編成がありました。たしかに、もう少し穏便なやり方があったかもしれません。ですが、モーニング娘。はブレイクしてから5年目に入っていました。



ジャニーズは別ですが、モーニング娘。は女子アイドルで5年ブームを継続した初めてのグループです。SPEEDでも3年でした。それを考えると、多量のカンフル剤が必要だと考えたことも理解できます。少なくとも全否定はできないでしょう。卒業と新規加入をシステム化した最初のグループでもあるわけです。 AKB48もその影響下にあるはずです。


残念なことに、他でもこのような不自然な記述が目立ちました。『スター誕生!』については「この年代のアイドルを振り返る上で欠かすことのできない存在だ」と一応は書いています。でも、必ず否定的なニュアンスの文章が書かれているのです。例えば、ピンクレディーについての記述が象徴的です。


 ⇒子供のファンが多かったピンク・レディーに対して、キャンディーズの最も熱いファン層は大学生だった。商品として完成されたピンク・レディーに対して、キャンディーズは生身の女の子として自己主張したことで熱狂的な支持を得た。


 ⇒空前の大ヒット商品となった「ピンク・レディー」だが、ブームが去るときもあっという間だった。


かなりガッカリさせられる記述です。たぶん、若い著者たちはピンクレディーのブームを体験していないのでしょう。たしかにピンクレディーはアニメキャラの商品のように消費されたかもしれません。しかし、日本人はアニメキャラが大好きでしょう? そこに否定的なニュアンスはありますか? 私はキャンディーズも大好きでしたが、ピンクレディーのブームは熱量的な規模で圧倒的でした。それこそ大学生だけでなく、子供から大人までが熱狂したグループでした。ミリオンセラーを連発したのだから当然ですが。


キャンディーズの解散もピンクレディーの大ブームの影響があったはずです。本書でも引用されている中森明夫著『アイドルにっぽん』を読んでいればわかると思うんだけど・・・・ このような不自然な記述があったときには必ず登場する名前があります。秋元康です。まずはおニャン子クラブのブームについて。以下のような記述がありました。


 ⇒一大ブームとなったおニャン子クラブだが、活動期間は85年から87年までのわずか2年半しかない。彼女たちがどれほどのブームを巻き起こしたか。一番分かりやすいのは、86年のオリコンシングルチャートだろう。(中略)この時期のおニャン子クラブは、とにかく圧倒的な存在だった。


えーっと、きのう紹介しましたね。河合その子の34万枚、年間10位が最高だったおニャン子クラブです。もちろん、当時、私も熱狂したくちなので、それほど悪くいいたいわけでもないのですが。まあ、ピンクレディーのブームと比較して語るほどのブームではありません。だって、現在まで語られるような曲がいくつありますか?


 ⇒隆盛を極めたハロプロ勢だが、00年代後半に入るとファン層の固定化、高年齢化が進み、縮小再生産の傾向が強まってくる。



再びハロプロ・ディスの記述ですw 普通、一時代を築いたアイドルは、売れなくなると解散もしくは活動休止になるものです。しかし、ハロプロは活動を続けました。それだけでもアイドル・ファンからはリスペクトされる存在であるはずです。多少の不満はあったとしてもw だって、Berryz工房℃-ute がデビューしたてで勢いのあった時期でしょ? Buono もスマイレージもあったでしょ? 縮小再生産とは酷いよね? AKBサイドは現在に至るまでハロプロを目の敵にしています。音楽番組にも碌にでれないし。本当に酷いよね。