前に昭和の大作詞家・阿久悠についての文章を書きました。阿久悠は作曲家・都倉俊一と共に、山本リンダ、フィンガー5、ピンクレディーにおいて「非日常性のエンターテイメント」と自らが名付けた手法で大ヒットを連発しました。阿久はそれを「テレビ時代の歌」「歌のアニメーション化」とも呼んでいたそうです。しかし、疑問に思ったことがありました。「グラムロックの影響はなかったのか?」です。私はグラムロックも大好きなんですよ。
◉日本にはなぜこんなにアイドルがたくさんいるのか?
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20130704/1372916736
沢田研二だと、わかりやすくグラムロックをやってた気はしますよね? でも、山本リンダやフィンガー5だと・・・どうなのか? 「非日常性のエンターテイメント」の最初の曲となった山本リンダ『どうにもとまらない』について阿久が書いた文章を再び見てみました。ちなみに、『どうにもとまらない』が発売された月に、イギリスではデヴィット・ボウイのアルバム『ジギー・スターダスト』が発売されています。このアルバムは地球外から来た「ジギー」が、スターになり、そして没落するまでが描かれたコンセプト・アルバムでした。グラムロックを代表する作品になっています。
夢を食った男たち―「スター誕生」と歌謡曲黄金の70年代 (文春文庫)
- 作者: 阿久悠
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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『「どうにもとまらない」の時には、まだ、路線という感覚はなかった。ただこの一曲、派手な歌として打ち上げようという気持ちだけで、詞のタイトルも、「恋のカーニバル」と平凡なものにしてあった。
キャニオン・レコードとの関係で、プロジェクトの中心のプロデューサーは、フジテレビの吉田斎が務め、それもあって、実にテレビ時代のテレビ的な作り方をし、作詞、作曲のほかに、振付の一宮はじめとか、衣装デザインの椎名アニカとかが初めから加わっていた。
あの大胆でエロティックな振りも、ヘソ出しのスタイルも、これによって決定し、そうなると、「恋のカーニバル」などという、どこにもありそうなタイトルでは不似合いで、詞のトメの言葉として使われている「どうにもとまらない」をそのまま使った。』(『夢を食った男たち』P208)
少女時代に『こまっちゃうな』の大ヒットがありながらも、その後、鳴かず飛ばずだった山本リンダの再起をかけたプロジェクトでした。それが高度経済成長という時代の空気にもマッチして、株価の暴騰を紹介する記事などでも『どうにもとまらない』と一種の流行語のように使われたようです。しかし、それは狙ったものではなく、山本リンダを使って『アラビアン・ナイト』のような架空をやろうというアイデアでした。
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なので、直接はグラムロックと関係なかったようです。しかし、元すかんちのROLLYは山本リンダ『きりきり舞い』、フィンガー5『個人授業』、ピンクレディー『S・O・S』をカヴァーしています。元The Yellow Monkey の吉井和哉はピンクレディー『ウォンテッド』をカヴァーしています。そう言えば、近田春夫が1978年、既に『きりきり舞い』のカヴァーをシングルで出していますよね。もう少し、グラムロックの影響について考えてみました。
◉ROLLYが誘う『果てしなきグラムロック歌謡の世界』
http://www.jungle.ne.jp/sp_post/rolly/
『●そもそもROLLYさんとグラムロックの出会いとは?
ROLLY:小学校3年生の時にフィンガー5のデビュー曲「個人授業」を聴いて、"これは今までの歌謡曲にないモノだ"と思ったんです。ちょっとヘヴィなところもあるし、グラマラスな感じもあって。当時はそんな表現自体を知らなかったけど、気に入って朝から晩まで聴いていましたね。それと同時期に出た山本リンダさんの「きりきり舞い」(M-2)というフレンチポップ風の曲にもハマって。今から思うとグラムロックを直接知る前から、歌謡曲の中にある"グラム"的な要素に惹かれていたのかな。
●歌謡曲の中に、グラム的な要素を自然と感じ取っていた。
ROLLY:同時期のイギリスではちょうどT-REXやデヴィッド・ボウイが全盛だったので、きっと当時の作曲家の方たちもそこから影響を受けていたんでしょうね。今思えば、シャッフルビートの入っている歌謡曲が僕はすごく好きだった。姉が部屋で一日中かけていたメッツの「ジュディ・ランラン」が好きだったのも、グリッタービートだったからで。』
こっちは完全にグラムロックですね。私が最初に買ってもらったレコードも、当時大ブームだったフィンガー5『恋のダイヤル6700』でした。この曲が私の音楽感を方向づけた気がしています。ちなみに、ROLLY が上のインタビューで紹介しているのは70年代を中心にした歌謡曲のグラムロック・アレンジのカヴァー集『果てしなきグラムロック歌謡の世界』です。これいいですよ。
◉グラムロック日本代表10組による昭和歌謡カバーコンピ
http://natalie.mu/music/news/54235
2004年にフランスとスペインにサッカーを観に行ったとき、空港の書店でグラムロックのヴィジュアル・ムックを買いました。ジギー(ではなくアラジン・セイン)に扮するデビット・ボウイが表紙で、中にはイギリスのロック・タブロイド『NME』の当時の記事と写真が沢山収録されていました。そこで一番最初の記事は、1970年10月、T.REX『Ride A White Swan』のシングル紹介でした。そこから、デヴィット・ボウイ、THE FACES(えっ?)、SLADE、THE SWEET、ROXY MUSIC、と続いて行きます。
気になったのが、Alice Cooper です。アメリカの人ですが 1972年にロンドン公演を行っているんですね。そのときの記事がありました。アリスクーパー・・・ほとんど知らない。渋谷陽一の解説があったので、それを聴いてみましょう。ちなみに、ロッキング・オンの創刊号ではアリスクーパーの特集があったそうです。フランクザッパの元で活動をスタートさせ、そこから離れてショックロック、シアトリカルロックの方へ行ったそうです。ショックロックというのは山本リンダに近いかも。フジテレビの吉田斎がアリスクーパーを意識して、山本リンダの企画に虚構性を持ち込んだというのはある話かもしれないですね。