ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

ジャニーズの教科書。第5章『Hey! Say! JUMP』①

前回で SMAP 以前の話が終わり、また現在に近い時代まで戻って来ました。今回から嵐の次のトップ候補・・・いや、もう既にトップなのかも・・・Hey! Say! JUMP についての文章です。



2007年秋、嵐の次のトップ候補がデビューしました。平均年齢は15.0歳。過去最高10人組グループ、Hey! Say! JUMP(以下JUMPも併用)です。グループの結成過程を見て行きましょう。80年代生まれのジャニーズJr. 黄金世代と同じく、90年代生まれも多くのタレントが集結しました。そして、ジュニア内に数々のグループが誕生しています。代表的なものはYa-Ya-YahJ.J.Express、ABC、Kis-My-Ftです。そして、前2つのグループからメンバーを選抜する形で結成したのがHey! Say! JUMPでした。嵐と同じく『バレーボールワールドカップ』をきっかけにデビューしています。


JUMPがデビューする3ヶ月前、期間限定ユニットHey! Say!7のCDが発売。メンバーは、山田涼介、知念侑李、中島裕翔、有岡大貴、高木雄也という後に JUMPのメンバーとなる5名でした。そこに、Ya-Ya-yahから薮宏太、八乙女光J.J.Expressから伊野尾慧、森本龍太郎、最後に前年ジャニーズ事務所に入ったばかりの岡本圭人が加わり10名になっています。


Ya-Ya-yahJ.J.Expressは中心メンバーが抜けたことで自然消滅しました。この2つのグループもオリジナル曲も持って活動していたので、デビューを願っていたファンにはショックな出来事でした。もちろん、ジュニアで活動するメンバーすべてがデビュー出来るわけではありません。売れないグループをデビューさせることは、ジャニーズのブランド力を衰退させることにも繋がるからです。それがわかっていても、ファンにとっては辛い出来事でした。


Hey! Say! JUMPのメンバーは以下の通りです。グループ内ユニットとして年長組のHey! Say! BESTと年少組のHey! Say! 7に分かれています。

◎ Hey! Say! BEST
薮宏太(1990年1月31日生まれ、17歳)
高木雄也(1990年3月26日生まれ、17歳)
伊野尾慧(1990年6月22日生まれ、17歳)
八乙女光(1990年12月2日生まれ、16歳)
有岡大貴(1991年4月15日生まれ、16歳)


◎Hey! Say! 7
岡本圭人(1993年4月1日生まれ、14歳)
山田涼介(1993年5月9日生まれ、14歳)
中島裕翔(1993年8月10日生まれ、14歳)
知念侑李(1993年11月30日生まれ、13歳)
森本龍太郎(1995年4月6日生まれ、12歳)現在活動停止中


SMAPは6人でスタートして5人、嵐も5人です。なのに、JUMPは5+5の10人です。JUMPが10人という大人数グループになったのは、どうしてでしょう? ひとつには JUMPがデビューする前の『バレーボールワールドカップ』でデビューしたNEWSが9人だったことがあります。そこから一人増やしたとも考えられるでしょうか?



恐らく、K−POPの影響があったからでしょう。東方神起が関係しているのです。東方神起SMAPに習って5人でスタートしています。2004年韓国でデビュー。翌年には日本でもデビューしています。そして、JUMPがデビューする5ヶ月前の2007年6月、東方神起は2日間の武道館公演を成功させます。それが JUMPにどう関係するのか? 東方神起の所属事務所SMエンターテインメントが2005年にデビューさせたグループ、SUPER JUNIORは12人で結成されているのです。



SUPER JUNIOR・・・・ どうしようもなくジャニーズJr. を連想させるグループ名。ジャニーズ事務所はさぞかし怒ったことでしょう。ここでなにが話し合われたかはわかりません。結果として、翌2006年にSMエンターテイメントは、嵐が所属するレーベル「J Storm」の韓国での販売権を取得します。そして、SUPER JUNIORの日本デビューは、嵐が大ブレイクする2008年までありませんでした。


SUPER JUNIORが人気になるのを見越して、トップ候補の JUMPが大人数グループになったとも考えられるのです。K-POPブームが盛り上がる中で、グループのセンター山田涼介が韓流メイクをしていた時期もありました。そして、K-POPブームに続いて女子アイドルのブームも仕掛けられるのですが、それはまだ先の話です。


JUMPのデビューは嵐や、KAT-TUNに比べて地味でした。CDの売上枚数もミリオンには遠く及ばない数字だったのです。そして、驚くべきことに、デビュー3年目の2009年にはシングルが一枚も発売されていません。CDをまったく重視していないのです。当然、そこに描かれるはずの少年から大人への物語も中途半端なものになりかねないのです。これは何を意味しているのでしょう?


◉ JUMPを苦しめるジャニー社長の思いつきという理不尽

SMAP や 嵐においては通過儀礼ソングを歌う前に、試練が用意されたとブログで書いて来ました。SMAPではジャニーズ冬の時代という現実の試練。嵐では二代目の重圧と歌詞で表現された試練でした。では、次のトップ候補 Hey! Say! JUMPには、どのような試練が用意されたのでしょう?


今回はかなり奇妙なものでした。ジャニー社長の思いつきという理不尽。それがメンバーとファンに与えられた試練でした。例えば、先に書いた JUMPの結成によって、2つのグループが解体されたこともそうです。そして、CDのこともそうです。CDを発売しないというのは、さすがに想像を絶する出来事でした。グループの存続を不安視したファンも多かったようです。みんなの心は一つでした。このクソ事務所が!


たしかに、CD売上は1998年をピークに下降傾向にありました。とは言え、ジャニーズでは前年にデビューした KAT-TUNがミリオンを記録していますし、2005年には『青春アミーゴ』や SMAP世界に一つだけの花』のダブルミリオンもありました。まだまだCDを戦略から外すのは考えられないのです。


そして、もうひとつ大事なことがあります。グループ名のことです。SMAP、嵐でわかるように、トップグループはグループ名に意味が込められていました。Hey! Say! JUMPでは、Hey! Say! が平成生まれのメンバーで結成したグループ。そして、JUMPは「Johnnys Ultra Music Power」の頭文字です。グループ名で「音楽の力」と言ってるにも関わらずCDを出さなかったのです。2014年まで8年活動して、発売されたシングルCDはたったの13枚です!


ちなみにSMAPでは4年目の『オリジナル スマイル』。嵐は6年目の『瞳の中のGalaxy / Hero』が13枚目です。4年、6年、8年と、徐々にCDへの依存を減らして来たことがわかります。JUMPのシングルを順に追って行きましょう。



Hey! Say! JUMPシングル・リスト
1. Ultra Music Power(2007年11月)30.4万枚
 ⇒自己紹介ソング。JUMPの意味はジャニーズの超絶な音楽の力。


2. Dreams Come True(2008年5月)24.9万枚
 ⇒一緒に夢を見ましょう


3. Your Seed / 冒険ライダー(2008年7月)20.8万枚
 ⇒君がいてくれる限り、JUMPはトップを目指して頑張る。対話ソング。


4. 真夜中のシャドーボーイ(2008年10月)29.0万枚
 ⇒SMAPや嵐のときにはなかった少年時代の性的な歌。ドラマ『スクラップ・ティーチャー』主題歌で、売上枚数上昇。


5. 瞳のスクリーン(2010年2月)25.0万枚
 ⇒1年4ヶ月ぶりのシングル。青春ストーリーから逃げ出さない。


6.「ありがとう」-世界のどこにいても-(2010年12月)18.8万枚
 ⇒世界各国のみなさんにご挨拶。


7. OVER(2011年6月)29.8万枚
 ⇒ショックを伴う通過儀礼ソング。K-POPブームに対抗?


8. Magic Power(2011年9月)25.8万枚
 ⇒事件から3ヶ月後に発売。ファンを辞めたりしないよね?


9. SUPER DELICATE(2012年2月)29.0万枚
 ⇒大人のガラスソング? 君にしか見せられない顔がある。


10. Come On A My House(2013年6月)24.3万枚
 ⇒君は特別だからウチに来ない? 二度目の予告ソング。


11. Ride With Me(2013年12月)18.6万枚
 ⇒セックスを伴う通過儀礼ソング。完全に大人になる。


12. AinoArika / 愛すればもっとハッピーライフ(2014年2月)23.3万枚
 ⇒嵐が失った愛(LOVE)はここにある。もう夢追い人じゃない。


13. ウィークエンダー / 明日へのYELL(2014年9月)21.4万枚
 ⇒一度繋いだ手を離さない それがオンリールール。



JUMPのシングルに行く前に、触れておかなければならない2枚のシングルがあります。Ya-Ya-yah『勇気100% / 世界がひとつになるまで』とHey! Say!7『Hey! Say!』です。


まず、年長組の薮宏太、八乙女光がいた4人組ユニット、Ya-Ya-yahから。2002年に発売されたシングル『勇気100% / 世界がひとつになるまで』は、NHKの人気アニメ『忍たま乱太郎』のOP、EDの2曲が収録されました。『勇気100%』は、同アニメの主題歌だった光GENJIの曲をカヴァーしたもので、NYC、Sexy Zoneとジャニーズのグループに引き継がれている曲です。CD発売当時、八乙女光Ya-Ya-Yahにいませんでした。その位置にいたのは赤間直哉で、薮とともに高音を響かせていました。


Ya-Ya-yah『勇気100%』(1stシングル、2002.5、PC)
   作詞:松井五郎、作曲:馬飼野康二、編曲:馬飼野康二
 ⇒光GENJIの名曲を引き継ぐ。


次に、2007年に発売されたHey! Say! 7『Hey! Say!』です。これはアニメ『ラブ★コン』(TBS系)の主題歌でした。Hey! Say! 7は山田、知念、中島、有岡、高木という現在、JUMPにいるメンバー5人がいた期間限定ユニットです。5人なのに、なぜHey! Say! 7なのでしょう? 2007年にデビューしたからと言うんですけど・・・・平成じゃなかったのでしょうか? もしかしたら、10人はさすがに多いと考え、このメンバーに薮、八乙女を入れた7人で正式デビューさせる案もあったのではないか? そんなことも考えました。実際にはどうかわかりません。


シングル『Hey! Say!』は、嵐のデビュー曲『A・RA・SHI』のように、ラップで今の時代について語ります。


 ♪ 僕らは平成Only 昭和でShowは無理!
  あっちもこっちもいいね! Hey-Sayはいいね!
  こんな時代でSorry! でもDon’t worry!
  未来にきっと 夢があるから さあさみんなでついて来い! WOW


この歌詞で「昭和でShowは無理!」の部分が、昭和生まれの先輩グループをディスっていると語られることがあります。でも、気にしないでください。これはジャニー社長が書いた歌詞だと思うので。メンバーに罪はありません。それよりも気になるのは「未来にきっと 夢があるから さあさみんなでついて来い!」の方です。嵐と同じようにHey! Say! 7も夢を持っていて、だから一緒に行こうとファンに語りかけています。


◎Hey! Say!7『Hey! Say!』(1stシングル、2007.8、JS)
   作詞:Erykah、作曲:BOUNCEBACK、編曲:Masaya Suzuki
 ⇒フィンガー5恋のダイヤル6700』を思わせる軽快な曲。夢がある!


Hey! Say! JUMPの1枚目のシングル『Ultra Music Power』は、Hey!Say!7のシングル発売から、たった3ヶ月で発売されています。そこでは先にも書いた通りHey! Say! JUMPの「JUMP」は、Johnnys’ Ultra Music Powerと宣言されています。ジャニーズの超絶な音楽の力って感じでしょうか? グループ名にジャニーズという言葉が入るのは、JJS、J-Friends以来でしょう。サビ前には以下のような歌詞が登場しています。


 ♪ Jumping for my dream せつないこの地球(こころ)で
   Fighting for my dream 太陽だきしめて
   信じているんだ あきらめないんだ 独りじゃないさ


ここでも「for dream(夢のために)」という言葉が登場しました。このグループもまた嵐と同じくトップ候補としてデビューしているのです。夢はもちろんトップに立つことです。そして、次のシングルではもっとストレートに「夢」が登場しています。2枚目『Dreams Come True』です。出だしから「夢みましょう」ですから、それだけしか歌っていないくらいです。


3枚目『Your Seed /冒険ライダー』は両A面シングルです。まず、『Your Seed』から。前2作がとても前向きな歌であったのと同様、この曲でも力強い言葉が並んでいます。


 ♪ 人生なんて言えば 胸に重く響くけど
   好きなものを好きと言える勇気だけは手放したらだめだよ
   あきらめない君がいれば どんな時もチャンスはある
   物語は終わらない never ending story 夢は続いてく


3曲連続で「夢」という言葉が登場しました。そして、「♪ 好きなものを好きと言える勇気」という歌詞があります。ここで好きなものとは何か? もちろん、JUMPのことです。JUMPを好きだと言える勇気を持ち続けて欲しい。そうファンに語りかけています。これもファンとの対話ソングです。君があきらめない限り、JUMPの成長物語は続いて行くのです。そして、もう1曲の『冒険ライダー』でも夢について語られています。「♪ 奇跡とは呼ばせはしない ひとつずつ 夢かなえて行くよ」とあります。



4枚目『真夜中のシャドーボーイ』。正直、発売当時このシングルはないと思いました。出だしから「♪ あっちこっちにチェリー」です。SMAP、嵐の少年時代にはなかった性的な歌詞が登場しているのです。このジャニー社長の色を大きく反映した歌詞はなんなのでしょう? チェリーとは、もともと処女のことを意味する言葉だったようです。しかし、そこから派生して童貞のことも意味するようになっています。ファン層である十代女子のことを歌っているとは限らないのです。


 ♪ イヤだよ触らせたり むじゃきに人に媚びちゃ
   甘くて酸っぱいとこ 残しておいて 「シャドー…」


郷ひろみのときに出て来たジャニー社長の教育方針を思い出しました。「女の子とは絶対つきあってはならないよ。話もしてはいけない。いいね」です。ジャニー社長の影の部分「シャドー」が出た曲だったのです。さらに、もうひとつ気になる歌詞がありました。今後についての予告をしています。


 ♪ ダメだよ安売りしちゃ じらして勝負しなきゃ
   丸くて真っ赤な頬 もったいないよ 「シャドー…?」


この次の年、2009年のことを思い出せば、ハッとさせられる歌詞です。この年はJUMPのシングルが1枚も発売されませんでした。それだけではありません。デビューして2年が経過しているのに、まだアルバムは1枚も発売されていなかったのです。じらし過ぎでしょう!


普通、ジャニーズ・アイドルのCDが一番売れるのはデビュー時です。そこから数年が一番輝く時期なのです。しかも、JUMPはこの世代の人気ジュニアが集められたグループでした。かっこいい曲が発売されれば売れるのは間違いなかったのです。しかし、この時点ではそれをしなかった。それどころか、JUMPがシングルを発売しなかった2009年には、中心メンバーである山田涼介と知念侑李が、中山優馬とB.I.Shadowの4人と共に7人組のグループNYC boysとして活動を始めたのです。NYC boysのデビュー曲は中山優馬with B.I.Shadow『悪魔な恋』と両A面で発売されています。どちらも素晴らしい曲です。


JUMPはどうなってしまうのか? そう心配したファンも多かったようです。これも最初に書いた JUMPの試練「ジャニー社長の思いつきという理不尽」です。NYC boys は年末のNHK紅白にも出場しました。長らくSMAPTOKIOと2つのグループだけが出場していた紅白です。NYC boysは明らかに特別な扱いを受けていました。



しかし、『NYC』の歌詞はこちらが本命でないことを示しています。例えば、JUMPの歌詞に何度も登場した「夢」という言葉は使われているでしょうか? あるにはあったのですが、「夢じゃない」という歌詞でした。こちらは「夢」と関係ないことが示されています。


NYC boys『NYC』(1stシングル、2009.7、JE)
   作詞:ma-saya、作曲:馬飼野康二、編曲:船山基紀
 ⇒ジャニーズ80’sを意識した曲。たのきん、シブがき、以来の赤青黄。


その後、NYC boysは2010年に、中山、山田、知念の3人でNYCという正式なグループとして活動することになりました。2012年8月までに5枚のシングルを発売しています。NYCの正式デビューには理由があります。Hey! Say! JUMPは2007年にデビューしています。それから3年が経ちました。本来であれば、ここで新たなグループがデビューするはずです。SMAPのときには3年後にTOKIOがデビュー、嵐のときにはタッキー&翼がデビューしています。しかし、JUMPのときにはグループが用意できなかったのです。恐らく、JUMPのメンバーが10人になり、そこに当時の人気ジュニアの大半が動員されたからでしょう。もしくは、中山優馬を中心にしたグループをデビューさせたかったが、彼が何らかの通過儀礼を拒否したため正式デビュー出来なかったのかも知れません。


一方で JUMPの2009年は、単独のファンクラブをつくるなど、次の年への準備を進めていた年でもありました。そして、2010年に入ると明るい雰囲気も見え始めたのです。2月に山田涼介の主演ドラマ『左目探偵EYE』(日テレ系)の主題歌として、5枚目のシングル『瞳のスクリーン』が発売されます。7月にはやっと、ファーストアルバム『JUMP NO.1』も発売されました。


 ♪ 瞳の中映る世界 あふれそうなカナシミでも
   僕たちはもう 逃げ出さないさ 青春ストーリー
   目をこらして見つめながら 光きっと探し出すさ
   涙の先を見たいから


『瞳のスクリーン』は、これから青春ストーリーが始まるという予告ソングでした。青春ストーリーとは、近藤真彦のシングルで表現された成長物語で、少年が苦しみの末にセックスを経験するまでが描かれていました。夢への願いも再び強く歌われています。夢をかなえるために、これから辛い困難(青春ストーリー)に立ち向かうという宣言です。



2010年の12月に発売されたシングル『ありがとう-世界のどこにいても-』は、世界各国の言葉で「ありがとう」を伝える歌詞でした。これから世界に出て行くというメッセージでしょう。しかし、アジアツアーが行われたのは2012年になってからでした。



2011年5月、7枚目のシングル『OVER』の発売がライブ中に発表されました。実に意味深なタイトルです。最初に思い浮かべる意味は、「GAME OVER」で使われる「終わり」でしょう。さらに、ダンスは明らかにK-POPを意識したもので、山田涼介の韓流メイクも印象的でした。私はこの歌詞にどのような意味があるかを慎重に考えました。当時のブログには以下のように書いています。


 問題作『OVER』。まず「なぜ『OVER』というタイトルなのか?」ですよね。ネット販売のAmazonでは以下のように紹介されていました。


 無線通信等で “自分の話すことはこれで終了します。続いてそちらからどうぞ" という使い方で会話の語尾に「OVER」と付ける用語としての意味と、「それぞれが胸に抱えている悲しい出来事はこれで終わりにしよう」という意味の二つが込められています。


 もちろん、東日本大震災を意識してはいるでしょう。でも、曲を聴くと「OVER」と何度も言いたいだけに聞こえますよね? さらに、最後につぶやかれた「Love is over」はどういう意味なのでしょう?
 で、考えてたんですよ。「OVER」の意味を。そしたら、こんなことを思い出しました。HIPHOP好きにはお馴染みの話です。昔、HIPHOP発祥の地はクイーンズかサウスブロンクスかで抗争があったんです。いわゆる「ビーフ」ってヤツで、ラップでする悪口の言い合いです。その代表的な曲がBoogie Down Production『The Bridge is Over』です。「The Bridge」は「クイーンズブリッジ」という地名です。そこでは「相変わらずクイーンズはニセモンばっかだね」とラップされています。


 ヒップホップがクイーンズから始まってるって?
 そんなデマをブロンクスで口にしたら生きて帰れないかもよ?
 なぜなら、お前がいるのはサウス・ブロンクス
 サウス・サウス・ブロンクス‥(引用元:Hip Hop Flava)


 この解釈で行くと『OVER』の意味もかなり違ったものになって来ます。つまり、K-POPを意識してつくられた Hey! Say! JUMPの『 OVER 』は、K-POPに向けて「お前らはニセモンだ!」と宣言した曲とも考えられるのです。男性アイドルの発祥はジャニーズだと。
 そして「♪ フラついてんなら Stand by you」という歌詞は「 きみがK-POP にフラついてるのなら、僕がそばにいるよ」という意味になります。わざわざ片言で歌われた「ボクラハ・イツデモ・デキナイ・コトナド・ヒトツモ・ナイノサ」というのは「K-POPのヤツらに出来ることなら、僕らにだって出来ますよ」という世界に向けてのメッセージになります。
 だから、最後の「It's over. Love is over.」を私が訳すとこうなります。「It」を「K-POP」と訳し「K-POPは終わった。K-POPへの愛も終わった」です。 



こんな感じで文章を書いたわけです。トップグループ候補には、結成時にある種のミッションが与えられます。SMAPはお笑い芸人のアイドル化に対抗しています。嵐はHIPHOP系のアイドル。Hey! Say! JUMPK-POPです。その流れで考えると、この『OVER』の解釈は、なかなかいい線行ってるだろうと考えていました。しかし・・・・


2011年6月28日、事件は起こりました。シングル『OVER』のフラゲ日です。週刊誌『週刊女性』(主婦と生活社)にHey! Say! JUMPの最年少メンバー森本龍太郎の喫煙写真が大きく掲載されたのです。それは2010年1月と5月に撮影された写真で、1月の写真当時森本は14歳でした。
 実はこの写真の存在はかなり以前から問題になっていたようです。ジャニーズ事務所はその写真で脅迫されていたとも報道されています。つまり、『OVER』は森本の事件が表に出ることを前提にして用意された通過儀礼ソングだったのです。森本は現在も活動休止中です。この事件を乗り越えて JUMPはトップに行く、そのことが歌われていました。ショックを受けたファンは多かったようです。


しかし、『OVER』はセックスを介在しない通過儀礼ソングです。たしかに、嵐もセックスを介在させない通過儀礼ソング『PIKA★★NCHI DOUBLE』を歌いました。しかし、その曲が主題歌となった映画では、大野智が元カノの母親と不倫しています。Hey!Say!JUMPはどこかで、初体験をするのでしょうか?


なかなかCDを出さないのがJUMPでした。しかし、このときは次のシングルが3ヶ月とあけずに発売されています。『Magic Power』です。この曲のメッセージは単純明快。「この事件でファンをやめたりしないよね?」でした。ジャニーズではファンとの対話をこのように丁寧に行っているのです。


2011年に行われたライブ『SUMMARY』の追加公演のタイトルは、「Hey! Say! JUMPさよなら夏休み SUMMARYスペシャル」でした。公演日が9月18日、24日、25日だったにも関わらずです。これはJUMPの夏休みが終わり、これから本格的に売り出していくというサインではなかったでしょうか?



そして、2012年の最初に行われたライブ『Hey! Say! JUMP New Year Concert 2012』では、シングル『SUPER DELICATE』の発売とアジアツアーの開催が発表されました。シングル『SUPER DELICATE』は、山田涼介主演ドラマ『理想の息子』(日テレ系)の主題歌として発売されています。山田と中島裕翔が顔を近づけて歌う姿にファンは絶叫。JUMPが、ついに本気を見せたと思わせる力作だったのです。


 ♪ 大丈夫と微笑(わら)ってくれた
   ああ僕には 君にしか見せられない顔がある


これは JUMPのオンリーユー・ソングでした。「君にしか見せられない顔がある」=「君だけ」というオンリーユー・ソングのバリエーションです。しかし、なぜ『SUPER DELICATE』なのでしょうか? JUMPは2011年6月に発売された『OVER』で通過儀礼を済ませ、大人の歌をうたうグループになっているはずです。なのに硝子の少年のごとく繊細なままなのかということです。やはり、セックスを通過していないからなのでしょうか?


 ♪ 子供の頃は知らなかった 自分がこんなに臆病だなんて
   泣きたいよ 泣けないよ この胸が張り裂けそうさ


歌詞を見れば、彼らがすでに少年ではないことがわかります。もう「子供の頃」ではありません。だから『SUPER DELICATE』はこれまで存在しなかった少年時代を過ぎて歌われる「ガラスソング」です。まだ、大人になり切れていないことが示されているのでしょう。(つづく)