- アーティスト: YELLOW MAGIC ORCHESTRA
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックダイレクト
- 発売日: 2018/10/17
- メディア: CD
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テイ・トウワが選曲して、砂原良徳がマスタリングをしたYMO『NEUE TANZ』が素晴らしかったという話のあと、2010年代の音の話になる。長くなるけど二人がゲストに登場した『DAISY HOLIDAY! 』頑張って文字化しますよ。
細野:(『CAMOFLAGE』を聴いて)いい音だよ。今までで一番いい音だよね。
砂原:でも、一番新しいんでそうでなきゃ困る(笑)。
細野:でも大事なことがここにはあるんだよ。つまり・・・僕いま、リメイクをしてるわけ。1973年のデビューソロをそのまんま、曲をリメイクしてる。一人でやってるわけ。
砂原:73年と言うと何でしょうね。調べてくださいね。自分で(笑)。
細野:デビュー作だから。言ってもいいんだよ別に(笑)。『HOSONO HOUSE』ってアルバムで(笑)。本当に若気の至りの・・・
砂原:いやいやいやいや。
細野:そうなんだよ。最初のだからね。で、一人でやるって言って、ここに、スタジオに籠ってやりだしたら、機材が全部古いんだよ。ずっとここ10年生でやってたじゃん。
砂原:そうですね。
細野:で久しぶりに打ち込み。(笑いながら)大好きだった打ち込み。ところが音が出てこないわけ。
砂原:出てこないと言うのは?
細野:前に出てこない。
テイ:ああ。
砂原:わかりますね。
細野:わかるでしょ。古すぎて。この10年くらいで音楽が変わってきたじゃん。
砂原:ずーっと変わってますよね。結局。
細野:ずーっと変わってる。だからね、50年代の音、60年代の音ってあるじゃん? やっぱり2010年代の音って出来たね。
砂原:あるんですよ。
細野:あるね。そこら辺の話をしたかったんですけど。とにかく悶々としてたの。もっと喋っていい?
砂原、テイ:どうぞ。
細野:2000年代の初期の頃に、車でよくFMを聴いてたんだけど。その頃の音楽が変わってきてるわけよ。低域が違うんだよね。
砂原:はいはい。
細野:それはクワイエット・ストームって流れだったわけ。アメリカのFM放送の連中がやりだした。この音どうやって作るんだろうと思ってたわけよ。低域出てないのに倍音が出てるんだよ。
砂原:ああ、わかりますね。
細野:わかる?
砂原:気配がしますよね。
細野:そう!気配がするんだよ。これが謎だったわけ。ずーっと。誰に聴いてもわかんないんだよ。でエンジニアたちに「君たちアメリカ行って勉強してきてくれ」って言ったんだけど、誰も行かないし(笑)。それで悶々としたまま忘れてたんだよ。
砂原:はい。
細野:生の方に没頭しちゃったから。今回またやり始めて、またそこに戻っちゃったんだよね。(中略)で、歴史を辿って行ったんだよね。NEW JACK SWINGまで聴いて。
砂原:あら!
細野:全然聴いてなかったんだ、僕。テディー・ライリーなんて知らなかった。
テイ:でも、聴かれてたんじゃないですか?
細野:聴いてたよ。もの凄い好きだったんだよ。ただ誰がやってるか知らなかった。マイケル・ジャクソンのいいやつもね。『DANGEROUS』もよかったし。The Neptunesも好きだし。おやっ!と思う人たちはみんなその系統の人たちで。でも自分でやろうと思わなかったんだよ。生でBOOGIEやってると、そっちには行かない。
テイ:そうですね。いらないですね。
細野:でも今回は、そうは行かなかったわけね。それで二人を呼んだの。
細野:テイくんはどうなってるの?
テイ:結構、おんなじの使ってるのもあるし。僕がもらって、まりんにもあげてくださいって言ったのもあるし。
砂原:はい、はい。
細野:なんだろ?それは。ソフトウェアね。
砂原:あとは数年前 META FIVE とかでずーっと一緒でしたから。割といろんなことを共有して。
細野:そうだね。そういうのが大事だよな。僕、一人だったから(笑)。
テイ:でもBOOGIEはうちら出来ないからね。
細野:BOOGIEも今の音響のスタイルでやりたくなってきてるんだよね。生も、ジョー・ヘンリーという人がいて、この人がまた凄いんだ。
細野:で、何聴いても今凄いんだよね。ポップ・ミュージックは凄い音じゃん。そう思うんだよ。
砂原:どういう風に凄い?
細野:音が進化してるって言うか。
砂原:そうですね。音にかつてなかったような考え方と言うか、スピード、音の速さとか・・・あまり言ってなかった。
細野:そう、そう。
砂原:速いねとか、遅いねとか。
細野:なんか次元が変わったじゃん? そんな感じがするんだよね。それを僕はずっと葛藤してて、何を聴いても凄いと思っちゃった。モーニング娘。のミックス聴いて「負けた!」って思ったわけ(笑)。
砂原:誰がやってるんだろ?
細野:クレジットないからね。
砂原:そうなんだ。
細野:ゲームオタクたち何だろうか? よくわかんないんだよね(笑)。知らずにやってる。ゲームの世界だとあるかもしれない。
(注意!)細野さん、失礼ですよ! ハロプロは当然わかってます(笑)。でも生歌でライブをやることが信条なので、ボーカルをどう乗せるかは苦労してると思うんです。K-POPほどには割り切ってない。
細野:あと、映画の音もいいじゃん。
砂原、テイ:そうですね。
細野:あれと共通した何かがあるでしょ。そういうシステムって言うかね、みんなマニュアルって言うか、ルーティンがあって、簡単にやってるんだろうって思ってたの。1年くらい前からずっとそう思ってたんだけど。例えば、この前、冨田ラボっていうのを聴いて。
砂原:はい、はい、はい。
細野:びっくりしちゃったんだよ(笑)。
テイ:本当ですか?
細野:(笑いながら)あっ、ダメか?
テイ:いえいえ、細野さんとかを尊敬してる人だと。
砂原:僕、自分のマネージャーとの間で、最近、その話題が出てました。
細野:本当?
砂原:はい。面白い。ちゃんと、わかってるよねって。
砂原:新しいヤツと1個前くらいだっけ?
細野:新しいヤツをたまたま聴いたんだ。それがテイくんだったら、それでもいいんだけど、出してないからね(笑)。この音作りは異次元だなと思って。モーニング娘。聴いたら、やっぱりすげーなと思って(一同笑い)。それから米津玄師を昨日聴いたんだ。これもよかったね。
テイ:全然わからないんだ。聴いてる?
砂原:いえ。
細野:2年前のと今とは音が違うんだ。おんなじように変わってきてるってことに興味がある。それを僕、グローバル・サウンドと呼んでるの。グローバル化してるんだよ。
テイ:サウンド・デザインのこと。何と言うか。
細野:そう、そう。デザイン。わかる?
砂原:はい。形ありますよね。
細野:球体。
砂原:はい、はい。下の方に、この辺にキックがあって、その下に座布団みたい、お皿みたいにベースがあって。
細野:そう、そう。空間がね。
砂原:広域のパーカッションが左右にあって、これが真横にある感じが・・・
細野:真横にある。それクワイエット・ストームのときから始まってる。
砂原:そうですよね。
細野:左右の広がりすげーなと思って。
砂原:2000年以降からかな。音が近いとこにあるって言ってる人がいたと思うんですよ。近くで演奏してるかのような。で、近くに寄ったときに、昔は前の方に寄ってくるだけだったのに、今は横に左右にこう広がって行くんですよ。
テイ:ラジオじゃわかりにくいけど(笑)。
砂原:真横に、耳の方に向いていくって言うんですか。なんか形ありますよね。
テイ:お二人ともあれですよ。最終チェックを車で聴かれるじゃないですか?
細野:そう、そう。おんなじなんだ。
砂原:聴きます。
テイ:今から車で最終チェックしてきますってメールで来るもんね。
細野:おんなじだな。話が合うよな、まりん(笑)。
砂原:車はドアに空間ないですよ。完全にデットニングで。詰め物して。
細野:そこまでやってるの。
砂原:やってます。震えないようになってますね。
(細野さんがクワイエット・ストームの曲をかける)
テイ:パッドの音以外、短くて僕は好みでした。
細野:短い。わかる、わかる。
テイ:短いのしかできないんです、僕。いつも短いって言われるもんね。
砂原:テイさんはパンを振り切るときも、完全に振り切ることが多いじゃないですか。左右に。それはそういう効果出ますよね。
テイ:悩まない。
細野:悩まないんだ。いいな。
テイ:ヘッドフォンしないのと、車で音楽聴かない。
細野:(驚きながら)ヘッドフォンもしないの。
テイ:しないですね。
細野:ええー。
砂原:僕もしません。
細野:ああ、そう!
テイ:(笑いながら)違いが。
細野:ここら辺がちょっと違うよね(一同笑い)。
テイ:今、久しぶりにして、音ちょっと短いとか思って。
細野:でもこの音楽ってヘッドフォンすると、その世界が見えてくるじゃん。
テイ:うん、わかりますね。
砂原:で、自分のやったのを聴くと「うわっ、こんななんだ」と思うことの方が多いですね。
細野:それは楽しいね。(つづく)