ジャニーズ事務所が、新規に Jr. のオーディション募集要項を発表しています。8月20日です。信じられん。やはりジュリー景子社長は、ジャニーズ帝国というロイヤルファミリーの一員として育てられ、一般常識に欠けるのではないか。そう思われても仕方ない行動です。イノッチとか、他の誰かが「さすがに今これ発表するのはマズくないですか?」と言える、そんな人員もいないのでしょう。これはまいったな。
ジャニーズ性加害問題について考えるために、以下動画を参考にしようと思います。Youtubeサイト『Arc Times』が7月に開催したイベントから、江戸文化研究者の田中優子と、社会学者の宮台真司による、芸能界や遊郭の掟に関するやり取りを文字化させて頂きました。これは無料で公開されている10数分の切り取り動画になります。イベント全編は、メンバーになることで観れます。
田中:今の「掟」って言ってる部分、反論したいんですけど。掟って言ってるけど、金儲けでしょう。例えば江戸時代の遊郭って言うのは、その中にいろんな社会と違う掟があります。そして、外の社会よりも、非常に高い文化を持っている。日本の伝統文化もその中に吸収されて行って、そこで教養のある人たちも楽しめるようになっている。
だけども、それはどういう意味で遊郭というのが作られているかと言うと、江戸時代の社会全体に混乱を起こさないように「遊郭に遊女を全員集めてくださいね」という話から始まっているんですね。ですからそこには管理がある。
宮台:それは僕もよく発言しています。
田中:うん。掟もあるけど、外の社会と打ち合せ済みの管理があるんです。しかも、どうしてそれを引き受けたかと言うと、膨大な儲けがあるからなんです。その儲けはどこから出ているかと言うと、女性たちの借金です。女性たち、ひとりひとりが借金を抱えて。
自分のためじゃないですよ。家族のために、前借金と言うんですが、借金を抱えてそこに入ってきて、その借金を返すために日々食事もろくに取らないで働き続けて。まあ、若いうちに亡くなることがとても多かったんですけど。
そういう風な外の社会との契約関係で、どこに歪みが行くのかと言うと、結局個人なんですよ。それは弱い個人なんです。そこに入って来る人たちって、これ以上どうにもならなくって、そこに来るわけですよね。自分の家族が食べられなくなったから、お金を借りなければならなくって、「じゃあ自分が借金のかたになって働かなければならないのよね」って話で。
みんな親孝行という倫理を内在化しているから、自分としては「ちゃんと親孝行したんだ」と思いながら入って来るんですよ。ほぼ全員がそうなんです。そういう社会ってかなり気持ちが悪いですよね。
そいうような掟、社会の法律とは違う社会を全面肯定できないのは、そこにはお金の世界というのがあって。それは江戸時代も今も変わらないんじゃないかと思います。
で今、長屋の話が出ました。長屋と言うのは、掟は全然ないんですね。そこに偶然住んでるんです。まず。(中略:井戸やトイレを使うのに)自分たちでルールを作って行くんですね。それはお金儲けのためではないですから。日々快適に、できるだけ楽しく暮らすためのルールというのはありますよね。人間関係に必要なルール。それは自然にできてきます。
法律とは関係なくコミュニティごとに成立してくることはあって、これは村落なんかもそうだと思うんですよ。それは現実生活というところ。その中で、誰もが不快な思いをしないように、できてくるルールがあります。
でもそれはさっき言ったお金が動く社会、これは芸能界もそうなんですけど。膨大なお金が動く社会を存続させるための、掟っていうのとはまた違うとおもう。
宮台:うん。ではまた補足しますね。沖縄に行くとね、沖縄は2010年代半ばに、色街がほとんど潰されたんです。例えば那覇だったら、波の上とか、栄とか、真栄原とか、新吉原とかって、全部潰されました。
僕は地回りに守られながら、この辺りを全部フィールドワークさせて頂きました。非常に興味深いことは、もともと沖縄の色街は、働いてる人たちは奄美、奄美王島の人で。管理する人は、宮古島の人が多かった。両方とも被差別の場所です。本当に琉球王国の時代から差別されている。ちなみに宮古島は流刑地。でいわゆる芸妓を生み出して行くのが奄美。実際に歌の文化がある。非常に、そこだけ観れば文化のある村ですね。まずその話をひとつ。
あと僕、90年代半ばに、奈良に。奈良って言うのは、解放同盟が非常に強い。関西というのは、非常に部落差別がきついんだけど、特に奈良はきつい場所でもあって、奈良の解同は強い。
でさっき宮崎学の『近代の奈落』で書いてあることを申し上げた。差別は良くない。しかし一般人化することも良くない。ここはただの損得の界隈で、そこから観ると、まだ良き文化が残っている。ところが解同の幹部の人は「宮台さん、ありがたいお言葉ですけど、褒めすぎやな。うちらは生きるためにやってるだけでっせ」と言ったんですね。
次に、フランスとスウェーデンで、もともと売買春合法化でしたけども、フェミニスティックな運動の結果として、これが非合法化されることになったんだけど。大変な問題が生じてしまったんですね。つまり、売春をやめさせて、福祉でなんとかすれば全て問題解決という風に思っていた。が、全然そうならない。それどころか、差別感情が醸成されてしまう。ということが起こる。「これはなぜなんだろう?」ということを考えて欲しいんですね。
で答えを言いますけども。さっき言ったように、なぜ法に頼れないのか? 差別される。だから掟に頼って、しかし生きる。金を回すんですよ。だから掟の界隈は、金を回す界隈なんですね。
しかし僕が書評した中野会、暴力団の会長が書いた『悲憤』という本がある。元組長も言ってるように、僕も言ってるように、社会に聖域を残すのは非常に難しいんです。一般の界隈が掟を失って、全て法になる。これをリーガライゼーションとか、法化社会化というんですけど。そのときに、ヤクザとか芸能の界隈だけが、掟界隈を続けるということは、もともと難しいんです。
それはなぜかと言うと、損得の金勘定も大事なんだけど、同じように、僕たちが持っている共通の感覚も、大事だよね。ちょっと抽象的な言い方になっているけど、そのバランスをどれだけ考えることができるか。そのバランスは時代によって変わる。
しかし構造的に言うとね、一方で弱者や貧困者が次々生み出されていて。それこそ例えばね、昔からの被差別部落を穢多と言うとすると、そこに逃げ込む、アジールとして逃げ込もうとする人を非人という。そこに逃げ込まないとやっていけない人たちが江戸時代からいたわけだよ。この人たち一般人だよ。士農工商にカウントされる人たちだけれども、逃げるわけだよ、そこに。
そういう人たちが一方でいて、他方で、被差別民だけに許容された特権があり。なぜ特権があるかと言うと、掟の界隈で安定してるからなんだけども。吉原、葦原もそうですよね。でも統治の都合上、移転されて。そうなってるわけだけども。ある種、法の世界とも妥協しながら。しかし社会には弱者がたくさんいて、ということの中で掟界隈は金勘定と表裏一体にありながら、しかし続いてきた。
というわけで、いい掟と悪い掟があるわけではなくて。この構造は全てに共通していて。バランスだけが違う。それで、どのバランスから先を、これはインバランスだから認めない、と言うかは、社会の状況で変わる。そういうことだと思いますね。(終わり)
以上で文字起こしは終わりです。田中さんの言うことは半分はわかります。ですが、権力との打ち合わせはジャニーズもやっているはず。むしろ、それしか考えていない。政権与党、広告代理店、マスメディアなど。それらの理解を得て、現在も変わらず活動を続けている。
追記:ごめんなさい。私は田中さんの発言を誤読しています。田中さんは掟の世界自体を否定して語っているんですね。だから、ジャニーズ事務所や芸能界に対しても批判してる。
そこで出てくるのが、宮台さんが語るバランス。私が今回のジャニーズ問題に向き合ったとき、最初に語ったのが、自分の弱さがジャニーズを求めた、という話でした。これからもそういう弱い人たちが逃げ込める場所は必要です。もちろんまともな K-POP事務所でもいいわけですが。
弱さの中身や、度合いはそれぞれ違うと思いますが、ジャニーズのタレントたちにも、心当たりのある方は多いのではないでしょうか?
社会が許さない、これをジャニーズサイドが理解できるのか? 理解しない場合、私は、私たちはどう対応するべきなのか? それを考えて行きたいです。