ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

ジャニ友・宅八郎 インタビュー。 後編

オタク評論家・宅八郎さんインタビューの後編です。前編では「本気でジャニーズ事務所に入りたいと思っていたくらいです!」という発言も飛び出しました。まだ、未読の方はそちらからお願いします。今回はさらに深く、宅さんの「ジャニーズ観」を語ってもらいました。そして、最後には「宅さんのジャニーズ・ベスト3」& 圧巻の映像解説つきと、濃密な内容になっております。最後までお付き合いください。


みなさん、感想を言うのはなかなか難しいかも知れませんが、できれば「もっと読んでみたい」「もう読みたくない」くらいでいいので、ご意見、ご感想、お聞かせ願えれば幸いです。ヒット数はかなりあったのですが、感想はひとつもいただいていません(笑い)。よろしくお願いします!


◉ジャニ友・宅八郎 インタビュー。 前編
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20091023/1256317491



——最近のジャニーズについて、どのような印象を持っていますか?
宅さん:面白さが半減してしまっています。分かりやすく言うと、ただの新宿歌舞伎町のホストみたいになっちゃって! もっと、いたいけな感じ、この先どうなっちゃうんだろうという危機感があると良いですね。治療困難な難病に冒されている少年というイメージが良いです。ただし、それは病弱な子という意味ではなく、たとえばウィーン少年合唱団萌えあり、高校野球児(スポーツ少年)萌えもあり、「はかなさからやんちゃまで」、きわめて多様な危機感ではあります。


——やはりジャニーさんの精力減退が影響している? 
宅さん:性的身体能力という意味での精力減退についてまでは分かりませんが(苦笑)、ジャニーさんの「欲求」(それは旅と言えるものでもある)はまだまだ衰えているとは思いません。人間はそういうものです。しかし、結果としてジャニーズに「良い子」があまり出てきていないのは事実です。ただ、脳内欲求とは裏腹に何かの能力は落ちてきてはいるでしょう。「昔出来たことが今は出来ない」というのはどんな世界の人でもあることです。「旅」は終着駅に近づいているのかもしれません。


——「欲求」は衰えませんか? 誰しもに通じる話でもない気がします。宅さんやジャニーさんはそうなのかも知れませんが。
宅さん:うふふ。昔なら水商売、人気商売であるホストは「芸能人みたいなファッションや髪型にしてイケメンを演じていた」と思うんです。ところが、何だか最近は、逆に見えてしまう。残念ながら苦言を呈したいです。


——なるほど、その通りですね。宅さん、タッキーの『愛・革命』はどうでしたか?
宅さん:さすがです。かなり、良い線をついていただきました(笑い)。ナレーション部分は相当にジャニーさん的ですよ。もちろん歌詞もキテます。また、コンサートではイリュージョンな演出をしていたかと思います。その他のユニットでも定番ですけどね。これはジャニーさんの「マジック好き」のたまものだと思います。ただ、タッキーに関してはある時期はある程度たまらないものがあったんだと考えますが、結局は「タッキー&翼」ということになったのは事実です。



——私は違うことを考えていたんです。この曲はタッキーのソロデビュー作となっています。作詞も滝沢秀明とクレジットされていますし、舞台『新春 滝沢革命』テーマ曲ということですから、当然ジャニーさんが関わっていると思います。でも、私は「この曲の感じだったらジャニーさんがいなくなってもできるんじゃないか?」と考えました。つまり「ジャニーさん」っぽさを狙った作品のように思えたんです。ちょうど先ほど宅さんが言われたように「芸能人がホストを演じてる」そのものですし。
宅さん:ボクは「ジャニーさんっぽさ」を狙ったというのではなく、ズバリだと考えています。確かにこの楽曲は作詞が滝沢秀明、作曲が滝沢君とMark Davisの共作クレジットになっています。Mark Davisというのは馬飼野康二さんのことなんですけど(苦笑)、ここにジャニーズ的意味は見いだせます。ジャニーさんはフォーリーブス時代からも、本当は「作詞・ジャニー喜多川」なのを「作詞・北公次」にしていたりするんです(それは北公次さんが後に告白しています)。その後にも同じケースはあったかと思います。


——ええ。山下智久放課後ブルース』や Hey!Say!Jump『スクール革命』の薮くんなど、本人だったら絶対使わない言葉が登場しますもんね。私はもちろん大好きな曲ですが。山P が先生のことを「センコー」と呼ぶなんて想像できないですよね。いつの時代の不良なんだか(笑い)。ただ、『愛・革命』については、違和感を感じたんです。宅さんの説明を聞くと「そうかもな」とも思いますが。
宅さん:「いつの時代なんだ」って作風はまさにジャニー喜多川ですよ。ジャニーさんはメディアのインタビューなどに応じないことや自らが表に出ることをしないので有名です。ところが、自分自身が大変に自信ある歌詞を書いた場合、お気に入りの子の名前をクレジットにしてたりするんですよ。
なので、タッキーはいつの日か、明かすかもしれないし、明かさないかもしれませんが、推測としてはこの曲の真の作詞者はジャニー喜多川さん本人だろう、と思われるんです。そして、少なくとも「この時点」ではジャニーさんがタッキーを大変可愛がっていたことも分かります。
作曲ですが、ジャニーさんにもタッキーにもその能力がほぼ無いことは明らかでしょう。馬飼野康二さんは、どのような判断をなさったかまでは分かりませんが、もしかすると「共作クレジット」という要望であれば、少なくともペンネームにさせてくれ、ということになったのかもしれませんね(ただし、男闘呼組などの例もあります)。


——なるほど! Mark Davis 共作説ですか。Jimmy Johnson もそうですけど、以前からその使い分けの「不思議」が気になっていたんです。それはあるかも知れないですね。
宅さん:「曲の感じ」であれば、KinKi Kidsのセカンドシングル『愛されるより愛したい』も馬飼野さんなので(これは馬飼野クレジット)、比較検討してみるのも一興かもしれないです。
ただし、曲調(編曲)についてですが、「ジャニーさんの強い要望」があったんじゃないかな。このあたりは聴く人によってイメージは違うと思いますが、何かものものしい、神話とか、おごそかで荘厳なイメージで(笑い)、大げさに編曲されてますよね。ここもやはりジャニーさん的にボクには思えるんです。
この曲が特に、という意味ではないですが、まるで「盆と正月が一緒に来たような」作風がジャニー喜多川的であり、それが風土病です。


——はい、指揮もしていますし、空も飛んでます(笑い)。私もケチをつけたいわけではないんです。気に入ってます!
宅さん:ジャニーさんの独自すぎるゴージャス感覚ですね。それから、彼の「萌え」について説明していきます。例えばですが、松本潤のある時期の感じや二宮君の困ったような表情、その他の子たちの瞬間的なあどけなさ、やんちゃな子たち、声質(!)などなど、ジャニーさんが一瞬ときめいたであろうことは想像に難くありません。ジャニーさんのときめき萌えポイントは結構分かります。しかし、その子たちの「きらめき」は一過性のもので100点満点ではなかったんですね。10代の頃の郷ひろみが全科目で100点だったとしたら、残念ながらその他の子たちは一科目でも100点は取れていないんです(誤読を避けるために言っておけば、現在の HIROMI GO では100点は取れないです、時に少年のような顔を浮かべますが)。

——ずーっと、「あの頃のひろみ」を追い続けている。ロマンチックな話のような、そうでないような(笑い)。でも、ジャニーさんの基準が「郷ひろみ」であり、それが満点だとしても、他の基準もありえるわけですよね? ジャニーズの楽曲制作には多くの才能が集結しているわけですし。宅さんの「あの頃の郷ひろみ絶対説」は正しいのかも知れないし、わかりやすくもあるけど、それをリアルタイムで観てこなかった人間には納得しづらいものがあります。「バーニングの郷ひろみ」世代ですから。
宅さん:「郷ひろみ絶対説」というか、そこはちょっと、宗教の「原理主義」みたいな話と受け止められてしまっていたら、申し訳なかったかもしれません。世代が違いますから、「頑固で困ったおじさんの説教」みたいに聞えていたらスミマセン。
もちろん、ボクはジャニー喜多川本人ではありませんから、彼の脳の細胞までは分かりません(だからこそ、強い興味を持って研究してるんですけど)。もしかすると、ジャニーさんにとっては、「あの頃の郷ひろみ」でさえ、満点ではないのかもしれません。100パーセントではなく、120パーセントを要求する人間が世の中にいるように。


——あはははは!
宅さん:だから、ジャニーさんの「基準」というのは推測の域を出るモノではないです。ただ、歴史的経緯や複数の重要証言から、ボクは彼の「基準」を推測しているわけで、「とにかく絶対」とか、オカルトみたいに、無根拠にデタラメを言っているつもりはないんですよ。


——はい、わかりました。
宅さん:近年でジャニーさん採点のアベレージが最も高く、維持しているのはKinKi Kidsだろうとは思います。デビューにあたっては何しろレーベルを作ってしまったくらいですから(ただし、現在形では少し困っている可能性大いにありです)。
あ、ジャニーさんはヒゲを生やすことは基本的に許しません。雑誌など印刷物などに掲載されるような、すべての写真で「所属している子」のヒゲ剃り跡は出版社に徹底的に修正させて消させていましたよ。同性愛者でも色々ですが、彼は「小児科」ですから(笑い)。


——あと、先ほども SMAP について質問しましたが、木村拓哉 についてもう少し話したいと思います。結婚もして子供もでき、一時の勢いはないわけですが、それでもジャニーズが生んだ最大のスターは 木村拓哉 だと思うんです。ジャニーさんがそれほど愛していなかった(かも知れない)木村拓哉 が実際には一番のスターになったわけです。「風土病」というなら、そのあたりは矛盾していませんか?
宅さん:なるほど。ただボクが矛盾しているように見えるとしたら、対象が矛盾しているからではないか、とも思えます。「風土病」だからこそ矛盾していると言えます(苦笑)。エンターティメント・ビジネスを頭の良い人間がマーケティングに基づいて計算したとしたら、矛盾はあまり見つけにくいモノです。「頭が良い」ではなく「頭の狂った」人間こそ矛盾しているとも言えますし、それは否定ではなくもはや「文学的」「芸術的」大評価なんです!
読者の反感を買うといけないので、お断りしておくと、ボクは木村拓哉を否定してはいません。最高にカッコイイですよ。インタビュー前編で触れた『科学忍者隊ガッチャマン』で言えば、「G2」つまりコンドルのジョーですよ! ボクは「オタク」ですが「キムタク」は最大のスター、「Japanese Super Star」であることは間違いないんです。
ただし、ビジネスという視点でなく、「Japanese Super Star」を超えた部分が「風土病」と言えるんじゃないかと思っています。


——なるほど、わかってきました。宅さんとしては、ジャニーさんの『作品』として、当時の郷ひろみの方により惹かれるということですね。『 Japanese Super Star 』の範疇からはみ出た部分に惹かれているということでいいですか?
宅さん:そうですね。何しろ、かつての田原俊彦のバックダンサー名は「ジャPAニーズ」だったくらいです(笑い)。


——では、そろそろ具体的な曲の話をしましょう。ジャニーズで好きな曲ベスト3を教えてください。Youtube の映像でも構いません。
宅さん:ちょっと考えさせて下さい。選べるかな〜・・・。オタク的にはマニアックすぎて、誰も知らないとか、音源を探すのが困難なんて選曲にするのも「アリ」だとは思うのですが、やめておきましょうか(苦笑)。「昭和の人間」として、年代バラバラだけど誰もが分かる選曲にしてみます。映像に詳しい解説をつけますので、これまでの「風土病」という表現に抵抗感がおありの方にも、これは時代を越えた一つの「病」であると理解しやすく提示してみましょう。ベスト3だと以下になりますが、歴史を追うという意味では「1」と「2」の間に、たのきん。そして「2」と「3」の間にはKinKi Kidsが入るでしょう。
(ただ、繰り返しになりますが、ボクはノンケです。誤解しないでネ。なお現在、嫁募集中です)


1.「男の子女の子」(郷ひろみ
2.「ガラスの十代」(光GENJI
3.「青春アミーゴ」(修二と彰


宅さん:あまりにも昭和っぽいでしょ。って言っても、3つめは近年の曲ですが「曲調が昭和歌謡」ってことで(笑い)。


——あははは。では、まず『男の子女の子』について。宅さんは『男の子女の子』をステージで歌ったことがあるんですよね?
宅さん:今でもアレンジを変えてバンドで歌っています。すっかり自分の持ち歌です!


——そうですか(笑い)。最初に「ロフトプラスワン」で宅さんにイベントをやってもらった後、宅さんが『男の子女の子』の映像を見せてくれたんですよ。そのとき、私は初めてバックダンサーの動きが普通ではないことに気づいたんです。頭と腕を必死にグルグル高速回転させてました(笑い)。それで宅さんに「凄いですね」と話しかけて、そこからジャニーズの話をするようになったんです。もう10年以上前の話です。
宅さん:その映像は73年末モノの郷ひろみでしたが、バックダンサーは当時のジャニーズ・ジュニアで、その後にはMETSとJJSというユニットになりました。ジャニーさんがこれまで40年も少年たちにやらせていることは基本的に同じです。現在のジャニーズも未来の2050年頃に観れば「普通ではない」ことに気づくことになると予言しておきましょう(笑い)。


——そして、今回選んでもらった映像ですが、、、



宅さん:まるでお人形さんや昔の少女マンガに出てくるようなキャラクターでしょう。時代を考えても、あんまりな衣装やひろみの怪しい目つきにも注目、子猫の眼のように変わる表情の変化に大興奮します。バックのミニスカート女の子の人影は麻丘めぐみさんに間違いないですね、お人形さん的意味合いでも女性アイドルでは大好きな方でした!


——なんでしょうね、これ(笑い)。ドキドキします。ひろみに何があったんでしょうか?
宅さん:細かく解説していきます。


A・00分09秒〜→ひろみが右手を振る仕草に萌え。これ以降も手の動きに注目。
B・00分22秒〜26秒→右手の動きに注目。
C・00分35秒〜36秒→ひろみが目をつぶる、うっとりした可愛らしさ。
D・00分37秒〜40秒→そして眉間に少ししわを寄せて苦しそうな表情を一瞬しますが、まるで喘いでいるようで、すごく興奮します。
E・00分42秒〜44秒→少しいたずらッ子のようでもあり、おすまししているようにも見える表情、そして頑張るぞって顔!
F・00分45秒〜46秒→1秒間の「ぼく、出来るんだもん」って顔、最高すぎですっ!! !
G・00分48秒〜53秒→このサビ部分は「アンアン」歌っていますよ。読者のみなさんも萌えるでしょう。色々な表情がそこにありますが、変化はゆるやかなので、ゆっくり楽しめますね。なお、初期の郷ひろみには本当に「アンアン」喘いでいる楽曲が多いです。声質の素晴らしい不思議さと相まって、ジャニーさんが「ひろみに喘いでもらいたい」「そういう作詞作曲を」とお願いしたんじゃないか、と思えます。
H・00分54秒〜01分00秒→少年ひろみは流し目さえ見せてくれてますよっ。
I・01分05秒〜06秒→一瞬1秒ないくらいですが、キッと見据えてます。ドキッとします。
J・01分11秒〜13秒→また苦しそうな喘ぎの表情を見せてくれました! 
K・01分13秒〜15秒→2回、目が泳いでいるのが分かります。大興奮(現役ジャニーズにも時に目が泳ぐ子がいますよねっ)。
L・01分16秒〜19秒→しかし、その後に笑顔に転じていくのは天使です。
M・01分19秒〜20秒→また、目が泳ぎました!(審査員たちが映る直前です)この、少し困ったような顔! こうした表情は萌え萌えです。
N・01分25秒〜36秒→このサビのロング・ショットはきかん坊のような感じがポイントです(もちろん、右手の動きにも目を離してはいけません)。(だけど、左端に映ってる麻丘めぐみさんのシルエットもいいな♪)
P・01分38秒〜40秒→ひろみは虚ろな表情を浮かべたながら、一瞬上を見るでしょう。この時期のひろみは良くこういう表情もあるんです。このはかなげな感じにも「少年」を感じます。肺を患った少年患者がベッドに横たわり、病室の窓から外で小鳥を見つけたようなイメージです(現役ジャニーズの子にも少しそういう子いますね)。
Q・01分48秒〜55秒→オーバーラップした映像の中で、体を傾けつつ右手を挙げていく仕草は、まるで世界を(ジャニーさんを)包み込むようです。
R・01分55秒〜ラスト→目を泳がせつつ、遠くを見ていくんです。最後の最後、唇の感じも素晴らしい。もう、たまりません!


宅さん:こうして観てみると少年時代の郷ひろみは本当に秒単位で表情が素晴らしく変わるでしょう。まるで百面相です。可愛らしくて愛らしくて萌えてしまう人がいる気持ちがボクには分かります。その後から現在までのジャニーズですごく良い表情を浮かべる子はいますが、これほど百面相の子がいないのは理解していただきたいですね。


——うーん、、、宅八郎節、ありがとうございます(笑い)。



——次に光GENJIガラスの十代』。
宅さん:初期の光GENJIの楽曲は粒ぞろいですが、これも名曲中の名曲です。スケートボーイズ=現SMAPなどがバックで初登場した曲でもあります。ジャニーさんが考える、十代の少年は硝子の心を持っていて欲しいという願いは後のKinki Kidsデビュー曲タイトルにもつながっていますね。ガラス= Glassは英語としては「輝く」が原義で、「純粋」「はかなさ」の象徴になる単語です。
では解説いきますよ。


——これもやるんですか?
宅さん:やるに決まってるじゃないですか(苦笑)!


A・00分40秒〜少年たちの群像がたまりませんが、その中でも主役級の子には羽をつけたり着飾らせるのが一番です。クルクル回っている意味を今は深く考える必要はありません(クルクル回るような振り付けや、そこまで足を上げなければならないのか、みたいな振り付けの原点は「青春アミーゴ」解説で後述します)。
B・00分53秒〜スケートボーイズが視界の中で横切っていくのも、まるで虚ろな映画的残像のような光景だと思います。彼らもまだ服を着ています。
C・01分47秒〜何と、GENJIの5人がデニム短パン+裸足になってしまいました。わお、ほぼ半裸ですよ! このステージ衣装?は小中学校時代の水泳の授業のようでもあり、たまりません。どんどん脱いでいく様はストリップと言えます。この映像では確認しづらいですが、横切るスケートボーイズもトップレスになってしまう演出です。
D・01分56秒〜ここで光の2人が入ってきますが、彼らがはいているパンツはまだロングです。しかし、不思議なシルエット(ライン)のパンツですよね。振り付けにカンフー(空手)を取り入れているのはかなり昔からのジャニーズ振り付けの歴史に観られるものです。じつは70年代初頭を席巻したブルース・リーの影響なんですけどね。
E・02分07秒〜おや、光の2人が姿を消しましたよ〜。その間もやんちゃな少年たちが元気いっぱいに歌い踊っているのです。
F・02分37秒〜ここで、何と光の2人までが短パンになってしまいました! そうです、脱ぎにいっていたのでした。ストリップショーには演出上盛り上げるためにこうした流れが必要と言えます。
G・02分57秒〜裸の少年たちがどうしてバック転しているのかという不思議さもジャニーさんにとってはもはや必然です。


——いやー、なんというか。この演出はかなり凄いですね。宅さんの解説でよくわかりましたけど、動画は速攻で削除されてしまいそうですね(笑い)。みなさん、早めに見ておいてください。
宅さん:さて。少年たちがどんどん脱いでいく、このストリップショー演出ですが、当時の「ザ・ベストテン」では黒柳徹子がめまいを起こして目を背けたという伝説もあります。ジャニーさんと2歳しか違わない徹子さんは、その風土病に「気づいた」からでしょう。


——徹子、まともです(笑い)。そして『青春アミーゴ』です。現在、山下くんのいる NEWS も、亀梨くんのいる KAT-TUN もジャニーさん色の薄いグループですよね。
宅さん:NEWSやKAT-TONについては解釈にはよるかもしれません。先ほどの例で言えば、ジャニーさん独自の採点ポイントがあり、いくつかの面で得点が何点か取れる子を集めてはいるんでしょうね。


——あっ、すいません。メンバー構成のことを言ったわけではなくて、楽曲のことを言いました。
宅さん:あ、なるほど。楽曲は確かにそれぞれJ-POPかもしれませんね。その意味ではジャニーさん色は薄いでしょう。ユニットについてですが、絶対的な法則とまでは言いませんが、ジャニーさんがアルファベットでユニット名を名付けた場合、けっこう適当な気はします(KinKi Kidsはアルファベットですが、日本語の意味合いがありますから例外)。やはりね、「修二と彰」と名付けたところが、ジャニーさんの本領発揮なわけです! テレビドラマから生まれたユニットとは言え、コンビ名が「修二と彰」とは、放送局やレコード会社の関係者など、一瞬とまどったと思われます。彼ら常識人には考えもつかない命名ですから。ドラマの役名をそのままにしたという意味を超えています。それはじつは昭和の新宿二丁目感覚なんですね。昭和40年代にレズビアンをコンセプトにした女性デュオで「じゅんとネネ」という2人組がいたのを、じつはボクは思い出していたんですけど。


——ああ、「じゅんとネネ」ってそういうグループだったんですか。名前しか知りませんでした。まあ、トラジハイジ『ファンンタスティポ』が出ていますから、その流れもあるんでしょうけど、たしかに「修二と彰」は普通の響きじゃありません。
宅さん:では映像の解説に行きますよ。まず、この楽曲、どうしてボクがテレビなどのライブ映像ではなく、PVを提示したかという意味もご理解いただけると思います。脈々と流れる「ジャニーズという風土病」を分かりやすく体現したものになっているからです。



A・00分00秒〜00分27秒 初っぱなから金網です! この意味合いには説明が必要ですね。1961年にジャニー喜多川さんに多大なる影響を与えた「ウエスト・サイド物語」というアメリカのミュージカル映画があります。彼が芸能事務所の経営を考えたキッカケになった素晴らしい映画です(異説あり)。ただ、ジャニーさんはそれをアメリカではなく昭和日本の映画館で観たことが重要だと思います。この『青春アミーゴ』のPVを観れば、その強い影響を受けていることが明らかです。映画的なカットと舞台セットのようなステージ。階段状になった2段の舞台セットがそうです。金網や階段、老朽化した煉瓦の建物などが、まさしくそうなんです(あとはバスケット・ボールなどあれば完璧だったんですけどね→ジャニーズに詳しい方であれば過去にそうした演出例があったのを御存知でしょう)。また、付け加えるとしたら、『エデンの東』『理由なき反抗』といった作品の影響も感じます(その場合はバイクを配置する舞台演出もあって良いですが、これもジャニーズの過去に例がありますね)。

(※なお、この部分の解説をより深く理解するために、インタビューの最後に注釈資料映像を2つ用意してくださっています。1つは映画『ウェストサイド物語』オープニング、そしてもう1つは少年隊がデビュー前にフォーリーブス『急げ!若者』をカヴァーした映像です)


B・01分03秒〜17秒→すでにジャニーズらしくダンスが入ってきています。もちろん、時代時代があり、ジャニーズで言えば少年隊以降、ダンスのレベルは飛躍的に上がっています。この曲でもPV以上にテレビ出演やコンサートでは激しい振り付けもあったか、とは思います。しかし、ジャニーさんの本質的な要求はJ-POPではないことに代わりはありません。

C・01分20秒〜23秒 先ほども2秒間あったのですが、このダンス振り付けに注目。右手の動きを見て下さい。まるで水鳥のようなポーズです(笑い)。この不思議さは極めてジャニーズ的です。ダンスにはステップが第一だというのは一般的常識ではありますが、しかし、じつは「身振り手振り」という言葉があるように、ジャニーズはもちろんのこと昭和の歌謡曲では「手の動き」(フィンガー・アクション)が重要なわけです。J-POPの場合は知りません。

D・02分32秒〜40秒 バックダンサーが急にクローズアップされる演出です。「修二」と「彰」のあいだに第三者が入ってくる。これは色々な古いアメリカ青春映画の影響が複合してます。また同時に、「山下君・亀梨君」の間を引き裂こうとする人間が現れても、結局、二人の絆は切れはしないんだ、とジャニーさんが大きくうなづいているような解釈もあり得るでしょう。

E・03分15秒〜50秒→先ほどジャニーズ的振り付けについてお話ししましたが、良くあるクルクル回ったり、足を高く上げるジャニーズ特有の振り付けは「ウエストサイド物語」の影響がルーツと言えます。この映像ではそれほどハデではないですが。

F・03分58秒〜04分03秒→出ました、また右手の奇妙な振り! かものはしですかっ。もちろん、ジャニーズにも振り付け師がいるわけで、ジャニーさんが力を入れてない場合はまかせっきりでしょうが、ジャニーさんが特に力が入ってしまった場合、「こういう感じで」とまさに身振り手振りで(座って)指示しているんじゃないかとも思えます。

G・04分38秒〜43秒 どうしてこの曲調でこれほど派手なダンスをしなければならないのかバック転が必要なのか、など客観的には不思議で分からないところもあるでしょう。答えは「それがジャニーズだから」です。


——いや凄いですね。『青春アミーゴ』でここまで語れる人なんていないですよ!
宅さん:すみません、さっきから暴走してきてるかもしれません(苦笑)。


——最初、音が遅れて入りますよね? これって何か理由があるんですか?
宅さん:それは映画的かつミュージカル的間合いです。前戯とも言えます。


——いや、まったくなにも考えずに見ていました。この曲、本当にいい曲だと思うんですけど、あまり好きじゃないんですよね。カラオケでも歌ったことがないし。たぶん、「男の友情」って言葉を使うヤツらが嫌いだからだと思うんですけど。
宅さん:なお、修二と彰は衣装もブレザー姿であることはテレビドラマ役柄を超えてとても意味があります。テレビの歌番組ではその姿のまま、この曲を歌ったこともありましたね。これはある意味ではセーラー服プレイを喜ぶロリコン男性マニアに通じるものです!


——へえー、、、。
宅さん:さて、この曲、当初に予定されていた歌詞がじつは変更された経緯があるんです。歌詞は見事にジャニーさん好みになっています。70年代以前から続く言葉選びが実はあるんですけど。歌詞を良く聞くとシュールすぎるし、同性愛的には意味深いですよ。


——最初の歌詞はイタリアが舞台だったんですよね。私はマッチさんの『アンダルシアに憧れて』の影響が見え過ぎるので、日本に置き代えたくらいに思っていました。あちらはスペインです。で、70年代から続く言葉選びとはどういうものなのでしょう? もう少し教えてください。
宅さん:まあ、「アミーゴ」=amigoはスペイン語の男性形名詞であり、イタリア語ではamico(アミーコ)になります(苦笑)。そのくらいいい加減なものです。英語でなければ語感だけで良いんです。「どこ」という土地はどうでもいい。ただジャニーさんとしては「日本」にしたかったんだと思います。自分がすぐ会えることが大切ですから(笑い)。「地元」「この町」「俺たち」と歌詞に入れるのであれば、なおさらです。ああ、大都市ではない地元の町ってのは、『ウエストサイド物語』などの影響かもしれないな。
では少しずつ可能な範囲で説明していきます。この曲の「例のヤツらに追われてる」ってシチュエーション、あまりにシュールすぎです。何がどう「もうダメかもしれない」のか、不思議です(笑い)。ホモSM的理解は可能かもしれませんが。
歌詞でジャニーさん好みであり、「このフレーズを入れて」と作詞家に指示したかもしれない言葉としては、「予感」「二人を裂くように」「俺たち」「いつでも二人で一つだった」「生きてきた」「旅立つ」「抱きしめて」と言った箇所でしょう。
さて、風土病として歴史に脈々と流れる「言葉選び」はすべてを網羅した上で整理し説明していくのには大変な文章量を要してしまいます。また、言語学的理解を必要としてしまう可能性もあります。なので、以下の提示で許してください。


●「僕たち(俺たち)」ないしは「二人」→男・男という文脈で使われていても、男・女という文脈で使われていても、これはじつは「その歌手とジャニーさん」という暗喩だったりもします。
● 「二人称と一人称『You&I』君と僕(おまえと俺)→同上。これを歌詞として展開すると「君がいて僕がいる」みたいな歌詞になる例。不思議に「I&You」ではなく「You&I」になる形式が強く見られます。
● 「君」「君こそ」「君だけ」→ジャニーさん独り占め(笑い)。
● 「おいで」「来て」「ようこそ」→ジャニーさんの家へ(笑い)。
● 「部屋」→ジャニーさんの(笑い)。
● 「傷」→これは歌詞として展開すれば、名詞としてでだけでなく「傷ついた」「傷つけて」とか終止語尾変化は多様です。その意味合いには心理学者・精神学者に見解を聞く必要はあるかもしれません。同様に「壊れる」とかもあります。
● 「天使」や「革命」(つまり、ある意味で荘厳ともいえる言葉。その他、大げさを超えてしまって宗教学的には「おこがましい」言葉さえ選ぶ場合もあります)。
● 願望形→「〜して」「〜したい」「〜したくなる」「〜欲しい」など多様。
● 同意を求めるような疑問形→ようするに「〜じゃない?」とか「〜と思わないか?」とか、やはり多様ですね。
● その他で言えば、ありきたりに見える言葉もありますよ。「愛」「抱きしめる」「見つめる」とか「夢」「とまどう」「思い」とか「やさしく」「どこまでも」とか「旅」「永遠」とか。まあ、「愛」の場合は、「愛し愛されて」と相思相愛を切望していることもあります。


——私が望んだ以上の解説、ありがとうございました!
宅さん:まとめてみれば、要するに主体と客体の問題なんです。ジャニーズでも例えば一見普通によくありがちな、男同士の「友情」を歌った場合や、男女の「愛情」を歌っているような楽曲はあるわけです。
そして、女性ファンは「友情」を歌っている場合はそれが少年らしくてキュン可愛いなって思える。また男女の「愛情」を歌っている場合は当然キャーとなるわけです。「え、私のこと」なんて思っちゃう子がいても不思議じゃないです。ちょっと困った女の子だとは思いますが(苦笑)。
そこでは一見、主体と客体はグループなら男の子同士、あるいは歌手と女性ファンの関係性のように見えます。ところが、ジャニーズ楽曲の主体と客体の深層は、あくまでも「その少年とジャニーさん」なのかもしれないとボクは考えているわけです。もちろん、ジャニーさんは経営者です。所属しているタレントたちを売っていきたいし、人気が出ると良いなとは考えているでしょう。しかし、御本人がどこまで自覚的か、無意識とさえ思えますが、その「病」の部分は深いものがあるのではないか、と考察しているわけです。
ただし、ボクの難病研究は結論を得て完結しているわけではないので、今後も成果、結実を得るように研究を進めていきたいです。


——そうですか、どうもありがとうございました。まだまだ聞きたいことがありますから、よろしければ、またいつか登場してください。あと、お時間あれば日本でおいしいものでも食べに行きましょう。
宅さん:おいしいものは大好きです。御一緒しましょう♪ もし良かったら、ボクの「お嫁さん」候補も御紹介して下さい。ボクがこのインタビューで最も伝えたかったこと、それは「嫁募集中」ということです!


——宅さんの好みって難しそうだからな、、、これを読んだみなさん、よろしくお願いします! 次回は久しぶりに Oさんとお話します。日本に一時帰国したときの話などさせていただきます。では!


(※)資料映像 映画『ウェストサイド物語』オープニングと、少年隊『急げ!若者』