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課長 島耕作で本を作ろうかと… 2

前回『課長 島耕作』について「テーマは出世ではありません。年を取ってからの恋愛だったのです。恋愛のシチュエーションを変えるために出世も必要だったわけです」と書きました。これは第1巻を読んでの考察でした。しかし、1巻の5話目から少し様子が変わってきます。この後長く続く初芝電産内の派閥争いがストーリーに入ってきたのです。連載を意識して、方向を少し修正したのでしょう。正直、株関係の話をしようと考えている私としては、あまり興味がありません。まあ、日本が経済成長していた時代には、内輪での争いがリアルなサラリーマンの物語だったんでしょう。


弘兼憲史叢書 島耕作全集 課長編

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1〜5巻までは、島耕作が派閥争いに巻き込まれながらも、ニューヨークに行ったり、ラスベガスに行ったり、京都に行ったり、それぞれ美しい女性との恋愛をまじえて描かれています。6巻からまた少し展開があります。本社に戻って来てショールーム課の課長になるのですが、そこに配属された新入社員で大町久美子という女性が登場します。大町は現在でも登場する重要な人物です。というのは彼女のことを島が愛しているからではなく、初芝創業者のカリスマ経営者 吉原初太郎の隠し子だからです。彼女の母親は初芝の大株主でもあります。


初芝松下電器が舞台になっているわけですから、当然、松下幸之助の娘ということでしょう。いや、実際にそういう話があるかは知りません。とにかく、初芝創業者の娘と恋仲になった 島耕作 が派閥争い、そして次期社長争いのキーマンになるというわけです。9巻ではついに社長解任劇が描かれます。これはモデルがあったと作者は語っています。そして、描いた後にも同様の事件があったとのこと。モデルになったのは 1982年の三越事件ですよね。そのあたりは 大下英治先生の『小説三越・十三人のユダ』で御覧くださいw そして、同様の事件の方は 1992年のフジサンケイグループで起こった会長解任劇でしょうか。


十三人のユダ―三越・男たちの野望と崩壊 (新潮文庫)

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メディアの支配者 上

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とにかく、島耕作は派閥に属することを拒否しながら紆余曲折ありながらも、流れで本流に入って行き、出世の道を歩んで行くわけです。でもその前に、派閥争いの余波でフィリピン・ハツシバに出向します。これは 1995年の話ですが、松下では 1987年にフィリピン松下通信工業という社名で工場進出しています。1〜10巻まではそんな感じです。


あと、文庫本の表紙の裏には、作者のコメントが掲載されています。3巻には『取材のやり方のはいろいろあるが、僕はあらかじめストーリーの絵コンテを作っておいて、その絵コンテに沿って取材をしたり、写真を撮ったりする』と書かれていました。6巻には『「課長 島耕作」はビジネス漫画というより、恋愛漫画といった方があたっているのではないか』とありました。やはり、そうなんですね。