ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

松本伊代の名曲『センチメンタル・ジャーニー』。

前回は最初のグループアイドルがキャンディーズであること、最初の大人数グループアイドルがチェッカーズであることを書きました。グループアイドルの続きを書く前に、今回はソロのアイドルについて書きます。



◉最初のグループアイドル、キャンディーズ
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20130607/1370603404


70年代の最後、キャンディーズの「普通の女の子に戻りたい!」に続けとばかり、続々とアイドルたちが舞台を降りました。ここでアイドル幻想が一度崩壊したのです。ですが、それでアイドルというジャンルが衰退したわけではありません。アイドルという職業が確立されたことで、そのハードルは70年代よりも低くなりました。アイドルを目指す10代は増えたのです。


◎1980年2月 岩崎良美赤と黒』でデビュー(六本木オフィス)
◎1980年4月 松田聖子裸足の季節』でデビュー(サンミュージック
◎1980年6月 河合奈保子『大きな森の小さなお家』(芸映
◎1980年6月 柏原芳恵『No.1』でデビュー(ゴールデンミュージック)
◎1980年6月 田原俊彦『哀愁でいと』でデビュー(ジャニーズ)
◎1980年9月 三原じゅん子『セクシー・ナイト』でデビュー(宝映?)
◎1980年12月 近藤真彦スニーカーぶる〜す』でデビュー(ジャニーズ)


◎1981年3月 沖田浩之『E気持ち』でデビュー(スターダスト)
◎1981年7月 竹本孝之『てれてZIN ZIN』でデビュー(サンミュージック
◎1981年9月 伊藤つかさ『少女人形』でデビュー(劇団いろは)
◎1981年10月 松本伊代センチメンタル・ジャーニー』でデビュー(ボンド企画
◎1981年11月 薬師丸ひろこ『セーラー服と機関銃』で歌手デビュー(角川春樹事務所)


◎1982年3月 小泉今日子『私の16才』でデビュー(バーニング)
◎1982年3月 堀ちえみ『潮風の少女』でデビュー(ホリプロ
◎1982年3月 三田寛子『駈けてきた処女』でデビュー(スターダスト)
◎1982年4月 石川秀美『妖精時代』でデビュー(芸映
◎1982年4月 早見優『急いで! 初恋』でデビュー(サンミュージック
◎1982年5月 中森明菜『スローモーション』でデビュー(研音
◎1982年7月 原田知世『悲しいくらいほんとの話』でデビュー(角川春樹事務所)



80年代に入って最初の3年で、これだけ多くの人気アイドルが誕生しました。アイドルのヒット曲は常にチャートをにぎあわせていましたが、その中でも ジャニーズの 田原俊彦近藤真彦、そして、松田聖子中森明菜 を中心にして 80年代前半は盛り上がりました。そのあたりの状況についてはいろんな本で語られていることと思います。


でも、渡辺プロのアイドルがいないことは確認しておきたいですね。グループアイドルでは、フィーバー、ソフトクリームなどがありましたが、売れていません。吉川晃司が登場(1983年)するまで厳しい状況でした。



ここで注目したいのは、グループアイドルで注目された「変身」についてです。ソロの歌手では、それほど目立った変身が見られません。恐らく、70年代に確立した「アイドル」そのものに変身したのではなかったでしょうか? その代表格は「ぶりっ子」という流行語を作った松田聖子でしょう。かわいいアイドルを演じているとバッシングも受けました。




さて、やっと今回の本題に入ります。松本伊代のデビュー曲『センチメンタル・ジャーニー』です。作詞:湯川れい子、作曲:筒美京平、編曲:鷺巣詩郎です。まずは冒頭の歌詞を見てください。(JASRACより歌詞の削除要請がきましたw 歌詞はリンク先でみてください)


松本伊代センチメンタル・ジャーニー
http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=37001
『読み捨てられる 雑誌のように 私のページがめくれるたびに』


これは凄い歌詞でしょう! デビュー曲なのに「私のことを使い捨てにするの?」という問いかけから始まってるんですよw 歌詞を書いた 湯川れい子には「アイドル」がこのように見えたのでしょうか? いや、違うのです。ファンと松本の関係をつくるために、この路線を考案したのでしょう。


この企画力は特筆に値すると思います。アイドル史の第一回で紹介した「歌謡曲のパーソナル化」の80年代版でもあるでしょう。松本の所属したボンド企画の社長 高杉敬二 は、おニャン子クラブの企画を仕掛けたと語られる人物です。


◉最初の女性アイドル歌手 南沙織
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20130511/1368274042


センチメンタル・ジャーニー』の架空と現実の境界をわからなくする歌詞「伊代はまだ16だから」という決めの1行は話題を呼びました。キャンディーズは解散の決意を「普通の女の子に戻りたい!」という言葉で宣言したわけですが、松本伊代はデビューの時点で、傷つくかもしれないけれどアイドルとして生きると宣言したのです。もちろん、本人はまったく自覚してなかったでしょうけどw 


小泉今日子が『なんてたってアイドル』と開き直る4年前、すでにアイドルは覚悟の問題となっていたのです。(つづく)