ハノイの日本人

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日本代表メンバー発表を前に。

ワールドカップに出場する日本代表メンバー23人が明日発表になります。NHK ではその模様を生中継するらしいです。でも、ぜんぜん盛り上がってこない! どうせザッケローニはいつもの選手を選ぶんでしょ? 監督の権限はかくも大きなものなんですよ。とは言え、このまま文句たれててもしょうがない。ワールドカップ関係の本を読んで少しでも盛り上がろうと思います。


南ア戦記

南ア戦記


書店に並んでるサッカー本のほとんどは代表選手関係のものでした。正直、選手の本って興味ないんですよ。そんなに面白いことを話してるわけでもないので。いや、あのときこんなことがあったというようなエピソードは得られると思うのですけど。で、上の本を選んだわけです。この方はマガジンハウスの編集者だったそうで、その後、作家として野球の本などを書かれています。サッカーを詳しく研究している人ではありません。それはサッカーにおける監督の重要性を理解しない文章で特に顕著です。


そして、インタビューなど取材をしたわけではなく、それどころか試合を現地で観たわけでもなく・・・・新聞や雑誌、書籍を読んで、2010年の南アフリカ大会での日本代表を検証されています。引用が内容の半分ほどを占めている印象です。あとがきで著者が書いていますが、その方法を非難されることもあるそうです。しかし、こういう検証もありだと私は思います。著者が設定したテーマがしっかり語られているのであればですが・・・・



著者はカメルーン戦を前後して、岡田監督への評価が一変したことを問題にしているようです。本田の得点で勝ったワールドカップ2010初戦のことです。それだけではなく、評価を変えなかった評論家も批判しています。お前たちがあれだけ批判していた岡田監督が結果をだしたじゃないかと。特に監督解任を叫んだ金子達仁については手厳しい。以下の箇所をご覧下さい。


『この先、日本はどうやって戦っていけばいいのか。外野席にいる評論家やジャーナリストたちは好き勝手のメチャクチャ発言を繰り返しているのだが、そのなかでもセルジオ越後金子達仁日刊ゲンダイのコメンテーターの鈴木良平らは「岡田辞めさせろ!」の一点張りコールである。』(P69)
『少なくとも監督の更迭を唱えるのであれば、どうすれば勝てるか、ぐらいのことは書かねばいけないのではないか。もしかしたら、彼は岡田監督に一度もインタビューしないで原稿書きしていたのではないか。
 わたしは金子の書くモノをサッカーだけでなく、何冊か読んでいるが、いずれも論旨の土台を形成する社会と文化全体に対する認識の部分がヨレヨレである。大学時代にちゃんとした社会学を教わっていないのではないか。マルクスの『資本論』から読み直して、人間が金を稼ぐということがどういうことか、というところからもう一度考え直した方がいい。踏み込んで自分の主張を訴えるのであれば、筆先でモノを弄くっている感じがしないように、ちゃんと取材をしなければダメだ。』(P72)


著者は岡田監督にインタビューせずに書くなと言っています。でも、少しでも日本代表のことを知っている人ならこんな発言はしません。だって、代表監督への取材はサッカー協会によってガチガチにコントロールされているからです。批判的な人物がインタビューするなんてほぼ不可能でしょう。金子さんも「どうすれば勝てるか」を書かれていましたよ。著者が本当に岡田監督を叩いた人物を批判する気があるのなら、論理的に語っている杉山茂樹を叩くべきではないでしょうか? いや、私も岡田監督解任を主張していました。「南アフリカまで観に行く価値があるのか?」と思ってたくらいです。


◉【日本代表】南アフリカでの収穫と置き去りにされた問題(杉山茂樹
http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/jfootball/2010/06/30/article89/
『ハーフタイムにトイレで一緒になった知り合いのドイツ人ジャーナリストは、僕を発見するなり、堰を切ったように怒りをぶちまけた。「この試合は最悪。退屈きわまりない。日本は何やってるんだ。なぜもっと攻めないんだ」少なくとも前半、試合が面白くなかった理由の大半は、日本側に原因があった。パラグアイのボール支配率が61%だったのに対し、日本は39%。繋ぐサッカーを信条とするはずの日本が、ボール支配率で相手に大きく劣るということは、日本らしいサッカーができていなかったなによりの証拠になる。守備的サッカーを強いられていたことにもなる。ピッチには結果的に、カメルーン戦の後半、オランダ戦の前半と同様の絵が描かれていた』


岡田武史がW杯直前の暗闘を激白!あの「突然の戦術変更」までの苦悩。(ナンバーweb)
http://number.bunshun.jp/articles/-/48988



正直、南アフリカ大会での岡田監督をどのように評価していいのか、今でもわからないんですよ。選手のコンディションを初戦にあわせた手腕というのは誰もが評価するところでしょうけど、監督としての手腕の方はやはり疑問符がつくのです。なにより、南アフリカ大会での日本の試合が非常にサッカーとしてつまらないものだったからです。いや、現地では楽しくて大騒ぎしました。これは今年始めに BS での再放送を観たときの感想です。あれは日本人以外が観てもぜんぜん楽しめない試合ですよ。


金子さん、杉山さん、サッカーが大好きな人なら、こう考える人も多いはずです。ワールドカップは世界で一番大きなお祭りだ。だから、そこに出場するからには自分の国のサッカーがいかに素晴らしい物かをお披露目しなければならないと。つまらないサッカーをすること自体が罪だと考える人だっているのです。そして、それはどんなサッカーをするかについて一番権限を持つ監督とその監督を指名した協会の責任と言えるのです。岡田監督自身、自分を名将だと思う気持ちはないのではないでしょうか? もう一度サッカー監督をやりたいという気もなさそうだし。


ザッケローニ監督の率いる日本代表も、前回と同じくかなり悪い状況で本番を迎えるわけです。岡田監督のように守りから入るという決断もできなさそうだし。それでもチームが一致団結することでグループ・リーグ突破ができるのでしょうか? 私は前回ほどの「幸運」は期待できないと思っているんですけど・・・・ もちろん、なにが起こるかわからないのもサッカーですけどね。


もう少し書きます。この本にはかなり問題と思える箇所があるのです。2ちゃんでネトウヨから罵倒されている金子達仁杉山茂樹のことを書いた箇所です。杉山さんの方はわざわざ間違った名前で書かれています。なぜでしょうね?


『わたしの手元には、このほかにも、今日こういうことがあるのを期して、「懲りない達仁&謝らない茂樹(=岩佐茂樹のこと)」などというブログや■NEWSセルジオ越後「岡田監督や選手に謝らないといけないね」などのニュースもプリントアウトして保存している。金子についての2ちゃんの書き込みはA4のコピー用紙で100枚以上に及び、なかでは悪口雑言のかぎりを尽くした書き込みが並んでいる。それをいちいち引用することはしないが、金子の書いた文章が、どれほど普通のサッカーファン、サポーターがたちを怒らせたかがよく分かる。』(P296)


結局、この著者は本書を成立させるために、岡田監督をスターとして祭り上げ、悪役として金子さん、杉山さんを利用したのでしょう。2ちゃんで差別的な罵詈雑言を繰り返している人たちが「普通のサッカーファン」なわけないでしょう! 読む価値のない本だと思います。(いや、逆かもしれないですね。金子達仁を叩くために岡田監督や南アフリカ大会を利用した。この人、なんなんだろ?)