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ジャニーズの教科書。第1章「トップグループ制」④

ドラマ『銭の戦争』最終回。メリーさんは電通に助けてもらい、ジュリーさんが社長になりました。そして、飯島さんは高い時給で働くからそれでいいという結末でした。そっかー あと、20億は視聴率20%のことでしょう。一旦、テレ朝に持って行ったけど、すぐにフジに返し、結局、国税に持って行かれる。本来はそのはずなんだけど、草磲剛が札束の匂いかぎながら「どうしよっかなー」って感じの映像がインサートされていました。


ドラマ『ウロボロス』で小栗旬が出演しているのは『花より男子』だと思うんですよ。だから、生田斗真松本潤なんでしょう。2人は死にました。これももちろん、トップ交代を示してるんです。死と再生。新たな王がもうすぐ生まれる。



◉ジャニーズの教科書。第1章「トップグループ制」
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150302/1425298187
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150309/1425863357
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150316/1426497971



SMAPの後を継ぐために組まれたグループ嵐
SMAPはデビュー以降17年にわたりジャニーズ事務所のトップに君臨し続けた。しかし、2008年になってついに出演番組の視聴率が下がり始めた。そして、その数年前から安定したCDセールスを記録し始めていた嵐とのトップ交代が実現する。ジャニーズ事務所は「国立」をその儀式の舞台にした。

 
実のところ、嵐は SMAPの後を継ぐために組まれたグループだった。トップ候補として、SMAPがいる位置まで登れる資質を持ったメンバーが集められているのだ。嵐が結成された1999年にはジャニーズJr.のブームがあった。ジャニーズJr.は本来デビュー前のタレントたちである。先輩グループのバックで踊るなどして、経験と知名度を上げて行く。しかし、このときは SMAPの大ブームや KinKi Kidsの人気で、ジャニーズJr.にアイドル的才能が集結した。その代表格はタッキーこと滝沢秀明である。滝沢を中心にジャニーズJr.は大ブームを起こし、1999年にはデビュー前でありながら東京ドームのライブまで成功させてしまう。


当然、この世代で最初にデビューするのは滝沢を中心にしたグループだと、ファンの誰もが考えた。しかし、1999年にデビューしたのは嵐の5人だった。このことは少なからず波紋を呼んだ。そして、当の滝沢のデビューは、2002年までお預けとなった。ブームを持続するには酷な3年であった。

 
すでに書いた通り、嵐はトップ候補として組まれたグループなのだ。そのときの人気の大小よりも、トップとして必要な資質があるメンバーが選ばれている。それは SMAPと同じように、デビュー後も努力し続ける真面目さと頭の良さを持つメンバーだった。しかし、デビューの時点で、このグループが SMAPの位置まで登ると予想した者はいなかっただろう。「滝沢デビューまでの前座」と書くメディアもあったくらいだ。
 

嵐の初期のシングルでは、ジャニーズのトップが受け継ぐ少年から大人への物語に加えて、英雄物語の構造も導入されていた。それは2001年に放映された木村拓哉主演ドラマ『HERO』を念頭に置いてのことだろう。平均視聴率34.3%という大人気ドラマだった。

 
英雄物語の構造とはどのようなものか? 評論家の大塚英志は、ユング派の精神分析家オットー・ランクが示した古今の英雄物語にある共通の構造を以下のようにまとめている。(『物語の体操』より)

 1.英雄は、高位の両親、一般には王の血筋に連なる息子である。
 2.彼の誕生には困難が伴う。
 3.予言によって、父親が子供の誕生を恐れる。
 4.子供は、箱、かごなどに入れられて川に捨てられる。
 5.子供は、動物とか身分のいやしい人々に救われる。彼は、牝の動物かいやしい女によって養われる。
 6.大人になって、子供は貴い血筋の両親を見出す。この再会の方法は、物語によってかなり異なる。
 7.子供は、生みの親に復讐する。
 8.子供は認知され、最高の栄誉を受ける。



私は嵐の4枚目のシングル『感謝カンゲキ雨嵐』の歌詞にある「泣きながら生まれて来た」という一行がどこから来たのか考えていた。ジャニーズJr. ブームの中でデビューした嵐に似つかわしくない歌詞だからだ。しかし、上のような英雄物語の構造が持ち込まれたとわかれば、それは理解しやすいものだった。2番の「彼の誕生には困難が伴う」だ。

 
SMAP は2枚目のシングル『正義の味方はあてにならない』(1991年)でヒーローの不在を歌った。それは80年代ジャニーズの王道がもはや通用しないという表明でもあった。それから9年後、SMAPのメンバー木村拓哉自身がヒーローであると宣言したのが、ドラマ『HERO』(2001年、フジテレビ)だった。その数ヶ月前には『らいおんハート』という王の歌も出されている。このことは SMAP編で詳しく語るが、木村はこのときから国民的スターになった。


 
嵐は SMAP木村拓哉が描いて来た英雄物語を引き継いだのだ。そのことは松本潤主演のドラマ『夏の恋は虹色に輝く』(2010年、フジ)でも描かれている。そこには国民的スターの息子として生まれ、悪戦苦闘する松本の姿があった。ライバルとして語られることも多い2つのグループだが、実のところ SMAP と 嵐は親子関係にあったのだ。それだけではない。実はグループ名からして「王」になることが宿命づけられていた。「嵐」という文字はトランプのキングを思わせる形であった。(つづく)