ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

アイドル・ブームは終わりますか?

今年の最初に以下のような文章を書きました。「道重さゆみ嗣永桃子菊地亜美というバラエティ番組で笑いを取れるアイドルのTOP3が、一斉に節目となるような発表をしたのが2014年だった」。これは何かのサインだと思うんです。本人たちにその意識があったかは別にして。それで2015年は嫌な年になるだろうと思ったわけです。


ハロプロのカウコンに行った。(2015年1月2日)
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150102/1420187776
『他にも、カントリー・ガールズの初ステージとか、モ娘。の新メンバーとか、スマイレージ改めアンジュルムの新メンバーとかも観れたんです。みんな堂々としたものでした。でも、私は新しく入って来る方より出て行く方について昨年考えてたんですよ。道重さゆみ嗣永桃子菊地亜美というバラエティ番組で笑いを取れるアイドルのTOP3が、一斉に節目となるような発表をしたのが2014年だったわけです。これだけ勘もいいし、反応もいい別格の3人が一緒に転機を迎えるわけです。普通じゃないですよ。たぶん、今年のアイドル界は昨年までとまったく違うものになるんですよ。どうなるかはわからないですけど。ももちはアイドルを継続することになったので、それは「希望」と言ってもいいのかもしれません。カントリー・ガールズ頑張って欲しいですね』



そのとき「資本力によって人気があるように見せているあのグループが、ついに崩壊するときが来るのではないか?」と考えました。となれば、自分たちだけでなく、アイドル・ブーム自体を壊しに来るだろうと予想したのです。他を巻き込んでの自爆。そんなことになったら最悪ですよね。このところの「アイドル=枕」と連想させるようなニュースの数々が、そういう仕掛けのせいなのかはわからないですけどね・・・ それに対して、純朴さを全面に押し出したカントリー・ガールズという路線は、こういう事態を予想したかのように、妙にハマってるんですよw


でも、悪い話ばかりでもないですよね? 南波一海さん選曲の『JAPAN IDOLE FILE 2』を聴けばわかるように、日本全国にレベルの高い楽曲を送り出すインディーズ・アイドルがたくさん存在しています。アイドル・ブームが終わったからといって、それらのグループがすべてなくなることもないでしょう。きょう出ていた下の記事に紹介されている楽曲だって、どれも素晴らしいです。



◉彼女たちはなぜ支持されるのか? 2015年注目すべき新星ライブアイドル6選(コダック川口)
http://kai-you.net/article/16719
『世はまさにアイドル群雄割拠の時代! 「名刺を作れば即アイドル」という歌詞もあるくらい、日々新しいアイドルが次々と生まれている……。もはや人類の歴史が始まって以来、「アイドル」という人種の絶対数が最も多いかもしれない今現在にあって、なおもステージに立ちキラキラと輝きを放っているライブアイドルたち。今回は2015年に活躍をみせてくれそうな、注目すべき新星ライブアイドルをご紹介しよう!』



ブームの終わり頃には、そのブームを牽引していた人たちの罵り合いが多く行われます。まあ、お金に群がってきた人たちが、当事者たちをそそのかしたりするのかも知れません。下のももクロ関係の記事も、かなり酷い内容です。まあ、サイゾー系サイトの記事なので仕方がないですけど。「川上氏の“プロデュース”は結局つんく♂や秋元の二番煎じでしかなく、ここまでのグループに成長したのはメンバーの資質と出会いによるものに過ぎない──」などと書かれています。


ももクロ川上マネージャーとヒャダイン確執の真相 ももクロの本当の仕掛人は誰?(大方草)
http://lite-ra.com/2015/05/post-1096.html
『もちろん、川上氏とメンバーの信頼関係が厚いことは疑いようもない事実ではある。川上氏がいなければ、今日までももクロは長続きしなかったかもしれない。だが、かといって“仕掛け人”と呼べるほどの実力が川上氏にあるのかは、大いに疑問だ。たとえば、ももクロの魅力のひとつとしてよく語られることに、川上氏によるメンバーへのむちゃぶりや唐突なサプライズ演出がある。これは川上氏のプロレス的発想がもとにあるといわれ、本人も「(むちゃぶりを行うのは)対応力の高いタレントになってほしいからなんです」(前出『ももクロ流』)と述べている。が、そもそもこうした演出は、『ASAYAN』(テレビ東京系)でモーニング娘。がすでに実践していた手法。ももクロよりデビューの早いAKB48もこの方法を取り入れ、カフェでバイトしていた篠田麻里子をメンバーに抜擢するといったサプライズを初期から行っている。ももクロが最初にはじめたことでもなければ、物珍しい話でもない。また、結成当初に使われていた「いま、会えるアイドル」というキャッチフレーズも、川上氏本人も認めているようにAKBの「会いに行けるアイドル」からの影響。ライブ前に「OVERTURE」を流すのも同様だ』


先日、文字起こしをした『ニコニコ超会議』の場で、宇野常寛さんら出演者は、AKBはオリコンをハックしたと語られました。それはそうなのでしょう。でも、さらにその上から AKBをハッキングしたのが ももクロだったわけです。資本力で勝る AKB にカウンターをあてることで、ジャイアント・キリングを起こしました。それでなければ、あのスピードで横国、国立でのライブは不可能ですよ。


ニコニコ超会議2015『超アイドル討論〜アイドル戦国時代の覇者は?〜』文字起こし。後半
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150510/1431247440
『宇野:俺、明確に言うけど、AKB以降、マジにオリコンはオワコンだよ。誰でもハックできるようなぬるいもんになった。』


川上マネージャーは最高の選手に育て上げた5人を使って、見事にそれをやってのけたわけです。ちょっとぐらい自慢したっていいでしょう。ももクロは間違いなく芸能史に残る奇跡のグループですから。もちろん、前山田健一さんをはじめとして、いろんな才能が集結したプロジェクトだというのはそうでしょうけど。そんなことは誰もがわかってることです。もう一度、大方草さんの文章を引用。これまた酷い。


ももクロの革新性とは何だったのかといえば、ももクロのいちばんの魅力として挙げられる“全力性”だろう。豪快に全力で踊り、下手でも必死に歌う。そうした、これまでのアイドルらしからぬ姿があったから、女性ファンの獲得や箱押し率の高さを誇ることができたはずだ。しかし、これもまた川上氏の手腕によるものではない。ももクロの全力性は、ヒャダインが作詞・曲・編曲を手がけた「行くぜっ!怪盗少女」が引き出したものだからだ』


サッカー日本代表では、まだ何もしたわけではないハリルホジッチ監督を持ち上げるのはよくないという文章も見られます。でも、既にハリル監督は大きな仕事を一つされているんです。これまで才能については誰よりも評価されながらも運動量が足りないと言われてきた宇佐美選手を、走る選手に変えたことです。サッカーでは走らせることが出来る監督は間違いなく評価されます。それは手腕なのです。アイドルのプロデューサーだってそうでしょう? 全力を出させるプロデューサーは間違いなく評価されるはずです。ただでさえしんどい楽曲で全力を出せと命じるのですから。



そして、作詞・作曲・編曲、前山田健一の『行くぜっ!怪盗少女』は間違いなくアイドル史に残る名曲でしょう。しかし、それも前山田さん一人の力によるものではないと私は推測しています。それはその曲の発売が「アイドル戦国時代」が仕掛けられた時期に重なるからです。


◉アイドル戦国時代はなぜ終わったのか?
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20140314/1394738981
2010年4月 アミューズさくら学院が開校
2010年5月 エイベックスの東京女子流『キラリ☆』でデビュー
2010年5月 スターダストのももいろクローバー『行くぜっ! 怪盗少女』でメジャーデビュー
2010年5月 ハロプロスマイレージ夢見る15歳』でメジャーデビュー
2010年5月 NHKMUSIC JAPAN』でアイドル特集。これ以降「アイドル戦国時代」という言葉が一人歩き?


電通が「アイドル戦国時代」を仕掛けたとき、いろんなレコード会社や芸能事務所を集めて、アイドル楽曲の勉強会が行われたと推測できるのです。ももクロにはそれ以前から「週末ヒロイン』という優れたキャッチフレーズがありました。でも、楽曲には活かしきれていなかった。しかし、過去のアイドルを勉強すれば、参照すべき教科書はすでに存在したのです。


80年代ジャニーズの光GENJIでは、恐らく評論家の大塚英志によって「夢の中ならどこにでも行ける、何にでもなれる」という設定が最初の3部作で与えられていました。まあ、その話は『ジャニーズの教科書』で読んでください。前山田健一さんにはそのことを踏まえて、ももクロの変身をテーマにした楽曲が依頼されたと私は推測しています。実際に、川上さん、前山田さんがどのように話しているかは別にしてですけどね。


◉ジャニーズの教科書。第2章「硝子の少年」⑤
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150504/1430728854



ちなみに、スマイレージ『夢みる15歳』は山口百恵ですよね。デビュー時のキャッチフレーズ「ひとにめざめる14才」と、性愛路線。アイドル史の授業では天才プロデューサー酒井政利が生み出した手法「私小説路線」についても紹介されたことでしょう。それは歌い手の成長にあわせて歌詞に登場する人物も成長して行く手法でした。東京女子流『キラリ☆』にも「物語はここから始まる」とあり、少女たちの成長が描かれることを示しています。



そして、ももクロの川上マネージャーが影響を受けたと思われる書籍が阿久悠『夢を食った男たち』です。阿久悠フィンガー5ピンクレディーなどのミリオン・ヒットで知られる作詞家で、現在のアイドルにも大きな影響を与えています。この本の90ページに「マネージャーの執念」という項目があります。そこには「かつては、一人のスターが誕生し、また、一つのヒット曲が世に出ると、必ず目に浮かぶ人間の顔があった」と書かれているのです。川上マネージャーがももクロメンバーに、路上パフォーマンスをやらせたり、他流試合でトークを鍛えたりしたのは、現代に輝くスターをつくるために必要なことだったのです。


空気を読むのがうまい人は、すでに以下のような発言をしてます。アイドル戦国時代の反動としての「自然体」だそうです。「戦わない」をキーワードにしているようです。こういうときだけ「ももクロ以降のアイドルブーム」なんて言葉を使うなんて、柴那典、いやらしい奴だなw 


◉1995年の小室哲哉、2005年の中田ヤスタカ、2015年のtofubeats大谷ノブ彦、柴那典)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150514-00000892-cakes-cul
『柴 で、これは仮説なんですけど、僕はこれ、ももクロ以降のアイドルブームからの反動でもあると思うんですね。
 というのも、「アイドル戦国時代」という言葉もあったように、今のアイドルの女の子たちは、みんな戦っている。ステージの上ではいつも全力。
 大谷 ああ、わかるわかる。アイドルの子たちはそうですよね。
 柴 みんな真っ向勝負ですよね。大声を張り上げて自己紹介するし、力いっぱい歌って踊る。もちろんそこに憧れる女の子もたくさんいるんですけれど、逆に「いや、もっと自然体でいたいよね」っていう思う子も絶対いるはずで。僕は今、そういう揺り戻しが起こっている気がするんです。
 大谷 なるほどねえ。でもそこは勘違いしちゃダメなところもあると思うな。(後略)』