ハノイの日本人

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渋谷系とデータベース消費2

「データベース消費」という概念を使って「渋谷系」について考えます。東浩紀動物化するポストモダン』(2001、講談社)に「データベース消費」がまとめられて以降、既にいろんな方々がいろんな分野で議論されているようです。でも、それを追い出すと溺れてしまいそうなので、そっちは後回しにします。ゼロ年代批評というのもそうみたい。きょうは東さんの『動物化するポストモダン2』を使って「オタクはポストモダン的な文化集団である」について勉強します。前回のは以下のリンク先にあります。



渋谷系とデータベース消費1
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20160618/1466189435
東浩紀さんの「データベース消費」という言葉を使えば、「渋谷系」を説明できるんじゃないか? そんなことを思いつきました。(中略)つまり、渋谷系においては、リリースされた曲を聴いた時に、その元ネタがわからなかったとしても、背後にあるレコード群の存在を感じながら聴いていたことになります。なので、それらの音楽には、世界最大のレコード市場があったと言われる「渋谷」の名が冠せられたのでしょう。渋谷に存在した膨大なレコードのイメージこそがデータベースだったわけです』



まず「ポストモダン」と「ポストモダン化」について解説された文章を読んでください。これ非常に重要です。少し長いですけど、すべて引用しておきます。ここを押さえておこないと後々おかしなことになるので、しっかり理解しておきたいポイントです。


ポストモダン化は、社会の構成員が共有する価値観やイデオロギー、すなわち「大きな物語」の衰退で特徴づけられる。十八世紀の末から一九七〇年代まで続く「近代」においては、社会の秩序は、大きな物語の共有、具体的には規範意識や伝統の共有で確保されていた。ひとことで言えば、きちんとした大人、きちんとした家庭、きちんとした人生設計のモデルが有効に機能し、社会はそれを中心に回っていた。しかし、一九七〇年代以降の「ポストモダン」においては、個人の自己決定や生活様式の多様性が肯定され、大きな物語の共有をむしろ抑圧と感じる、別の感性が支配的となる。そして日本でも、一九九〇年代の後半からその流れが明確となった。(『ゲーム的リアリズムの誕生』P18)


会社のイメージが「終身雇用」から「社畜」に変わったのもそうですよね。あと、前に『ジャニーズの教科書』を書いたときに、SMAP編でシングル『はだかの王様』(1996)から『らいおんハート』(2000)までで立派な大人への成長モデルが提示されていると書きました。「大きな物語の衰退」によって、どんな大人になればいいかわからなくなった時代に、SMAPを使って成長モデルを提示しようとした人がいたわけです。繋がった!


◉ジャニーズの教科書。まとめ
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150921/1442805451


大きな物語の衰退」と言うが、日本ではナショナリズムや伝統の復活を願う声は高まっているし、映画、小説など、緻密な設定と重厚な世界観をもつ長大な物語はいまも求められ続けている。また、インターネット上には世界中の人々が投稿した無数の大きな物語が氾濫しているんじゃないか?


ポストモダン論が提起する「大きな物語の衰退」は、物語そのものの消滅を論じる議論ではなく、社会全体に対する特定の物語の共有化圧力の低下、すなわち、「その内容がなにであれ、とにかく特定の物語をみなで共有すべきである」というメタ物語的な合意の消滅を指摘する議論だったからである。
 ポストモダンにおいても、近代においてと同じく、無数の「大きな」物語が作られ、流通し、消費されている。そして、それを信じるのは個人の自由である。しかし、ポストモダン相対主義的で多文化主義的な倫理のもとでは、かりにある「大きな」物語を信じたとしても、それをほかのひとも信じるべきだと考えることはできない。』(『ゲーム的リアリズムの誕生』P19)


マーケティングって言葉が力を持ち出したのも、そうやってバラバラになった消費者を束にする必要からなんでしょうね。「あなたはこんなに不潔ですよー」って脅して来るCMとかね。しかし、このポストモダンについての文章を読んでいると、現在の音楽状況の説明にもなっている気がしますよね? 昔だったら、ビートルズストーンズから入って、みたいなことはあったと思うんですけど、現在は洋楽を聴かずに売れ子になっているミュージシャンも多いですからね? 教典がなんであるかは人それぞれって感じです。




HIPHOP渋谷系ポストモダンの音楽であることがわかります。そう言えば、小沢健二渋谷系当時、体系的に音楽を聴いていないと発言していた記憶があります。次回は「オタクたちに好まれるライトノベルとはどのようなものか?」です。