地元の本屋でも買わないと。たまにそう思って本屋に行きます。クリストファー・ノーラン特集の『映画秘宝』と「日本音楽の新世代2020」という特集が組まれた『ミュージック・マガジン』を買いました。マガジン・・・。もちろん、自分が知らないミュージシャンを知ることが出来て参考になる部分もあります。でも相変わらずアイドルに関しては酷い。ここにある断絶について書こうと思います。
『ミュージック・マガジン』では アイドルについて、宗像明将という人が主に書いています。twitter では「宗像セルアウト明将」を名乗る人物です。今回の特集では長谷川白紙のインタビューを筆頭に、岡村詩野×松永良平の対談、そして、11のジャンルを設定して、そのシーンを紹介しています。アイドルについての宗像の文章の冒頭。
本誌で紹介されているようなアイドルは、どうしても中高年の音楽ファンも愛好しそうなサウンドのものが多い。いわゆる “楽曲派” だが、シーンの全般がそうした流れにあるかと言えば、そうは問屋が卸さない。中年楽曲派は根強いマーケットではあるが、メインストリームではないことを指摘しつつ、ここではシーンの動きを紹介していきたい。
では宗像が言う「メインストリーム」とは何か?
とはいえ、現在において巨大な大陸として広がっているのは、乃木坂46、欅坂46、日向坂46といった“坂道シリーズ”であり、彼女たちこそがメインストリームであることは疑いようがない。
これアイドルだけの話じゃないよね? 日本の音楽の「メインストリーム」が “坂道シリーズ”ってことにならない? 秋元のグループと、ジャニーズ、アイマスあたりがメインストリーム。そうなのであれば『ミュージック・マガジン』はもう必要ないでしょう。地上波テレビ観てたらいい。
名前は書きませんが、ここで宗像がリストに上げるアイドルについて、悪く言うつもりはありません。好きなのもあります。しかし、リストアップの基準はかなり残念なものです。「新世代」というテーマ設定を素直に「若さ」だと解釈した文章が書かれています。タイトルは「メンバーもプロデューサーもファンも若いアイドル」です。新しい「潮流」ではなく単に「年齢」ですね。
要は、メンバーもプロデューサーもファンも若い。そんなシーンが広がっているのが近年の特徴だ。そうした現場に集う若者は“ピンチケ”と蔑まれがちであり、中年サブカル楽曲派と“ピンチケユースカルチャー”シーンには距離があるが、現場の熱気で言えば後者に軍配が上がる。
「ピンチケ」ですか。懐かしい響きですよね。今でもそんな対立があるんですか? ハロプロだと男女比で半々くらい。若い女子ファンの方が多いこともあります。この前の福岡もそうだった。Maison book girl の渋公も若い女性ファンは多かったです。宗像が言う「現場の熱気」ってなんでしょうか? メンバーに対する声援みたいなこと? 確かにそれだと楽曲はシンプルな方がいいでしょう。ちっとも新しくないけど。
これは冒頭にも書いた「断絶」と繋がるんです。例えば 1970年代後半、ロックを聴く洋楽ファンの間でも、パンクがわかるリスナーとそうでないリスナーの間に断絶があったと思うんです。さらに80年代後半からはパンクをわかる人でもラップやクラブミュージックがわからない人が出始めた。このラップがわかる人とわからない人との断絶は、音楽雑誌が取り上げる内容に大きく影響します。もちろん、『ミュージック・マガジン』にも二木信さんのようにずっとラップを紹介し続けている専門家がいます。でもアイドルライターで言うと、ラップを通過してない人が多いんです。現在の音楽シーンについて行けてない。なぜアイドルだったら許されると思っているのか?
現在の欧米のチャートでは、ラップやラップに影響を受けたヒット曲が90%以上になっています。メロディーよりもリズムやサウンドの質感が重要です。アイドルというジャンルが欧米のヒット曲に影響を受けてきたことは間違いありません。過去のアイドル楽曲をベースにした曲も多いですが、欧米の流れを5年、10年かけてキャッチアップするスタイルは続くはず。即キャッチアップする K-POP との差ですね。もちろん、この流れに全てのアイドルが合流する必要はありません。わかるかどうかは重要って話です。
今年のアイドルシーンで、重要な出来事は1月5日に渋公で行われた Maison book girl のライブでしょう。映像とリンクさせたステージは会場にいた者を圧倒しました。Perfume のフォロワーなのか。それとも新しい流れを作るのか。注目すべき出来事でしょう。なぜこれを応援できないのか? サクライケンタは『ミュージック・マガジン』に嫌われているのか? 広告出すのを断ったとか? 音楽批評誌が生きてるなら取り上げてほしいですね。最後にいくつかオススメ曲を紹介しておきます。