ハノイの日本人

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ジャニ友2月 松本隆。 中編

作詞家・松本隆さんのサイト『風街茶房』に『スワンソング』の解説が掲載されました。冒頭に『普段は歌手にさえ詞の説明をしない松本隆が、自ら「スワンソング」を解き明かす』と書かれてあるように、異例の出来事です。前回につづき「ジャニ友 2月中編」では、いよいよその内容について語ります。


◉季節の松本 第16回 KinKi Kids 新曲『スワンソング
http://www.kazemachi.com/cafe05/kisetsu/kisetsu_main_016.htm



——まず、Oさんは松本隆さんの『スワンソング』解説を読んで、「キンキへのはなむけ」という感想を持たれたということでした。でも、『スワンソング』を聴いて「はなむけ」という感想は持ちづらくないですか?
Oさん:確かに『スワンソング』そのものや、歌詞からは、「はなむけ」というのは全く出てきませんでした。でも松本隆さんの解説を読んだ後に、少年(青年)だったキンキへの新しい旅立ちのメッセージを読み取りました。Aさんは何を感じましたか?


——私が一番重要だと思ったことはこれです。今回の作詞依頼を受けたとき、ジャニーズサイドから注文があったと。そして、その注文が(はっきりとは書かれていませんが)「“硝子の少年”テーマでもう一度書いて欲しい」だったことです! これはキツい! 
Oさん:キツイ!というのは、『硝子の少年』が傑作だったから? それともキンキのデビューから時間が経ってしまって、年齢やキンキを取り巻く環境など様々なことを考えると、当時と同じテーマでは難しいということですか?



——『聖子さんに歌詞を書いてたとき(主に1981年〜1988年頃)には、「ファンと歌い手のイメージが同時に歳をとれば、ファンは永遠に離れない」っていう方程式でやっていて、それが成功したんだ。』という発言があったでしょう? 松本さんは松田聖子で使った方法をキンキでも採用していたんです。つまり、キンキの成長にあわせて歌詞を書いて来たんです。なのに、もう一度「硝子の少年」をテーマで書かなければならなかった。そのあたりについては「ジャニコノ36」で書きました。


◉ジャニコノ36. KinKi Kids薄荷キャンディー
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20100220/1266691255
松本隆さんは、自らが生みの親である「硝子の少年」にまっとうな「成長」という物語をやり直しさせたんだと思います。KinKi Kids の97年のデビューから、その物語は10年以上続いていたはずです。しかし、終わりは突然やってきました。「スワンソング」で物語はいきなりのエンディングを迎えたのです。どうしてか? 謎は深まるばかりです』


Oさん:Aさんのジャニコノ36.がブログに掲載される、すぐ直前に、自宅で『B Album』を発見し、久々に手に取ったのでした。何か妙なタイミングだと「ジャニコノ36」を見て不思議な感覚になりましたよ。と、余談はさておき、成長したキンキにもう一度『硝子の少年』に戻れというのは、確かにキツイ。よく取れば、ジャニーズは原点回帰という意味で依頼したのかもしれない・・・


——そうですね。その戦略の確かさについては、最後に言おうと思います。
とにかく松本さんは『硝子の少年』で「少年時代」を終わらせ、大人への成長を描かれてきました。ですから、ジャニーズサイドから「もう一度」と言われても、普通なら「無理です」と言いたいところです。しかし、松本隆さんとジャニーズ&キンキの絆は深いものだったんでしょう。松本さんはその難題を見事クリアしてみせたわけです。それが『スワンソング』です。せっかく松本隆さんがこれだけの内容を明かしてくれたんです。出来るかぎり隅々までシャブリつくしたいw 項目ごとに語って行きましょう!


◉季節の松本 第16回 KinKi Kids 新曲『スワンソング
1. 松本隆KinKi Kids
2. 「硝子の少年」はデビュー曲候補の最後に作った
3. KinKi Kids の壊れやすい美しさ
4. 「スワンソング」に課せられた3つの課題
5. アンナ・パヴロワの「瀕死の白鳥」
6. 松本隆による「スワンソング」解説!
7. 「金色夜叉」で何が悪い?
8. “遠距離恋愛”はミスリード
9. スワンソングに込められた真意


——では、1番目「松本隆KinKi Kids」から。ここではデビュー曲『硝子の少年』を母娘で買ってくれたという話がでてきますね。それが200万枚を軽く突破の大ヒットに繋がったという。世代で言うと私たちも“たのきん”をリアルタイムで聴いて来た世代です。
Oさん:まさに私は“たのきん”の“た”からジャニーズファンになりましたからw それまでは10代、まあせいぜい20代前半の女性しかジャニーズは聞いていなかったと思うのですが、『硝子の少年』は本当に母娘揃って聞かれた作品ですよね。 『硝子の少年』ヒット当時の私は20代後半で、15歳上だった上司(女性)と接待の際にも、カラオケの最初は『硝子の少年』を振り付きで歌いました。オヤジ受けもよく、松本さんが「僕のタッチが懐かしかったんだろうね。」と話していますが、その通りです。


——まあ「 SMAP も同じように売れるようになったよね」というのは言い過ぎでしょうけどねw 
2番目『「硝子の少年」はデビュー曲候補の最後に作った』では、山下達郎のディレクターだった小杉理宇造さんの話がでてきました。以前、私が「ジャニーズのキーマン」と書いた方です。『もう君以外愛せない』の作詞をした周水のお父さんであり、馬飼野康二さんとGS バンドを組んでいた方でもあります。その小杉さんの依頼を受けて『硝子の少年』を制作した過程が語られています。
Oさん:はい。ジャニーズの王道を行こうと。Aさんの好きな(私もです!)『Kissからはじまるミステリー』がデビュー曲になるかもしれなかったところ、小杉さんのこだわりで『硝子の少年』までたどり着いた。小杉さんについてはAさんのほうが私より断然詳しいと思うのですが、この辺り読んで、どう思いましたか?


◉ジャニコノ2. KinKi Kids愛されるより 愛したい
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20090824/1251141932
『前回、大作詞家・松本隆光GENJI の作家陣に「硝子の少年」というシンボルを殺された話を書きました。そのリベンジを果たしたのが KinKi Kids のデビュー曲『硝子の少年』でした。実は、この『愛されるより 愛したい』も SMAP のデビュー曲で惨敗した2人のリベンジ・ソングだったのです。キンキのデビューに際して、この2曲は同時に発注されていたと思います。おそらく、『硝子の少年』と『愛されるよりも 愛したい』のどちらをデビュー曲にするか? ジャニーズとしても迷いがあったのではないでしょうか? 結果的にはあの順番で大正解だったわけですが、私としては違和感のある順番なんですよね。なぜなら、前回も書いた通り、「硝子の少年」は松本隆によって殺されてしまっているのです。それなのに、『愛されるより 愛したい』には「硝子の少年」が登場しているからです』


——デビュー曲については「ジャニコノ2」で語っています。『愛されるよりも 愛したい』の方がデビュー曲であるべきだと語っているんです。興味がある人は読んでみてください。でも、松本さんのインタビューは凄いですね。この項目はつまり「ジャニーズの王道を作ったのは小杉さんと俺だ」と言ってるわけですよねw 『スニーカーぶる〜す』も松本さんの作品ですしね。もちろん、私もそう思ってますけど!
さらに、「マッチは今でもドームをいっぱいにできるけど、僕が歌詞を書いた人はそうやって時代を超えて残ってるし、僕の自負としてある。少年隊もそうだし、KinKi Kids も残るだろうね。歌詞にはそれだけの力があるんだ」という発言されています。これはもう頭を下げるしかないですね。本当に偉大な作詞家だと思います。
Oさん:わざと時代にそぐわなくなった言葉を使って、普遍性につなげているという発言も、その前にありました。点を狙うのではなく、線でつなげるとも言えるのかな。歌い手が残れば、歌詞も残る。歌詞が素晴らしい作品だから、歌い手も残る・・・というほうが正しいでしょうか。


——これは「キンキ解散」を否定したと解釈してもいいんでしょう?
Oさん:この文章を読むとそうですよね。少なくとも解散「させられる」アーティストではないということ。


——次は3番目『 KinKi Kids の壊れやすい美しさ』です。
Oさん:松本さんはキンキをアイドルではなく、アーティストだと言っています。それとデビュー時から、“壊れやすい美しさ”が魅力で、その本質は今でも変わらないと思っているようです。そう言われれば、光一からは見かけで“壊れやすい美しさ”を感じ、剛からは心の面で“壊れやすい美しさ”を感じます。


——最近『 KinKi you コンサート。』のDVD を見たんです。2008年のライブDVD です。4枚組ですw 東京ドームの2日目がよかった! ヒット曲満載。それはあたり前としても、バンドサウンドを主体としたアレンジが素晴らしかった。音楽性高い! セットもかっこよかった! 本当にキンキは素晴らしいスタッフに支えられていると思いました。「軽々しく解散とか言うな!」って感じです(すみません)。そうそう『たよりにしてまっせ』をノリノリで踊ってました。爆笑ですw
Oさん:実は本格的にバンドサウンドになってからのキンキのコンサートは行ってないし、見ていない。ギター始めた初期の頃、まだバンドかぶれだった二人が見ていられず遠ざかってしまいました。でも素晴らしい内容になっているんですね。これは見ないと損ですね。ノリノリな『たよりにしてまっせ』も聞きたいしw ジャニーズのいいところは昔のちょっと「痛め」な曲もしっかりと残してやってくれるところですね。女性アイドルなら封印です。



——そして、問題の4番目『「スワンソング」に課せられた3つの課題』です。最初に書いたように、ジャニーズサイドから『硝子の少年』もう一度書いてくれと言われて、それをやる以上は自分を納得させるためにあえて高いハードルを設定した。そして、そのせいで苦しんだということみたいです。
Oさん:松本さん自身が決めた3つの課題、ジャニーズの王道、“壊れやすい美しさ”、そして直接的描写はしない。これ何度読んでも、解釈が難しいんですけど・・・


——自分の設定した課題が難し過ぎて、松本さん自身が「瀕死の白鳥」のようにもだえていたという話ではないでしょうかw 私が気になったのはここ。『雑誌とかメディアを見てると、みんな「遠距離恋愛」がテーマだと思っているみたいだね。でも実はそれは全然関係なくて、遠距離でも近距離でも別にいいんだ。僕が自分に課した課題があるんだけど、まず描きたかったのは「瀕死の白鳥」なんだ』と語られています。恐らく、これが今回異例の歌詞解説をすることにした理由と考えていいと思うんですけど、この歌詞については、8番目で詳しくでてくるので先を急ぎます。



——5番目『アンナ・パヴロワの「瀕死の白鳥」』。私はバレエはほとんど見ていません。かろうじて山岸凉子先生のマンガ『アラベスク』を読んでるくらい。このマンガの主人公がノンナというんです。おそらくは「アンナ・パヴロワ」から取られているんでしょう。「瀕死の白鳥」のこともこのマンガで知った気がします。
Oさん:そうですか。実は私は幼少時〜中学生までバレエを習っていました。といっても、「瀕死の白鳥」を踊れるような実力もなかったし、通っていた教室の発表会プログラムでも、子供もいるような発表会では、「瀕死〜」は重厚すぎるからか、小品集としても一度も登場しませんでした。「白鳥の湖」は何度か舞台を見ていますが、「瀕死の白鳥」はストーリーのみですので、多くは語れません。ただ繊細さが要求されることは当然ですよね。そこから見い出された“壊れそうな美しさ”はわかるのですが、それをキンキに歌わせるというのは・・・ あと「最後の作品」という意味もあると言っていますね。


——そうなんです。謎は深まるばかりです。つづく。