ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

北京在住 青木さんのインタビュー。後編

北京在住の 青木裕一郎さん( DJ QingMu )インタビューのつづきです。前回は神戸からハノイまで旅してこられたときの話を聞きました。今回は旅の後半について聞いています。そして、青木さんがなぜ中国に惹かれるのかを語ってくれています。


◉北京在住 青木さんのインタビュー。前編
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20100820/1282330277

◉北京在住 青木さんのインタビュー。中編
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20100827/1282918047


——では、旅の後半のスケジュールです。

8月1日(日) ラオカイに戻って、中国側の国境 河口経由で雲南省昆明
8月2日(月) 朝に昆明着、そのままバスで大理へ。ほぼ移動
8月3日(火) 大理にて北京での友人と再会する。麻用品の買い物、マッサージ
8月4日(水) 高地3300mのシャングリラに行くが、高地過ぎで頭痛。一泊
8月5日(木) 買い物してから世界遺産都市の麗江へ。
8月6日(金) 麗江郊外の束河で一泊、布や鐘など買い物
8月7日(土) 夜にバスにて昆明に戻る
8月8日(日) 電車にて昆明から北京へ出発
8月9日(月) 移動
8月10日(火) お昼に北京に戻る


——ラオカイから河口という国境越えが、一番利用されることが多いルートですよね?
青木:そうです。ベトナムから雲南省に抜けるにはラオカイを通るしか方法はありません。ラオカイ駅から北に向かえばすぐ国境線だったので、河口まで歩いて国境を越えました。お金もかかっていません。



——いいですね。歩いて国境越え。
青木:サパの宿で河口から昆明行きのバスを予約していましたので、河口到着後は少し時間をつぶしてから昆明に向かいました。確か150元(2250円)ぐらい12時間ぐらいの寝台バスでした。


——昆明から大理へ。
青木:昆明に到着後、身体はしっかりとしたベッドでの睡眠を望んでいましたけど、時間の関係で昆明には滞在せずにそのまま大理に向かいました。バスで110元(1650円)で7時間ぐらいで着きました。


——大理はどんな街なんでしょう?
青木:大理は大理石の発祥地です。また藍染め布や麻織物も有名です。自然が豊かで水も綺麗で、野菜がとってもおいしいです。



——大理石、そうなんですか! 私、大学時代は地学科だったんですけど、初めて知りました。行ってみたいな。
青木:そうだったんですか! 地学科でしたら大理からバスでシャングリラに抜けるルートは絶景なのでとってもおすすめです。


——まあ、それほどマジメに勉強してたわけではないですけどねw
青木:大理古城市内は古い町並みに欧米的カフェなどが交じり合い、中国風ヒッピー文化が出来上がっています。おかげさまで今回はゆっくり身体を休ませることができました。


[,right]


——大理からシャングリラへ。シャングリラというと「理想郷」ですか?
青木:シャングリラはもともと中甸(ZhongDian)と呼ばれていました。欧米人が中甸での旅行記などで中甸をシャングリラのように綺麗だと表現したことから、中国政府がシャングリラ県と改名したそうですw


——大胆ですねw
青木:今では香格里拉(Xinag Ge Li La)と外来英語の当て字で表記されているのです。現地チベット人が7割ぐらいで残り3割の漢族は後から仕事を求めてやってきたそうです。チベット人でも漢族にしても高地にも耐えられるようなしっかりした身体つきをしていました。毎日肉をしっかり食べて、水を沢山飲まなければこの地で生活することは出来ないのが一目で感じました。


——かなりの高さですね。富士山の頂上が3776m ですからね。
青木:実際に行ってきましたが、一日で身体に強く圧迫受けているように感じ頭痛がしました。天候を良かったので古城をぐるっとまわりました。ヤクの毛で作られたスカーフや布、ラマ教の青銅鐘などを買って麗江に向かいました。



麗江ってどんなところ?
http://www.htia.org/j/reikou/what.html


——昆明から北京へ。鉄道ですよね?
青木:大体40時間の寝台チケットで520元(7800円)ぐらいしました。北京行きチケットの前日購入はほぼ困難ですので、河口から昆明に入ったときに予め購入しておきました。北京に戻る電車の中で、1時間ぐらい僕たちの乗っていた車両だけクーラーが止まり、車内の雰囲気が悪くなりました。その後クーラーは回復しましたが、他の車両は正常通りだったことを知った乗客の北京人(40代女性)が1時間分のクーラー代を返せと鉄道員に噛み付きました。



——そういうのを見たときに「ああ、外国にいるんだな」と実感しますよねw
青木:最初はクレーマーだなと思って話を聞いていたのですが、「そもそもチケットとはサービス料も含みのものだ」ともっともな主張しながら、どんどん車両内の乗客の心を掴んでいきました。「同志達!!こんなことで中国はいいのか?」と愛国的な熱いスピーチも飛び出て最終的には乗客から拍手喝采を得ます。鉄道側(昆明人)のトップもただ日本のようにすぐに頭を下げて謝るのではなく、おばちゃんの話に真摯に耳を傾け気の利いたジョークなどで場を和ませていきます。他の乗客からの横やりにも機敏に反応しつつ、時に笑いが起こる。深夜まで続いた交渉は、まさに即興演劇を見ているようで見物でした。


——退屈な時間の過ごし方をみんなが知ってるって気もしますね。
青木:結局おばちゃんの要求は通らなかったものの、おばちゃんの熱い気持ちに乗客が賛同し、車内一丸となった「祭り」は良い意味でカオス化しました。これはアジアカップのときの反日運動にも通じるものがあるように思います。


——えっ? 単に祭り好きってことですか? 
青木:ただ単に祭り好きってこともあると思いますが、宮台真司の言葉を借りるなら、いつでも「祭り」を起こせる共通前提が分厚く存在していることだと思います。


——なるほどー。
青木:日本の場合、すでに共通前提がバラバラになってしまっているのでワールドカップやオリンピックといった国際イベントを機会と捉えて、パブリックビューイングの前でフェイスペインティングをして、非現実な「祭り」に参加することで知らない人との繋がりを求める部分があると思います。


——まあ、日常で一体感を感じることはなくなってるかもね。
青木:しかし中国の場合、何らかのきっかけで引き金が引かれると、いつでも「祭り(一丸となる)」になります。常に繋がっているから準備万端だとw ノってきたので、もう一つ中国人論をお話してもいいですか?w


——どうぞ。
青木:中国人は市場価格100元のモノを100元で売ることに何のおもしろ味も感じません。売り手が300元売ると吹っかけてきても、買い手は笑って50元から交渉するのです。人を見て値段を動かしていきます。本当に欲しいなら300元でも買いますから。むしろその交渉自体を楽しみながらお互いの人間性を価格に転換していくのが中国です。


——たしかに、そういった余裕はベトナム人にも感じられますね。ただ、ほとんどの日本人からしたら、ストレスに感じることでしょう?
青木:今回日本で路上販売したときに中国人を真似て実践してみました。敢えて値段を決めて置かずに、お客さんに価値を決めてもらおうと。けどやはり、日本ではうまくいかずにすぐに値段を固定にしました。


——なんか試されてる気になるんですよね。
青木:僕が中国語を勉強しようと思ったきっかけは、中国人同士のやりとりに対する好奇心からでした。喧嘩口調で話してると思ったら、急に屈託のない笑顔になったりします。言葉自体が持っているリズムや音階に幅があるので、歌いながらコミュニケーションし、喜怒哀楽を出しているように見えたのです。


——そうですね。ハノイの人たちもそうです。知らない人の前でも屈託なく笑い、歌います。
青木:そもそも僕が wakita-Aさんのブログを発見したきっかけでもある MCバトル はまさにこれなんですね。


——えっ、どういうことですか?
青木:wakita-Aさんは UMB2008 のチャンピオン 般若 について記事を書いているのを発見してからブログをフォローするようになったんです。


◉孤高のラッパー般若のインタビュー。
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20090329/1238303967


青木:般若 の MCバトル を見てもらえれば分かるように、自分自身を対戦相手にぶつけながら歌い、笑って、怒ります。中国人同士のかけあいと本質は同じように思えました。


——般若 は かなり特別な存在ですからね。でも、わかる気がします。私たちが好きな HIPHOP は感情表現が大きいな要素となっている表現活動ですよね。実は私がサッカーを好きになったのも、感情表現が極端なサポーターという存在に興味を持ったからなんです。
鹿島アントラーズ の サポーターのリーダーだった河津さんに最初にあったとき(1996年だったかな)、「我を忘れるにはどうしたらいいですか?」と質問しました。河津さんは困惑しながらも「チームの勝利と仲間と酒があればいい」と言われました。それは当時の私が求めた答えではなかったですけど、今ならなんとなくわかります。日本ではなかなか自分を開放するのは難しいですけど、好きなものにとことんハマれば それは可能なんですよ。さて、そろそろ話を旅に戻しましょう。なかなかハードな旅でしたね?
青木:バスや列車の移動時間が長かったですね。時間とお金は等価なものだというのことを改めて感じます。


——今後、行ってみたい場所などありますか?
青木:今までの文化、これからの経済を意識するならアフリカやインドに行きたいです。でも現実的に考えると麗江や大理にまた戻りたいなぁと。


——そんなにいいんですか。じゃあ、私も行こう! どうも、ありがとうございました。また、登場してください。