ハノイの日本人

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スマイレージの「メルヘン花火」その2。

前回予告した通り、スマイレージの2ndアルバム『スマイルセンセーション』(2013年5月)を取り上げます。まずはこのアルバムに収録された先行シングル3枚から。発売の順に以下のようになっています。


 11thシングル『好きよ、純情反抗期』(2012.8)
 12thシングル『寒いね。』(2012.11)
 13thシングル『旅立ちの春が来た』(2013.3)


この3曲は本当に凄いですよ。女子アイドルとして画期的なことをしています。例えば、ジャニーズ事務所は家族のような存在としてファンを育てます。ファンは好きになったタレントを数十年見続けて、いつの間にか我が子の成長を見守る母親のような存在になるわけです。しかし、シングル曲にそれを匂わせる歌詞は登場していません。


また、J-POPでは誰もが感情移入可能な恋愛の1場面が歌われることが普通です。しかし、アイドルソングにおいて「愛する君」は通常ファンのことです。「君に会いたい」であれば「ライブに来てほしい」を意味します。でもスマイレージは反抗期なんですねw その流れに逆らって見せました。


それが『好きよ、純情反抗期』『寒いね。』『旅立ちの春が来た』という3部作です。スキャンダルによるメンバー交代などで、すっかりデビュー当初の勢いを失っていたスマイレージは、解散も心配されるような状態でした。3部作のタイトルはそのことを想像させるものだったのです。旅立ち⇒解散というように・・・


つんく♂プロデューサーはこの3部作でなにを表現したかったのか? スマイレージのこれまでを楽曲に落とし込んでいるのです。まず、恋愛に突進し転落を描いた『好きよ、純情反抗期』です。そして、ファンが去り寒い今の心情を告白する『寒いね。』。さらに、その苦難を経て一回り大きくなった彼女たちの巣立ちが『旅立ちの春が来た』というようにです。


これだけでも凄いのですが、このとき、つんくさんはある仕掛けを用意しました。スマイレージとファンの関係を一旦リセットしたのです。ファンは恋愛相手としてではなく、優しい父親として再設定されました。『好きよ、純情反抗期』に登場する言葉で言えば、だいたいこんな感じになると思います。


 お母さん:つんく♂プロデューサー
 大好きな君:イケメン
 ファン(は登場してないけど…):お父さん
 受験:CD売上


母親役のつんくさんは恋愛はダメだと厳しく教育します。でも、彼女たちの恋愛に向けるエネルギーは大きすぎるのです。「バレたらどうしよう」そう思いつつも止められません。この曲を聴いたファンはどう思ったでしょう? 


それまではクソ事務所と不満をぶつけていました。でも、ここまで気持ちをオープンにされてしまっては、もう、父親のように見守るしかありません。ファンも共犯者にされてしまったのです。そして、スマイレージが一回り大きくなって巣立つ姿を優しく見つめたはずです。この3曲を「さよなら恋吹雪3部作」と名付けました。個別に語っていきましょう。



 No.4『好きよ、純情反抗期』
 ♪「真面目な子」で 生きて来たの それが普通だもん
 ♪ 太ったんじゃなく 女性として魅力的になったと言ってよ 
 ♪ お母さんだって 夢中で誰か愛したことあるでしょう


スマイレージ『好きよ、純情反抗期』は、ももクロがカヴァーした『Believe』を連想させます。ガンダム主題歌になってもおかしくないカッコイイ曲です。でもガンダムの主題歌には「お母さん」という言葉は登場しませんw 


メルヘン花火に認定した歌詞は「太ったんじゃなく 女性として魅力的になったと言ってよ」です。いろいろ考えさせる歌詞ですよねw わがままなのはスマイレージのメンバーだけではありません。つんくさんも大変です。でも、お父さんなら「そのくらいの方が健康的だ」と言ってくれますよね?



 No.5『寒いね。』
 ♪ 星空を見上げたけど 特になにも見えない 
 ♪ 君と繋がってなきゃ凍えそう 
 ♪ 誰にも話さなかった秘密事 本当は聞いてほしかったの


次『寒いね。』。美しいメロディに乗せていい歌詞満載です。まずは「星空を見上げたけど 特になにも見えない」から。歌詞を見るまで後ろ半分は「遠くに何も見えない」だと思っていました。意味的には、自分たちが目指すべきスター(星)が見えない。目標を見失った深刻な状態について書かれた歌詞のはずです。なのに、ここではバカな子の感想みたいな歌詞「特になにも見えない」がつけられています。さすが! これぞメルヘン花火。


さらに「君と繋がってなきゃ凍えそう」です。「繋がり」ほど、ファンを怒らせる言葉もありません。気づかなかったなんてことはないでしょう。これは繋がることができなくて凍えていることを示した歌詞です。これもメルヘン花火認定です!



 No.6『旅立ちの春が来た』
 ♪ 女の華道 
 ♪ 女の華盛り


最後に『旅立ちの春が来た』。恋愛にうつつを抜かしている友人に別れを告げ、スターを目指して旅立つときが来ました。ここからリスタートです。やっとファンの前に戻って来るのです。スマイレージの成長物語はここに完結しました。以降のシングルでは恋愛をテーマから外しています。次回はアルバムの他の曲を見て行きましょう。