ひと月前「私の音楽履歴書 80年代」という文章を書きました。レコードが高価でなかなか買えない時代。それから MTV やレンタルレコード店の誕生で、いろんな音楽が聴けるようになった時代。一気に 10倍の枚数のレコードが聴けるようになったわけです。で、量から質へ。前回書いた HIP HOP の本質の話です。ピチカート・ファイブのアルバム『月面軟着陸』(1990年5月)を聴いて、HIP HOP の聴き方がわかったんです。
◉私の音楽履歴書 80年代。
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20140420/1397971952
『「MTV」で最初に RUN DMC が登場したときは覚えています。そのとき HIP HOP を知りました。でも正直、このときは HIP HOP の本質をわかっていなかったんですよ。音に関することです。なので派手なネタがあるものは理解しやすいんですけど、音で聴かせる曲はまったくわかりませんでした。それが理解できるようになったのは渋谷系グループのあるアルバムを聴いたときでした。それは90年代になります』
- アーティスト: ピチカート・ファイヴ
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct
- 発売日: 2004/04/28
- メディア: CD
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でも、そのアルバムをあらためて聴いてみましたが、どうしてこのアルバムで HIP HOP がわかったのか? よく思い出せません。でもこれ以降、音楽の聴き方が明らかに変わりました。その理由を考えてるうちにひと月経ってしまいました。当時のことをもっと思い出してみましょう。アルバム『月面軟着陸』のことは音楽誌『ミュージック・マガジン』のクロスレヴューで知りました。賛否両論って感じでしたよね? でも、その「否」の方の文章に興味を持ったんです。なんだっけ・・・頭のいい人がつくってて嫌みな音楽とか書かれてたんだっけw
例えば、アイドルの楽曲の多くは、海外のヒット曲をベースに再構築した音楽だったわけです。でも、ピチカート・ファイブの音楽は歌謡曲ではないのに、あらゆるジャンルの音楽をベースにしてつくられていました。トレンドと関係なく自分の好きな音楽をチョイスし、凄い量の音楽を咀嚼して新しい音楽をつくったのです。たくさんのレコード店がある街、渋谷の音楽「渋谷系」の誕生でした。
そういう音楽が誕生した背景には、HIP HOP から派生した DJ カルチャーがありました。イギリスではレアグルーヴと呼ばれるムーブメントがあり、古いレコードからかっこいい踊れる音を DJ たちは競って探したのです。昔の音楽を別の解釈で響かせる、センスを競いあったわけです。もちろん、最新の HIP HOP で使われたレコードは人気を集めました。
とにかく、音楽をメロディーや歌詞で聴くのではなく、音の質感で楽しむことを覚えたのでした。もう、ジャンルで音楽を聴くことはなくなったのです。これは私の中での革命でした。上のような曲でも楽しめるようになったのです。