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ジャニーズの教科書。第3章「SMAP、そして父になる」⑧

これまで歌詞やドラマについて書いて来ました。今回は現実の事件について考えます。



◉ジャニーズの教科書。第3章「SMAPそして父になる」①〜⑦
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150511/1431325930
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150518/1431934444
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150525/1432556787
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150601/1433139261
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150608/1433750378
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150615/1434361591
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150622/1434977644



木村拓哉独立? そして、父になる。

1996年には2つの事件がありました。バラエティ番組『SMAP×SMAP』が始まり、ドラマ『ロングバケーション』が社会現象と言われるまでの人気を呼んだ年です。メンバーの森且行が事務所に無断でオートレーサーの試験に合格。そのことで事務所をクビになり、SMAPを脱退することになりました。


SMAPがうなりを上げてブームを起こす中での事件です。しかし、前出の元フジ・プロデューサー佐藤和義は『SMAP×SMAP』がスタートする前からそのことを知っていたと証言しています。これはなにを意味するのでしょう? ジャニー社長、メリー副社長は知らなかったけど、飯島マネージャーや、フジのプロデューサーは知っていたということなのか。もちろん、スケジュールの問題もあったでしょうし。森が試験を受ける時点で今後について相談していたはずです。


さらに、木村拓哉の独立騒ぎも起こりました。SMAPの絶頂期に木村はジャニーズ事務所を出て独立すると申し出たそうです。それは噂通り、実際に起こった事件なのでしょうか? 週刊誌『AERA』1997年3月24日号に登場したジャニー社長は以下のような発言をしています。


——たとえば、九五年に解散、諸星和己が事務所を辞めた光GENJIは。
 諸星君は、いつもセンターをしめて超人気だったっていう認識が自分ではあるわけですよ。でも、あとのメンバーが支えている。(中略)
——木村拓哉の独立問題が言われているSMAPは?
 やっぱり中居君がね、カチーッと押さえてるでしょ。彼はすごいですよ。自分のことを捨てて。そうじゃなかったら、SMAPなんか今頃ないですよ。(後略)


独立騒動があったことをまったく否定してないことに驚きます。また、96年12月に写真集『木村拓哉』(JTB出版)が発売され、それは木村の父が社長をする個人事務所の制作で発売されています。もしかしたら既に独立後の個人事務所が存在したのかもしれません。


森且行脱退、木村拓哉独立騒動という2つの事件を見ると、SMAPは本当に解散の危機にあったように見えるのです。しかし、本当にそうなのでしょうか? たしかに、木村が待遇に不満を持っていたのは事実でしょう。週刊誌『AERA』の記事には、木村と事務所の契約は毎年秋に更新するが、それが難航しているとも書かれ、年収「推定二千数百万」との記述もありました。


ドラマも大ヒットし、CMにも出まくってたのに、2千万とは酷い話です。ここで木村と飯島マネージャーが粘り強く交渉したことで、タレントの待遇が飛躍的に改善されたと言えるでしょう。97年の木村の納税額は8千万円を超えています。つまり、2、3億円の収入があったわけです。それ以降も順調に給与は増えました。木村は生みの親であるジャニー社長、メリー副社長に自分の権利を主張し、認めさせたわけです。もう、私が何を言いたいかおわかりですよね?


この独立騒動についても、私は「物語消費」で考えようと思います。もちろん、騒動自体は事実としてあったのかもしれません。しかし、それを表沙汰にしたのはまた別の理由だと思うのです。この章の最初の方に登場した、英雄物語の構造の7番「子供は、生みの親に復讐する」と8番「子供は認知され、最高の栄誉を受ける」です。これは木村が生みの親としてのジャニー社長、メリー副社長を超える、もしくは同格に並ぶというストーリーです。


そして、木村拓哉が国民的スターになる過程で大事件が起こります。2000年12月、元おニャン子クラブ、歌手の工藤静香との結婚です。このときは森且行の脱退、木村拓哉の独立騒動以来となる深刻な会議がジャニーズ内で行われたのではなかったでしょうか?


SMAPをNO.1グループに、ジャニーズ事務所をNO.1芸能事務所にした原動力、木村拓哉の結婚です。ただ事ではありません。この結婚でこれまで築き上げたすべてが台無しになるかもしれないのです。しかし、木村拓哉が国民的スターになるためには、結婚して子供をつくる必要がありました。なぜなら、彼には「大人の男」とは現代日本においてどういうものか? そんなロールモデルを提示しようという計画があったと推測できるからです。



例えば、1991年に発売された清水建設のCMソング『パパの歌』はどうでしょう? RCサクセション忌野清志郎が歌った曲です。作詞は糸井重里。家の中ではゴロゴロしばかりでトドみたいだけど「♪ 昼間のパパは ちょっとちがう」と歌われました。糸井重里SMAPを売り出すときのブレインの一人だったと私は推測しています。糸井が司会をする番組に木村が出演して話題になることも度々ありました。『パパの歌』という大人の労働を子供に伝える曲、これがSMAPの2ndシングル『正義の味方はあてにならない』(1991年12月発売)の元ネタだったのではないでしょうか?


さらに、『$10』『Hey Hey おおきに毎度あり』『がんばりましょう』と重要な局面でSMAPは労働歌を歌って来たのです。働いて、家庭を持ち、そして、子供を育てる。SMAPが進む道はデビューの年から設定されていたのでした。
 

飯島マネージャーがジャニー社長、メリー副社長に木村の結婚を伝えたとき、アイドルとしての最大の難関を乗り越えるための計画も、同時に提出されたことでしょう。それはスポーツ紙に婚前旅行がスクープされる前だったはずです。SMAPのCDシングル、主演ドラマについても真剣に準備がされただろうと推測します。


実際には、準備する間もなく突然起こった出来事のように報道されました。「授かり婚」という木村の発言があった一方、工藤にキムタクは嵌められたと語るメディアも多くありました。工藤が妊娠4ヶ月という堕ろすことも出来ない状況で、キムタクに結婚を迫ったと書くメディアがあったのです。なぜ、突然の出来事を装う必要があったのでしょう?


あくまでも私の推測ですが、ショックを1回で終わらせるため、つまり「結婚」と「出産」というファンにとって衝撃を与える出来事を1回で済ませた・・・そんな風に考えることも可能ではないでしょうか? そのことで木村が父になったことも大々的に報道されることとなったのです。当時、各新聞社は号外を出してこのニュースを伝えています。


結婚は12月5日に行われました。そして、新年には間髪いれずにドラマ『HERO』(フジテレビ)が放送されました。それまでのドラマの記録を塗り替え平均視聴率34.2%(関東)という脅威の数字を叩き出します。普通なら人気の低下を意識しなければならない結婚で話題の中心になり、主演ドラマを大ヒットさせたのです。


SMAPは人気の低迷期にシングル『正義の味方はあてにならない』でヒーローの不在を歌いました。その曲には「♪ まじめひとすじ そんしてばかりの パパはひょっとして 正義の味方!!」という歌詞もあったのです。それから9年、現実にパパになった木村自身がヒーローを演じたドラマで、幅広い年齢層からの支持を受けました。このときから木村拓哉SMAPは国民的スターと呼ばれるようになったのです。物語はこのように完成しました。


◉父なき芸能事務所ジャニーズ

ジャニー社長は2015年10月で84才になります。さすがに次期社長が誰なのか決めなければならない次期に来ているのです。ジャニー社長はその人物を育てると公言しています。ジャニーズ事務所の株式は60%をジャニー社長が所有しているそうです。つまり、ジャニー社長の意向がすべてと言って良いわけです(メリー副社長がそれを許さないかもしれませんが)。


現在、メディアで書かれている社長候補は二人います。一人はメリー副社長の娘、藤島ジュリー景子。彼女はすでに嵐など主要グループが所属するレコード会社J STORMの社長です。もう一人はSMAPのマネージャーから出世し、J DREAMという映像制作会社の社長になった飯島三智。それぞれ、嵐、SMAPという主力タレントを武器に争いを繰り広げていると噂されています。


しかし、実際にはそんな争いはないと私は考えます。もしあるとしたら、ジャニー社長というカリスマの跡を継ぐのに相応しい人物という、物語を用意するためでしょう。激しい闘いの末に勝利し、ジャニーズの跡目を継いだというストーリーです。


ですが、本当にこの2人が社長候補なのでしょうか? それが事実だとするとジャニーズ事務所の社長が女性になるということです。これまで通り会社運営の実権は女性が握ると思うのすが、社長は男性がなるという可能性も捨てきれないのです。では、誰が・・・?


実は、私が読み解いてきたストーリーでは、ジャニーズの父は木村拓哉なのです。しかし、彼は現実の中で父親になってしまいました。ジャニー社長が結婚したタレントを跡継ぎに指名するでしょうか? ジャニー社長がつくりだした「ぼくらの世界」を壊してしまうのが「結婚」です。本来、ジャニーズ・タレントとして、あってはならないことなのです。


となれば、同じグループのあの人物がクローズアップされるはずです。これまで意図的にその名前をほとんど出さずに来ました。しかし、現在、ジャニーズ事務所の稼ぎ頭は中居正広なのです。デビュー前からお笑い修行をしてきた彼は、現在、バラエティ番組の司会者として、トップ5に入る活躍を見せています。そして、年齢を重ねることで、司会者としての格も上がって行くことでしょう。メリー副社長がSMAPをクビにすると書くメディアもありますが、実際のところそれはあり得ないのです。


本人の活躍はについては全く心配ないのですが・・・残念ながら、プロデュース能力という点でジャニー社長に及ぶべくもありません。それは舞祭組で証明してしまいました。一体、誰が社長になるのか? 遠くない将来、そのときが来るのは間違いのないことです。今からそときが不安でなりません。ジャニーズはどうなってしまうのか・・・(おわり)