ハノイの日本人

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SMAP をなめんなよ! 第2回

ジャニーズ2度目の冬は、SMAPのデビューとともにはじまったと第1回で書きました。では、SMAPのなにが悪かったのでしょうか? デビュー当時、メリーさんにボロクソ言われていたというエピソードをどこかで読みましたが、私はSMAPに魅力がなかったせいだとは思っていません。問題があるとしたら、その前の「光GENJI バブル」の方だと思います。


光GENJI の人気は「バブル景気」と重なっています。光GENJI は87年6月デビューですが、Wiki によるとバブル景気は「1986年12月から1991年2月までの4年3か月(51ヶ月)間を指すのが通説となっている」そうです。ほぼ重なっていますよね。で、私が「光GENJI バブル」と呼ぶのは以下のようなことです。光GENJI のデビューしてから1年間のシングルを見てください。


1. STAR LIGHT(1987年08月19日)
2. ガラスの十代(1987年11月26日)
3. パラダイス銀河(1988年3月9日)
4. Diamondハリケーン(1988年6月21日)


♪ こわれそうなものばかり集めてしまうよ
  輝きは飾りじゃない ガラスの十代〜 (作詞:飛鳥 涼)


♪ 夢はプリズム 愛はダイヤモンド 稲妻集めて 作るのさ
  両手かざして 光る鼓動を つかむのさ 胸いっぱい〜(作詞:田口 俊)


飛鳥 涼が作詞、作曲した「ガラスの十代」とその1年後に田口 俊が作詞、井上ヨシマサが作曲した「Diamondハリケーン」です。どうですか、たった1年の間に「ガラス」が「ダイヤモンド」に変わってしまいました。「バブル景気」のスピード感そのものです。当時、バブルという時代と一緒に踊ったことで、光GENJI の人気は最高潮だったかも知れません。しかし、これは後に大きな傷を残します。そうです、それがSMAP の低迷です。


このことに気づいたのは、ある歌詞がきっかけでした。Kinki Kids の「硝子の少年」です。作詞は松本 隆です。松本は近藤真彦のデビュー曲「スニーカーぶる〜す」の作詞でも知られています。少し回り道になりますが、簡単に書いておきましょう。


♪ 指に光る指輪 そんな小さな宝石で 未来ごと売り渡す君が哀しい〜(「硝子の少年」)


「光る」=光GENJI 、「小さな宝石」=「Diamondハリケーン」、「君」=ジャニーズですw ほとんど、陰謀史観のように思われるかも知れません。でも、「硝子の少年」はKinki Kids のデビュー曲でありながら、少年の心が死んでしまったと書かれている曲なのです。Kids を名乗るグループのデビュー曲なのにです。そのことは、「♪ STAY with me 硝子の少年時代の 破片が胸へと突き刺さる〜」の部分に顕著です。硝子は割れてしまったのです。


松本 隆は一度「硝子の少年」を壊す必要があったのです。では、大作詞家、松本 隆と「光GENJI バブル」に関係はあるのでしょうか? もちろん、あるのです。「風街図鑑」という松本 隆の作品集には、「松本隆自身による各曲解説」があります。そこでの「スニーカーぶる〜す」についての記述を見てください。


スニーカーぶる〜す近藤真彦」:ある日、ご飯を食べながらボーっと『(3年B組)金八先生』を観てた。学ランを着ている生徒がいて、「この子、いいなあ」と思っていたら近藤真彦だった。でもう1回、「てぃーんず ぶるーす」の世界をやってみようと思ったんだ。ジャニーズ側はこんな男の子が悩む歌なんて気に入らないんじゃないかと思っていたんだけど。


こんな感じで書かれています。「スニーカーぶる〜す」は近藤真彦のデビュー曲です。そして、そのもとになったのが原田真二のデビュー曲「てぃーんず ぶるーす」(作詞:松本隆)だと書かれています。どちらも「ガラス」という言葉こそ使っていませんが、「繊細な少年の心」、すなわち「ガラスの少年」をテーマに歌詞が書かれているのです。


つまり、私が「光GENJI バブル」というのは、松本 隆が作り上げた「ガラスの少年」というテーマをもとにした作品群を、よってたかって無茶苦茶にした件について言うのです。ジャニーズが軽卒だったという指摘は外れていないでしょう。そして、「ガラスの少年」というテーマを消費し尽くした後、ジャニーズは、一から新しいアイドル像を作り出す必要がありました。その矢面に立ったのがSMAP だったのです。


光GENJI は、もちろん、スーパーアイドルと呼ばれるべき特別な存在でした。あの時代を語るときに外せない存在だと思います。私も好きな作品がたくさんあります。そして、SMAP が売れなくても露出し続けることができたのは、荒稼ぎしてきた光GENJI の遺産があったからだと思います。(つづく)


追伸:松本 隆さんのサイトにある「風待コラム駅伝」に「硝子の少年」が登場したときには、ぜひ、私に書かせていただきたいものです。


◉風待茶房
http://www.kazemachi.com/