ハノイの日本人

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ジャニ友、HAL さん編。ピアソラ

先週、HALさんのフィギュアスケート世界選手権の話を聞いたときに、ピアソラが好きだと言いました。その後、HALさんからあらためて ピアソラを使ったお薦めの演技を紹介していただきました。みなさんもご覧ください。



◉ジャニ友、HAL さん編。前半
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20120324/1332606661

◉ジャニ友、HAL さん編。後編
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20120504/1336100428


——昔、タワレコピアソラの CD10枚組ボックスを 1000円で買ったことがあるんです。とても気に入りました。
HAL:アストル・ピアソラお好きだったんですね。フィギュアだと結構使われてますよ。


——メロディもいいですが、時に狂気をはらんだようなスリリングな展開があったり。
HAL:ですよね! 私も好きです。詳しい解説付けてみました。


——ありがとうございます! では、追加で掲載させていただきます!


◉「リベルタンゴ」2007年世界選手権OD アルビナ・デンコワ&マキシム・スタビスキー(ブルガリア
http://www.youtube.com/watch?v=6LASVv_44eY


——これは埋め込み禁止ですね。リンク先で見てください。これは熱い! グッときますね。
HAL:「リベルタンゴ」はアイスダンスオリジナルダンスのリズム指定に「タンゴ」が来ると、必ずどこかのチームは選曲する定番曲なんですが、前に紹介したグリシュク&プラトフ(ロシア)らのが1番だと思います。でもこのカップルのダンスもすごく好きなんです。
男性のスタビスキーはロシア出身ですが、層の厚さからロシア代表を諦めブルガリアへ移籍。元体操選手のデンコワと組みます。最初は気が合わなかった二人ですが、デンコワが練習中に大けがを負ったとき、スタビスキーが親身になって看病したことから絆を深め恋人同士に。
このタンゴは出だしからまるで映画を見るようで、男と女が出会って恋に落ちて嫉妬やいさかいを繰り返しながらも、お互いを求めずにはいられない様を短い時間で表現していてすごく好きなプログラムになりました。
この後スタビスキーが飲酒運転で死亡事故を起こし、現役引退を余儀なくされ、現在はプロとしてショーで滑ったり振付の仕事をしています。事故の一報を知った時はショックで眠れず、今も悲しい気持ちになりますが、己のしたことから逃げず誠実に罪を償ってほしいとただただ祈っています。この事情から来日することができなくなりましたが、日本のファンにも非常に人気の高いカップルでした。


◉ 2008年メダリスト・オン・アイス 鈴木明子


——これまた美しい!
HAL:鈴木明子選手はジュニア時代は国際大会の表彰台の常連で、将来を期待された選手の一人でしたが、大学進学と同時に摂食障害にかかり、一時期は体重が30Kg代にまで落ちたこともあったそうです。そこから復帰して小さな国際大会からこつこつと成績を残し、今年の世界選手権で銅メダルを取るまで這い上がってきました。
スケートがやりたくてもできない時期があったせいか、彼女の滑りからはスケートを滑る喜びと生命力を強く感じます。
このプログラムは実況が指摘しているように、「あっこにはタンゴが似合う」という高橋大輔選手の提案に、鈴木選手が乗って出来たプログラムですが、初めて披露された『 Dreams On Ice 』(例年6月に行われる前シーズンの成績優秀者が出演する日本スケート連盟主催のアイスショー)で、ファンの間で素晴らしいと評判になり、連日スタンディングオベーションを巻き起こしたプログラムです(残念ながら一般にはまだ無名だったのでフジテレビ地上波では放送してくれませんでしたけど)。


——本当に。なんか外国人が想像する美しいアジア人女性って感じで。見事にハマってますね!
HAL:私が実際に見たのは別のショーですが、その後何度見てもそのたびに会場内の温度が上がっているのではないかと錯覚するような濃厚な空気感を作り上げていました。


◉「ブエノスアイレスの四季」2009年ジャパン・オープンFS ステファン・ランビエール(スイス)


——ランビエール。この前、HALさんから教えてもらうまで知りませんでしたが、凄い選手ですね。
HAL:トリノ五輪の銀メダリストであるランビエールは2008-2009シーズンを前に、太ももの内転筋負傷を理由に1度は現役を退きます。しかしやはり五輪金の夢を捨てられず、復帰宣言をして初めての試合がこのジャパン・オープンでした。プログラム自体はショーナンバーとして前年から作っていたものです。「ブエノスアイレスの四季」から「秋」のパートを使用しています。
まだ調整を始めたばかりなのでジャンプの精度はいまいちでしたが、漂わせる雰囲気、圧倒的な世界観は同じ大会に出場した現役の若手選手たちをはるかに凌駕していました。


——なんか見たこともないような優雅さを持ってますよね。
HAL:二度目のステップシークエンスに入るところなどぞくぞくします。
残念なことにこのプログラムでは五輪では勝てない、という理由でお蔵入りになって実際にバンクーバー五輪では別のプログラムを滑りましたが、もったいなかったなと思うのが正直なところです。でも五輪用の「椿姫」もうっとりするほど素晴らしかったんですよね。




◉ 2010年全日本選手権FS 高橋大輔


HAL:こちらは「冬」と「春」を使用。このシーズンの高橋選手は五輪銅を取った後、ということもあってモチベーションの維持に苦しんでいたようですが、さらにこの二週間前のグランプリファイナルで同じ日本の選手に練習中に衝突される(故意にではないです)というアクシデントがありました。その衝突で怪我をし身体のバランスがおかしくなり、十分な調整を出来ずに臨んだ全日本選手権のSPではミスを連発し4位。選考基準から行けば表彰台に上がらなくても彼が世界選手権の代表に選ばれる可能性は十分にあったのですが、「もし明日、総合でも4位で、たとえ世界選手権に推薦で行くことになっても、自分は絶対に辞退する!(中略)そりゃ世界選手権には出たいけど、そんな形で行く自分が許せない。それにはメダルを取るしかない。(著書「Soul Up」より)」と決意して、プライドをかけて臨んだ FS の演技です。スケーティングが信じられないほど粗くなり、背中を十分に反らせなかったり首を使えなかったりと明らかに身体に異常をきたしているのに、怪我の原因を口にすれば衝突した後輩を追いこんでしまうから、と一切口にせず、気迫だけで滑り切った4分30秒でした。
点数自体は色々と取りこぼしもあって伸びませんでしたが、なんとか3位には入ることができました。しかし会場に居合わせた観客にとっては順位など関係なく、彼の演技が一番印象に残ったと思います。点数や順位など関係ない。人の心を震わせるのに順位など必要ないのだと断言できる演技がフィギュアスケートには時々出ますが、これもその一つになりました。


——凄い集中力ですね。見入ってしまいますよ。


◉「ピアソラ・メドレー」2011年エリック・ボンパール杯SP エリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)


HAL:トゥクタミシェワは、ウルマノフ、ヤグディンプルシェンコらロシアの歴代男子五輪金メダリストを育てたアレクセイ・ミーシンコーチの秘蔵っ子です。11才くらいからロシアの中では期待の星として注目を集めてきました。14歳になってシニアのグランプリシリーズに参加できるようになりましたが、その年に父親が死去。
トゥクタミシェワはピアソラの「アディオス・ノニーノ(さよなら、お父さん)」をプログラムに入れることを決めました。通常タンゴの衣装は赤と黒ですが、黒一色の衣装をまとったのはこの曲が、父のためのレクイエムだからです。
トリプルルッツ+トリプルトウループと行った高難度のジャンプを軽々と決める身体能力もすごいですが、とても14歳とは思えない大人びた雰囲気と、流麗な体の線から生み出される表現が美しい選手です。体形変化によってジャンプがかりに失われても、彼女の踊りの素晴らしさまでは誰にも奪うことはできないはず。これからどんな選手へと成長していくのか、先が非常に楽しみな選手の一人です。


——ピアソラだけでいろんな演技を紹介してもらえたおかげで、表現の仕方が選手によってずいぶん違うものだと認識出来ました。とても面白かったです。ありがとうございました!