ハノイの日本人

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宇多田ヒカルはROCKじゃない!

先週書いた文章の続きです。私はロックも好きなんですよ。『日本のロック名盤ベスト100』に登場する100のアーチストはみんな知ってますし、アルバムについても8割近く聴いています。影響もたくさん受けました。でも、ロックの価値を高めるために、他のジャンルを貶すやり方に文句をつけてるわけです。そもそも今はジャンルを決めて音楽を聴く人は少ないでしょ? 無理矢理引きずり出して「ロックじゃない!」って批判されても困るんですよw



◉ROCKすげーな。
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20150926/1443281785


日本のロック名盤ベスト100 (講談社現代新書)

日本のロック名盤ベスト100 (講談社現代新書)


◉ 99位 宇多田ヒカル『ファースト・ラヴ』
史上最大の売り上げを記録した 孤独なるR&B怨歌
『(前略)CDが無尽蔵に売れ続けるかのように錯覚されてもいた、九〇年代の末尾にこそ相応しい超特大のヒット作がこれだった。
 といっても、内容的にはさして見るべき点はない。垢抜けない和風のR&Bもどきが並んでいるだけの一枚、と言えばいいか。ただひとつ、ここに「Automatic」が入っていることを除けば——これは、とてつもない歌だ。(中略)
 しかし、これに匹敵するだけの一曲が作られることは、このアルバムのあともなかった。そして二〇一〇年に彼女は音楽活動停止する。』


かなりの酷評ですね。宇多田ヒカルは『Automatic』だけの一発屋だと言っているようです。しかもその曲には「R&B怨歌」という表現が与えられていました。怨みの歌・・・・この曲がですか? 彼女が「♪ 十五、十六、十七と私の人生暗かった」と歌った藤圭子の娘だからでしょうか?



◉Automatic(歌詞タイム)
http://www.kasi-time.com/item-2349.html



著者が『Automatic』をそこまで特別な曲だという理由は私にはわからないですね。フィシュマンズまで持ち出して絶賛していました。『十代の恋愛を素朴な言葉で描きながら、そのストーリーのどこにも「救いがない」。』と評しているんです。そうなんですか? ほんとうに藤圭子と間違ってるんじゃないですかww 


本人も「何も知らずにはしゃいでたあの頃」と名曲『Goodbye Happiness』で歌ってますよ。完全に誤読ですね。歌詞を読むのは得意じゃないみたい。『Automatic』がヒットしたのは、単純に当時の日本で新しいと感じさせる楽曲だったからですよ。他になかったんですよ。どうして、ここまで酷評しているのに100枚の中に入れたんでしょうか?



◉ 100位 Perfume『GAME』
快楽の彼岸のみをただ目指して 彼女たちはアンドロイドになった
『二〇〇〇年代を代表する、これは「製品」と呼ぶべき一枚だろう。彼女たちのデビュー作は、中田ヤスタカのプロデュースのもと、膨大な量のアイデアが詰め込まれた一枚となっている。ありとあらゆる日本の文化的消費財から、ある条件に沿って抽出されたアイデアが。
 まずはアイドルなのだろう。性的な暗喩で満艦飾となっている、それ以外は没個性的な女性像が、決められた振り付けで観客を興奮へと導き、欲望に奉仕していく、という図式は、北朝鮮喜び組と俗称されるもののありかたと似ている。(中略)彼女たちの音楽および存在は、厳密なるルールがあるゲームの一部だ。そこに参加する快楽は、麻薬的ではないのかもしれないが、純度が高すぎる白砂糖的ではあるかもしれない。だから大きなヒットとなった。』


ここまで酷評するならランクインさせなければいいのに。普通にそう思わないですか? なんでしょね・・・・編集者から「20代の人たちにも手に取ってもらえるように Perfume宇多田ヒカルくらいは入れてもらえませんか?」なんて言われたのかな? 「そんなのはロックじゃない!」って突っぱねればよかったんですよw




9位 サディスティック・ミカ・バンド
14位 荒井由実ひこうき雲
23位 戸川純玉姫様
34位 矢野顕子『JAPANESE GIRL』
39位 少年ナイフ『Let's Knife』
41位 カルメン・マキ&OZ『カルメン・マキ&OZ』
44位 ZELDA『ZELDA』
45位 シーナ&ロケッツ真空パック
49位 カヒミ・カリィ『MY FIRST KARIE』
64位 ピチカート・ファイヴ『Happy End of the World』
76位 サンディー&ザ・サンセッツ『IMMIGRANTS』
85位 バッファロー・ドーター『CAPTAIN VAPOUR ATHLETES』
86位 PUFFY『JET CD』
99位 宇多田ヒカル『ファースト・ラヴ』
100位 Perfume『GAME』



女性でランクインしているものを並べてみました。15枚。まあ、37位のサザンも原由子が歌ってるから入れていいのか。こんな感じなんですけど、やはり最後の2枚は不自然ですよね? そこまで酷評するなら他に入れるべきものがあったはずですし。例えば、CHARAUA椎名林檎は評価されないんですかね? その理由は『アイドルと日本の「欲望」システム』に書かれています。まずはアイドルが批判されている箇所から。


『頑張っている女性を応援、でもなんでもいいが、そんな物言いが憤懣やるかたないおためごかしでしかないのは、「システム」に参加させられた当事者である女性たちには、そもそもなんのイニシアチブも与えられてはいないからだ。システムそのものをコントロールできる権力は、かならず、「外部」にいる独裁者のごとき者の手の中にある。そしてその「誰か」の指導のもとで、振り付けのもとで、「外には出られぬ」囲いの中で、統制された行動をとる女性の「献身」を鑑賞したりする、ときに賛美したりする、というゲームが出現することになる。これが男性原理を駆動エンジンとして使用した、日本特有のひとつのシステムの全容だ。』(P283)


「歌って踊る」が低く見られることを以前から不思議に思っていました。外部の人間に決められた振り付けで踊る者を見下していたんですか。じゃあ、バレリーナもダメってことなのか? 映画や演劇はどう? 外部の者に言われるままに演じるわけだけど。それに、ロックミュージシャンはそういう「システム」と無縁なのか? AKBを踊らされたロックミュージシャンはそういう「システム」の犠牲者に見えたけど。著者も講談社に気を使ってAKBという名前だけは出さないんでしょ? おためごかしの批判はやめてよ。さらに、上の引用箇所に続く文章には・・・



『そして、こういう文化のありかたを許容する女性(や女性像)こそが、日本ではあらゆる場面で優遇される。「許容すること」から対価を得ることも大いに推奨されている(その過程がときに鑑賞される)。この種の女性観やシステムのありかたにひそむベクトルをずっと伸ばしていって劇画化した最果てには、北朝鮮における「喜び組」と俗称される女性たちのイメージと、ほぼ等しいものがあるはずだ。
 悲しむべきことは、こうした女性像や日本的なアイドル・システムの価値観が、いともたやすく、日本のロックをも浸食してしまったことだ。おそらくは「Jポップ」をバイアスにして。この観点はたとえば、八〇年代の戸川純の強い影響下にあるシンガー・ソング・ライターの椎名林檎が、「オリジン」とは様変わりして、ことさらに性的イメージを強調したがることの奇矯への模範回答としても機能するだろう。日本のロックは、ひとつ、「アイドル」に負けた。ポルノまがいの「欲望の無制限な肯定」のシステムに負けた。』



日本のロックがダメになったのは、Jポップやアイドルのせいなんだそうです。ずいぶん、情けない話ですな。日本のロック名盤100枚を集めた結論がこれなのか・・・・ それにしても「欲望の無制限な肯定」っていうのは、どういう状況を言うんでしょうね? 枕営業のことですかね? 実際のところファンは「どんなにお金を積んでも あの子とはキッスとかできないのよ ざんね〜ん!」なんですけどね。



でもですよ! ロックはそもそも欲望を肯定する音楽じゃなかったんですか? I can get no satisfaction. とかって。外タレの乱行だって消費されてきたんじゃなかったんですか? ロッキング・オンで読みましたよ。椎名林檎の欲望だって肯定してあげてほしいですよ。私の場合、キャバクラも風俗も立派な労働だと思ってますし、そこで働く人たちの権利も守られるべきだと思っているので、著者が書かれている内容には賛同しかねます。もちろん、自ら望んで働いている場合の話ですよ。枕営業を強要されてるとかは最悪ですよ。



私の見立ては、CDが売れなくなったから、レコード会社やレコード店を支えるために電通がAKBを頂点に据えたアイドルのブームを仕掛けたというものです。宣伝方法を考えていたパチンコ屋のお金を使ってです。だから、ロックのサイドもそのブームを黙認したんでしょ? そういう事情にはメディア関係者の方が詳しいはずなのに。責任逃れだけはうまいんだから。