渋谷系について、説明を聞いてもよくわからないと言われることが多いですよね? 恐らく、ジャンルで語ることが出来ないからだと思います。「日本版アシッドジャズ」だと言い切る人もいるわけですが、いやいや、ネオアコもあれば、フォークも、ヘビメタも、ハウスも、HIPHOPもありましたよね? 説明を聞けば聞くほど混乱が深くなって行くようです。
渋谷系という言葉がつくられたのは1993年だそうですから、その言葉が出来た頃には既にいろんなグループが活躍していました。ジャンルもバラバラ、クオリティもまちまち。それらのグループをひとまとめに「渋谷系」というシールを貼付けて売り出した人がいたんでしょうね。田島貴男さんのように「俺は渋谷系じゃねえ!」と叫んだ人もいたでしょうけどw まあ、ファンからしたら、多くの人に聴かれて当然と思っていたでしょうし、その言葉を特別意識することもなかったはずです。個々のグループに思い入れがあったわけですしね。
古くからのファンの多くが渋谷系という言葉を使うようになったのは、ブームが終わった後になってからではなかったでしょうか。いや、外側の人と話す時には、便利だし多少は使っていたかもしれません。とは言え、やっぱり下の世代にビシッと説明してやりたいという欲はありますよね?
東浩紀さんの「データベース消費」という言葉を使えば、「渋谷系」を説明できるんじゃないか? そんなことを思いつきました。実は以前に、嵐⇒Hey! Say! JUMPという、ジャニーズのトップグループの人数が2倍に増えた理由を、データベース消費を使って説明しようと考えたことがありました。しかし、その概念を理解出来ているかが不安で断念しています。今回も不安はあるんですけど、渋谷系とのマッチングはそれよりイメージしやすいのでチャレンジしてみます。
渋谷系では、元ネタという言葉が非常に重要な意味を持っていました。例えば、フリッパーズ・ギターのヒット曲『恋とマシンガン』では、映画『黄金の七人』(1965、伊)のサントラが元ネタとして話題になりました。ですから、『恋とマシンガン』という曲を楽しむだけでなく、その裏に潜む元ネタも同時に楽しんでいたわけです。上の2番目の動画の35秒あたりから聴いてくださいね。
そんな昔の映画音楽に気づくのは、かなりの音楽通だけではないか? そう思われるかもしれません。たしかに、最初に聴いたときから元ネタに思いを巡らせたわけではありません。しかし、そう時間が経たないうちに音楽誌でもそのことが紹介されました。また、渋谷の大型レコード店ではフリッパーズのCDと共に元ネタのCDも再発され並べられていたのです。私も大阪の大型店にあったCDの紹介文で「フリッパーズの元ネタ」というような文章を見た記憶があります。
つまり、渋谷系においては、リリースされた曲を聴いた時に、その元ネタがわからなかったとしても、背後にあるレコード群の存在を感じながら聴いていたことになります。なので、それらの音楽には、世界最大のレコード市場があったと言われる「渋谷」の名が冠せられたのでしょう。渋谷に存在した膨大なレコードのイメージこそがデータベースだったわけです。
ゲーム的リアリズムの誕生~動物化するポストモダン2 (講談社現代新書)
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こんな雑な語り方でいいのでしょうか? いいわけありません。データベース消費についても説明が必要でしょう。東さんの書籍の流れを見ながら、以下の項目を抽出しました。それらを渋谷系に当てはめながら順番に考えて行こうと思います。まずはここまで。(つづく)
1. 時代背景:オタクはポストモダン的な文化集団である
2. 研究対象:オタクたちに好まれるライトノベルとはどのようなものか?
3. 結論:結果としてどのような物語がつくられるのか?