ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

アイドルの自殺や暴行被害が真剣に語られない理由。

 

「アイドルを語らせたら日本一」とも言われる吉田豪さんが、アイドルの存在の是非を問うような大きな問題が起きているにも関わらず、積極的に議論に関わらないことに疑問を感じていました。一度は私も「秋元康の意向なのか?」と勘ぐりました。でも、そうでないとしたらどのような理由があるのでしょう?

 

意外な所にヒントを見つけました。2008年4月にでた『思想地図 vol.1  特集・日本』(NHKブックス別巻)。ちゃんと読まなければならない文章がたくさん収録されています。東浩紀萱野稔人北田暁大による鼎談「日本論とナショナリズム」は、とっくに読んでなきゃいけない文章だった!

 

東:なるほど。しかしそのうえで考えたいのですが、ではこの「第二の敗戦」について、「戦後復興」はどのように可能なのか。萱野さんなら、人々に成熟せよと説くでしょう。しかし、その方向はこの国では挫折し続けている。しかも、この国では成熟の拒否がカウンターにもなってくれない。

 たとえば岡田斗司夫が強調することですが、オタク文化は、カウンターカルチャーではない。オタクは、抵抗や抗議というかたちでさえ社会と関わらない。オタク文化は、むしろ子供たちの王国をつくる文化です。成熟を拒否したまま、いかに脱社会的にだらだらと年をとるか、そういう壮大な実験をやっていると言ってもいい。だから、そこに潜む「ナショナリズム」も、大人たちのナショナリズムとは違う。

北田:オタクを文化として輸出するのではなく、コンテンツ・ビジネスとして外国に出してやろうという発想も、見方によっては「子供の論理」だということができますね。

東:そうですね。彼らはあくまでも、コンテンツをおもちゃとして輸出したい。そうでないと、むしろ彼らの自己肯定がうまく機能しない。実際、「文化」として「評価」されたら終わりだ、とオタクたちは頻繁に言ってる。

萱野:なるほど。大人になりたくないということのある種の言い換えなんですね。

東:評価されれば成熟を強いられる。それを避けているんでしょう。

北田:子供であることに開き直った思想は無敵ですよ。(後略)

 

NHKブックス別巻 思想地図 vol.1 特集・日本

NHKブックス別巻 思想地図 vol.1 特集・日本

 

 

ここで「第二の敗戦」というのは、もちろんバブル崩壊に代表されるような日本の経済的な敗戦のことです。日本は第二次世界大戦で敗北し、そこから経済発展によって復興しました。ですが、90年代にバブルが崩壊して以降、立ち直れずにずるずる現在に至っています。

 

東浩紀さんはオタク文化は子供の王国をつくる文化と、明快に説明されています。吉田さんの言動にもその思想は透けて見えます。しかし、それで本当に大丈夫なのか? いや、大丈夫じゃないから、犠牲者が出ていると考えるべきでしょう。自分たちの子供の王国を守るためなら、多少の犠牲も仕方ないとでも思えるのか? もちろん、一番悪いのは搾取をやめない奴らだけど。引き続き考えたいと思います。