ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

YMO とピンクレディーの関係。2

 

高知は街に人が戻ってきてる気がします。まあ元々それほど人混みがあるわけではないので。しかし、日本や韓国、台湾、ベトナムと、なぜ東アジアは新型コロナの影響が比較的小さかったのでしょう。イエローマジックという言葉が浮かびました。だったら中国はどうなんだという突っ込みもありますが。

 

以前書いた文章の続きです。ピンクレディーは日本で最初にダンス・ミュージックに挑戦し、国民的アイドルになったという話を書きました。そのため、ブラック・ミュージックに憧れを持っていた細野晴臣大瀧詠一が、ピンクレディーに好意的だったわけです。しかし日本人ミュージシャンがブラック・ミュージックに憧れを持つと、必ずぶつかる壁があります。それは肉体的なものです。力強さが足りず音数を増やすミュージシャンも多かったのです。ピンクレディーはそれをどう乗り越えたのか?

 

それがディスコ・ミュージックを使っての「歌って踊る」だった。作詞家の阿久悠のみが注目されがちですが、作曲・編曲を手掛けた都倉俊一、振付を担当した土井甫の役割もかなり重要だったのです。ピンクレディーのブームでよく語られるように、子供たちはみんな振付を覚えました。大滝詠一はそれを観て、盆踊り以来のダンスのムーブメントだと思ったのでしょう。アルバム『LET'S ONDO AGAIN』にはそういう意味も込められていたと推測できます。

 

 

一方、YMO は1979年9月に発売されたアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』の1曲目『TECHNOPOLIS』が、ピンクレディーの楽曲を坂本龍一が解析して、作られたと言われています。しかし、この曲を聴くと、その後の YMO の分裂が予期できるのではないでしょうか? YMO が初期のライブでカヴァーしていた『ウォンテッド』は力強いシンプルなリズムの反復を特徴とした楽曲でした。恐らく、細野が惹かれたのはこの部分だと思います。しかし、坂本がつくった『TECHNOPOLIS』はリズムよりもメロディに重きを置いたフュージョンよりの曲でした。坂本はミニマルに興味はあっても、ファンクやディスコにはそれほど興味がなかったのでしょう。違ったベクトルを持つメンバーのぶつかりによって YMO の魅力は花開くわけですが。細野は YMO が散開したあと、電子音によるグルーヴの追求に向かいます。

 

 

実はしばらくこの文章を書いていなかったのは、ある仮説を検証していたからです。YMO において、なぜ高橋幸宏はドラムを叩くことになったのか? 打ち込みではダメだったのか? 私は考えました。ダンスミュージックを体現するメンバーが必要だったのではないか? 躍動する高橋のドラミングを観ているとそんな気もしてくるのです。しかし、その証拠となるような発言は細野がロングインタビューを受けている『THE ENDLESS TALKING』にもありませんでした。まあシンプルに考えて、当時の打ち込みでは求める音が出なかったからかもしれません。

 

一方、大瀧詠一はアルバム『LET'S ONDO AGAIN』において、ピンクレディーインパクトの大きさを提示します。2曲続けてピンクレディーのパロディをやるのです。『禁煙音頭』は宇崎竜童ですから、山口百恵も意識していたかもしれません。

 

『 LET'S ONDO AGAIN 』

1. 峠の早駕籠:イントロダクション、お猿のかごや

2. 337秒間世界一周:世界中のいろんな曲の断片が演奏される

3. 空飛ぶカナヅチ君:『およげ! たいやきくん』から始まる

4. 烏賊酢是 ! 此乃鯉:エルヴィスの曲名が次々と歌われる

5. アン・アン小唄:お座敷小唄的な曲

6. ピンクレディー:曲はピンクレディーの曲のメドレー

 

7. 河原の石川五右衛門:『渚のシンドバット』の替え歌

8. ハンドクラッピング音頭:『ハンド・クラッピング・ルンバ』を再演

9. 禁煙音頭:ダウンタウン ・ブギ・ウギ・バンド『スモーキン・ブギ』の替え歌

10. 呆阿奴哀声音頭:レイ・チャールズ『What'd I say』のカヴァー

11. Let's Ondo Again:『ナイアガラ音頭』のヒット再び?

 

このアルバムの収録曲を観ると、大瀧主宰ナイアガラ・レーベルの総集編的な曲、70年代後半の大ヒット曲、大瀧自身のアイドルのカヴァーといった感じでしょうか。その中で注目するのは『337秒間世界一周』です。インストでいろんな国の曲が挿入されます。大瀧版『イッツ・ア・スモールワールド』です。これは「非日常のエンターテイメント」ですよね。つまりここでもピンクレディーとつながっているのです。改めて「非日常のエンターテイメント」について考えようと思います。(つづく)