ハノイの日本人

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アイドル楽曲派・夏期講習会。復習編

 

 

 

 

アイドル楽曲派・夏期講習会

 

音楽を聴く耳を向上させるための講習会です。

でも普通に聴くだけの人には必要ない技術です。

自分の好きな音楽を聴いてください。

ミュージシャンも、自分の信じる道を進んでください。

 

これは「アイドル楽曲派」を育てるための講習会です。

アイドルはあらゆるジャンルの楽曲を歌います。

だから楽曲派もあらゆるジャンルを聴くのです。

さらに最新の楽曲を取り入れて行くのが「王道」です。

この話から始めましょう。

 

 

 

80年代的アイドルを「王道」と言う人がいます。ビジュアル的にはそう見えるかもしれないですが、音楽的にはそうではありません。アイドルが誕生した70年代からずっと、このカテゴリーは時代のサウンドを数年遅れで取り込んできました。もちろん、現在では時代のサウンドと関係なく特定のジャンルを決めて、歌って踊るアイドルも存在しています。ですから、アイドルソングには、ディスコもあれば、シティポップもあるし、ラップやヘヴィメタルもある。そして K-POPもあるのです。ジャンルは問いません。つまり「アイドル楽曲派」を名乗るには、すべての音楽ジャンルを聴いておく必要があるのです。

 

 

 

 

すべてのジャンルを聴くは簡単ではありません。慣れが必要な音楽もあるからです。例えば、現在主流となったラップを取り入れた曲。時代のサウンドについていけない人は案外多いのです。私の場合、最初にアイドルから入って、のちにシティポップと呼ばれる音楽を聴いたり、MTVで洋楽にハマったり、そこで RUN DMC に衝撃を受けて HIPHOPなるカルチャーがあることを知ったり。徐々に音楽の聴き方を身につけて行くことができました。でも若い人たちは違うでしょ? いきなりどかーんと莫大な量の音楽があり、好きなものを好きなだけ聴ける環境がある。状況があまりにも違うのです。

 

 

音楽の聴き方を身につけるにしても、どこから聴いていいかわからない。かつて音楽誌は、新しい聴き手のガイドとなる存在でした。信用できるライターがいい音楽を薦めてくれる。読者はそう信じて「これがいい音楽なのか」と繰り返しその曲を聴きました。そして、次第に音楽の聴き方がわかるようになる。そんな時代でした。現在は販売部数も減少し、広告に依存した雑誌が多いため、ガイドの役割を期待するのは難しくなっています。読者の方を向いて書かれた文章は少ないのです。ネット上の文章も同じです。しかしその分、自分で聴いて判断できる時代です。無料でいくらでも音楽が聴けるのです。聴く能力を高めましょう。Youtube上にはあらゆるリストが存在しています。

 

 

 

 

 

音楽の文章を書いてるプロの人にも多いのです。いまの音楽について行けない人たちが。ロック専門で聴いてきて、その価値観だけで他のジャンルも語ってしまう。ラップの壁を越えられなかった人は、日本で本当に多いのです。お経のように聴こえるそうです。レコード会社の偉い人にも多いので、その影響がヒット曲にも現れていると感じます。メロディ中心でしか聴いて来なかったので、リズムが少しでも複雑になると拒絶反応を示す。こんなのはアイドルソングではないと言い出したり。

 

何度も言いますが、アイドルというジャンルは、ロックだけではありません。ハウスだってノイズだってなんでもあるのです。アイドルが誕生して以来、ずっとそうです。ジャンルが限定されたことはありません。じゃあ、どうすればラップが主流となった現代のポップスがわかるようになるか? ひたすら聴けばわかるようになります。わかるまで聴けばいいのです。年齢が上がると面倒くさがってやらないだろうことをやるのです。でも10年それをやれと言っても、ねえ? 目安となる目標を段階的に3つ用意しました。

 

 


 

 

現在の洋楽を聴きましょう。

➡︎ これは歌詞の意味がわからない曲を聴くという意味です。J-POPだと言葉の意味を考えてしまう。その歌詞に共感するか、しないかが重要になる。K-POPでもいいです。一旦言葉の意味を無視することで、バックに流れているサウンドに注目できたり、歌い手の声質、リズム感に注目できたりします。意識して注目するのです。しかし、K-POPだけだとそこに流れてるサウンドは割と均質です。なので、古い英米の音楽も聴いてください。

 

 

歌のない曲を聴きましょう。

➡︎ 最初から歌がない音楽を聴いてください。そんな曲を聴いて、何が楽しいのかわからないという人もいるでしょう。そこが重要です。あなたは、リズム、楽器の質感、サウンドの質感をあまり意識してこなかった。ボーカル中心で音楽を聴いてきたということです。歌がない曲を聴くことで、音楽の別の側面がはっきり見えてきます。歌を中心にして作られた曲は、歌の邪魔になるような音は基本的に排除されています。アイドルの楽曲であれば、歌うのに複雑なリズムを採用しないことも多いはず。なので歌のない曲を聴いて慣れるのです。この良さがわかるようになれば、ラップの面白さもわかります。ラップというのは声を楽器のように使う音楽なので。

 

 

 

もしかしたら「テクノや JAZZ は好きだけど、ラップはわからない」という人もいるでしょうか? それは「歌はこうあるべき」とか「アイドルはこうあるべき」という固定観念がある人かもしれません。80年代末、雑誌『ミュージックマガジン』創設者・中村とうよう先生は言いました。「みんなで歌うことができないラップは、大衆音楽(ポップス)とは言えない」と。現在ラップはメジャーな歌唱法になっています。「これはちょっと」というラップも中にはあるでしょう。HIPHOPのラッパーの中には「あんなのラップじゃない」と言う人がいるかもしれません。でも気にしない。言われてもいいんです。もうラップが誕生してから40年以上経っています。先人をリスペクトしつつ、どんどんチャレンジしてください。

 

歌のない曲で楽器の音を聴き分ける訓練をしましょう。例えば、少ない音数の JAZZやハウス、テクノだとやりやすい。それぞれの楽器の音を意識する。それぞれの音の質感を感じる。気持ちいいと感じる音なのか、そうでないのか。リズムの連なり、不連続を意識する。それらのことが瞬時に、自然にできるようになれば、音楽が立体的に見えて来ます。そうなれば「新しい音像」にも近づきます。

 

 

 

「新しい音像」にチャレンジしよう。

➡︎ 最終目標はここです。「音像」という言葉は私が考えた言葉ではありません。現代音楽を中心に60年代あたりから語られてきた言葉です。音が脳内でイメージ(像)に化けるのです。「ピンクのモーツァルト」とか言いますよね。クラシックの楽器は「音像」が感じやすい。例えば、ヴァイオリンは空気の振動が目に見える感じがしませんか? トランペットとか。かげろうのように空間がぼやけるように感じる。振動によって空気密度に濃淡ができる。極端な例を言えば、映画の中の爆発シーンとか。あれも「音像」と言っていいと思います。ですから、はっきり振動がある生の音をまず感じるのです。それが楽器から離れて室内空間のどのあたりで鳴っているかをイメージする。それが「音像」を体験することです。聴こえる、聴こえないのさらに先。音がどう見えるのか。楽曲の良さとは別に「音像」の良し悪しを判断するのです。

 

 

そして次に来るのが「新しい音像」です。振動がほとんど感じられないにも関わらず、脳内にイメージとして「音像」が現れる。現在のグローバルチャートに登場するヒット曲のほとんどは「新しい音像」の音楽です。いろんな楽器が鳴っていてもボーカルと干渉しません。混ざらないのです。楽器にしてもそうです。ボーカルが頭の中を浸すように歌いかけてきて、それを下で支えるようにベースやドラムが鳴っている。ピアノのような音は右で鳴っていることもあれば、それがボーカルの後ろを邪魔にならないように左に移動して行くこともある。頭の中の空間に、サウンドがどのようにデザインされて、どのように聴こえるかを感じるのです。

 

 

 

テクノロジーによって可能になった現在の「音像」が「新しい音像」です。PC上で波形に変換された音を編集して制作します。それが脳内に不思議な影響を与えている。クラシックの時代からあった「音像」が、楽器の音が振動を伴って室内空間で感じられたのに対して、「新しい音像」の振動は目に観えるものではなく、より脳の働きを使って「音像」を見せるものなのです。そのサウンドがライブ会場に開かれたときには、身体中がサウンドに浸されているように感じます。それが成功してるときにはとても気持ちいいのです。いろんなライブに行って、空間でどのようにサウンドが鳴っているか感じてください。

 

ライブに行くにはお金がかかると言うのであれば、こんな方法もあります。例えば、NETFLIXAmazonプライムで映画を観ていて、サウンドが画面から浮き上がって聴こえる経験はないでしょうか? アメリカのドラマでもそれをよく体験します。そういうサウンドでは、空撮の映像が立体的に見えたりもします。私の場合、ドラマ『メンタリスト』で最初にそれを感じました。また最近は映画のサウンドもいいものが多いです。映画『WEST SIDE STORY』では、会話中心のシーンではサウンドがスクリーンに収まっているのに、激しいダンスのシーンになると、サウンドが観客席にせり出してくる体験をしました。どんな映画でもいいです。映画のサウンドが空間のどのあたりで鳴っているか意識してみてください。

 

 

 

 

結局、いいサウンドを体験しているかに尽きるのです。料理と同じです。料理を極めようとする人たちは、まず美味しいと言われる料理を食べて回るはず。まず舌にいい料理を体験させる。美味しい料理を食べていると、不味い料理もわかるようになる。アイドルの運営さんや音響さんにもそれをやってほしいのです。いいサウンドを体験するのが上達の初歩なのです。違うジャンルの音楽を聴きに行き、どのようなサウンドが鳴っているか体験する。料理人が舌を育てるように、音楽に携わるものは耳を育てないといけないのです。