映画『アステロイド・シティ』の謎解き。10日ほど前にこの映画の謎解きをやると予告しました。時間が経って何を書くのか忘れたので、土曜日に再び観てきました。そして昨日、ネットが使えない中、テキストだけ打ち込んだ。サッカー観戦から戻ってきて、公開します。
この映画は、ある演劇の制作過程、もしくは舞台裏を追った、テレビのドキュメンタリー番組という設定でスタートします。ですが映画を観ていても、これが演劇の場面であるのか、ステージ以外の場所であるのか、いまいち判別がつきません。
演劇の舞台は、ネバダ州の砂漠ということになっています。そこに集った人たちが、会話し、未知との遭遇を体験し、また別れて行く。そんな感じです。
この映画は何を表現していたのか？ 映画そのものをテーマにしていたと私は感じました。まず砂漠での核実験があります。核兵器と言えば、原爆を２度も投下された日本です。日本に関連するワードが何度か登場していました。植木等のギャグまでありましたね。
また日本では、広瀬隆著『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』というベスト・セラーがありました。1950年代に世界中で人気を博した西部劇。その大人気スター、ジョン・ウェインが、撮影地であったネバダ州の砂漠で、核実験により被曝、ガンで亡くなったことを暴く書籍です。
あと、町山智浩さんが解説されているように、マリリン・モンローをモデルとした女優も登場します。映画トリビアがいっぱい盛られている。さらに、この映画は演劇をテーマにしたものでもあります。映画も、演劇も、同じように暗闇に２時間ですとか、見知らぬ同士が閉鎖空間に滞在して、何らかの楽しみを得る行為です。
ここから謎解きに入るわけですが、一番気になるのは何だったか？ 宇宙人が登場し、しかし、舞台裏でその着ぐるみを脱いだ俳優が、この宇宙人は隠喩であると言ったことです。宇宙人自ら「謎解き」があると証言したわけです。では、この宇宙人は何を象徴していたか？
宇宙人が来て、次の日から厳しい隔離が行われます。そうでしたね？ 情報統制まで行われ、登場人物はみな自由を奪われたわけです。もうわかりますよね、コロナ禍です。
この映画はコロナ禍で、アメリカが世界に誇る文化、映画が上映できなくなったことをテーマにしていました。コロナ禍とは何だったのか？ それは茶番だったのか？ いまを持って誰にもわからないのです。いかがですか？ このことがわかっているだけで、この映画がずいぶんわかりやすくなるはず。もう１回観てください。
最近上映されるアメリカ映画が、過剰な表現をするようになったと、ここで書いてきました。コロナ禍で映画上映ができず、サブスクの隆盛が起こったからでしょう。そんな時代が反映されていたのです。この映画の監督、ウェス・アンダーソンも、いつもよりもっとカラフルな映画を制作したわけです。映画館で何度も観たい、わたしたちにそう思わせてくれました。謎解きをさらに進めます。
隕石：アステロイド・シティの象徴であり魂
（アメリカにおける映画を象徴）
宇宙人：どこからともなく現れた COVID-19
隔離：コロナ禍でのロックダウン
亡くなった妻：コロナ禍の犠牲者？
目覚めたければ、眠れ？？？
「目覚めたければ、眠れ！」は何でしょうね。演劇や映画がテーマなので、暗闇に隔離されて鑑賞することを表現しているかもしれません。これは夢だ。これは創作なのだと。
コロナ禍の中で上映された映画『アネット』（2022年）では、冒頭で出演者とスパークスのメンバーが、街に繰り出し、はじめる時が来たと宣言します。そこから架空、映画に入って行くのです。あっそうだ。その前には「息すらも止めて、ご覧ください」がありましたね。「目覚めたければ、眠れ！」は、この言葉に対応してるかも。
映画『アネット』で印象的だった船上でのダンスシーン。『アステロイド・シティ』では、それを模したような、コロナ禍での砂漠のダンスシーンがありました。しかもそれを家族がモニターで観てる。劇場で観るのではなくモニター越しに観てる。これはネットでの映画鑑賞を表現したのでしょう。
例えば大林宣彦監督は映画の冒頭に『A MOVIE』と表示しました。それに対してレオス・カラックス監督は『A NET』と返したのかも知れません。
サブスクの隆盛で、映画関係者も映画館に観に行く意味を問い直します。その行為にはどんな価値があるのか？ もしかしたら女優と知り合えるかも・・・それは無理でも私書箱くらいは教えてくれる。こんな感じでどうでしょう？
