ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

愛読書は「共産主義者宣言」です。

日本で「共産党宣言」と呼ばれていた本です。マジですよ。私、この新訳本が出版された93年に購入して以来、何回かチャレンジしたにも関わらず数ページしか読めませんでした。挫折、挫折の連続です。ですから、大学があった高知で購入、就職で東京、今年に入って実家の京都、そして、ハノイと15年間ともに旅し続けてきたのです。はっきり言って、ハッタリで持ってきたんですよ。社会主義国に住むわけですからね。ところが、最近、とうとうハマッてしまいました!

共産主義者宣言

共産主義者宣言


最初は、装丁などデザインが気に入って買いました。今では有名な鈴木成一デザイン室です。この写真だと少しわかりずらいかも知れません。私の本にはきれいな帯もついています。手触りもいいんですよ。ですが、今回は中身に感動しました。いくつかピックアップしてみましょう。ブルジョア階級の説明は、、、簡単に「資本家」と言ってしまっていいのかな? わかりませんw


ブルジョア階級は、これまで尊敬すべきものとされ、畏敬の念をもって仰ぎ見られていたすべての職業からその後光を剥ぎ取った。医者、法律家、僧侶、詩人、学者を、ブルジョア階級のお雇い賃金労働者に変えた。ブルジョア階級は、家族関係からその情緒的なヴェールを引き剥がし、それを純粋な金銭関係に還元した』


ブルジョア階級は、世界市場の開拓を通して、あらゆる国々の生産と消費を国籍を超えたものとした。反動派の悲嘆を尻目に、ブルジョア階級は、産業の足元から民族的土台を切り崩していった。民族的な伝統産業は破壊され、なお日に日に破壊されている。それらの産業は新しい産業に駆逐され、これらの新たな産業の導入がすべての文明国民の死活問題となる。そうした産業はもはや国内産の原料ではなく、きわめて遠く離れた地域に産する原料を加工し、そしてその製品は、自国内においてばかりでなく、同時に世界のいたるところで消費される。国内の生産物で満足していた昔の欲望に代わって、遠く離れた国や風土の生産物によってしか満たされない新しい欲望が現れる。かつての地方的、一国的な自給自足と孤立に代わって、諸国民相互の全面的な交易、全面的な依存が現れる。そして、物質的生産におけると同じことが、精神的な生産にも起こる』


この本は1848年に出されています。イギリスの産業革命が1770年代。イギリス自由貿易政策の実施が1846年だから、その後くらいです。1923年ウォール街の大暴落よりずっと前の本ですよ。なのに、この内容。凄いですね。「新しい欲望」、私の耳に痛い言葉です。


例えば、日本語教室で生徒と話すと、ほとんどみんなベトナム料理しか食べたことがありません。そこで私が言うのです。「日本人はいろんな国の料理を食べています。最近ではベトナム料理も人気ですよ」。それがさもいいことであるかのようにです! ここに書かれてある「国内の生産物で満足していた昔の欲望に代わって、遠く離れた国や風土の生産物によってしか満たされない新しい欲望が現れる」、そのものですよ。最悪ですね。私のことを、これから「新しい欲望」と呼んでください。ベトナムの人たちはこの本について、どう思っているのでしょうか?