ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

今週末はいよいよ日本語能力試験。

9月からの3ヶ月間、日本語能力試験2級を受ける子たちの授業を受け持ちました。日本語能力試験は、「文字・語彙」100点(35分)、「聴解」100点(40分)、「読解・文法」200点(70分)と3つの試験があります。400点満点で60%、240点取れれば合格です。回答はすべて4択のマークシートです。確率的には全部同じ数字にマークすれば、400点の4分の1で100点は取れることになります。残り140点を実力で取ればいいのです。


ところが、9月末にあった模擬試験で生徒たちの成績は150点以下でした。つまり、試験までの2ヶ月間で100点アップさせる必要があったわけです。これはなかなか大変なことです。そこで、私は主任の先生に提案しました。2級クラスは週に3回授業があるのですが、それまでは毎回、「文字・語彙」「文法」「聴解(リスニング)」「読解(現代文)」という4冊のテキストを、まんべんなく少しずつやっていました。しかし、それでは間に合いません。そこで、週3回のうち2回を「文字・語彙」と「文法」の授業にしようと提案しました。


「読解」「聴解」は頑張っても短時間で成績を上げるのが難しいのです。みなさんも英語で考えてもらえればわかると思います。「リスニング」や「長文問題」で点数を短時間で上げるのは難しいですよね。でも、暗記で乗り切れる「語彙」「文法」に絞れば点数は上げられると考えたのです。それだけではありません。実は「聴解」「読解」でも、問題のポイントとなってくるのは、接続詞など「文法」の知識が問われていることが多いのです。というか、「文法」の知識があることを前提として問われている問題が多いのです。だから、重点的に「文字・語彙」と「文法」をがんばてもらうことにしたのです。


実は最初は週3回の授業すべてすることを提案されたのですが、英会話の授業と重なっており、教えることができませんでした。ですから、それら暗記関係の授業はベトナム人先生にお願いしました。主任の先生は私の提案をあっさり受け入れてくれました。私は「読解」と「聴解」を教えるわけですが、この2つを教えられるベトナム人先生を見つけるのは、難しいようです。そういう理由もあったからでしょう。


次の問題は生徒たちでした。「読解」のテキストにはなぜか、解答が書かれていました。初め、問題を解かせると生徒たちは必ず正解を口にしました。みんなの前で間違えるのが嫌だったようです。しかし、それでは困ります。みんなが正解するので、「どうすれば間違えないようになるか?」を教えて行くことができないからです。しょうがないので、問題と違う箇所を質問するようにしました。例えば、問題にはなっていない「それ」という言葉があったとします。『「それ」はここではなにを指しますか?』と聞いたりしたのです。生徒は答えられません。そこから授業をはじめました。もちろん、「ここで間違うことは恥ずかしくない」と繰り返し言いました。


生徒たちはなんというか、頑固な人たちでした。なかなか私の指示を聞いてくれません。例えば、「日本人は…」という文章があれば、必ずアンダーラインを引くように言いました。これは試験で問われることが本当に多いのです。しかし、誰もテキストにアンダーラインを引いてくれません。一旦は引いて、その後消している子すらいましたw さすがに、もう一度引けとは言えません。自分がわからなかった単語には、ちゃんとラインを引くのにです。その頑さは理解できませんでした。それでも、何度となく指示し続けました。日本語教師の仕事が、本当に根気の必要な仕事であることを知りました。でも、ここまではそれなりにスムーズに授業は進んでいたように思います。


ところがです、10月末に事件は起こりました。試験まであとひと月という時点です。ある生徒が友達を体験入学に連れて来たのです。主任の先生は喜びました。ですが、私はその体験入学の子と話してみて、危機感を覚えました。他の生徒よりレベルが低かったのです。生徒たちはこれまで勉強してきているので、2級が危ないレベルと言っても、それなりに日本語が話せる子たちでした。そこで、主任の先生に「あの子を入れるのは無理ですよ。テキストも最後の方で難しくなってきています」と進言しました。しかし、「大丈夫です。彼女たちは同じ大学の生徒ですから」という理由にもならないことを言ってきました。「知りませんよ」と言って、授業をはじめました。


やはり、彼女はまったく授業についてこれないようでした。そこで、その子を中心に授業を進めるハメになりました。ベテランの先生なら、もう少しうまくやられたのかも知れません。私には無理でした。「これは難しい問題だから、気にしないでね」と言うのが精一杯でした。他の子たちが勝手に私語をはじめました。もちろん、注意したのですが、彼女たちにしたら授業が進まないので納得はできなかったでしょう。完全にバランスが崩れました。次の週、最悪なことに、その体験入学の子と同じ大学の生徒3人が一緒に辞めてしまいました。それまでの授業のやり方にも不満があったのでしょう。


残った生徒たちは、それ以降、自分が間違えた箇所を質問して来るようになりました。自分の間違いと向き合うようになったのです。もしかしたら、生徒たちの間で、「あの子の前で間違いたくない」というような感情があったのかも知れません。残りのひと月は充実した授業をできたと思います。「読解」の問題をしてても、「文法」の実力が上がって来たことが感じられました。相当、がんばって来たのでしょう。最後から2回目の授業が終わった時点で、来週仕上げの授業ができるところまでテキストを終えました。最後の授業では試験の時間配分について、説明をするつもりでした。模擬試験で成績が悪かった理由として、最後まで問題ができなかったという話を聞いていたからです。


ところが、最後の授業の前日になって、主任の先生から『明日の授業は「文法」をします』と言われました。私は突然、休みにされたのです。まあ、「文法」の授業をすること自体は文句がないのですが、やはりガックリきました。しょうがないので、生徒に連絡して「時間配分」の方法を伝えようとしました。しかし、電話では説明が難しく伝えられませんでした。生徒は自信満々で「終わったら遊びに行きましょう」と言ってました。まあ、頼もしいと言えばそうなのですがw


でも、やはり不安です。主任の先生に「読解・文法」の試験について、メールで「時間配分」の方法を伝えようとしました。まず、後ろにある「文法」から解くこと。「文法」の問題は配点は高いのですが、知ってるか知らないかを問う、シンプルな問題です。過去の問題を解いたところ、私は25問ほどを6分で解くことができました。ですから、生徒は10分〜15分の間で問題を解くようにする。わからない問題は適当にマークして次に行く。迷わない。


そして、「読解」の問題を解く。大小5つほどの問題があるので、これは「時間配分」が難しい。例えば、最初の問題は一番長く、問題が7つほどあったりする。この場合、問題を読むことも含めて7問×2分(14分)を目安にする。そうすれば、「読解」は50分以内で終わることができる。試験時間は70分だから、全部終わった時点で5〜10分の見直し時間を取ることができる。この目安があるのとないのでは、落ち着きがまったく違ってくるはずだ。以上。


最後まであきらめないで問題を解くには、重要なアドバイスだと思うのですが、結局伝えることはできませんでした。なぜなら主任の先生は、私が書いたメールをまったく理解できなかったからです。正直、先生をやるには日本語の能力が相当足りないと思います。なぜか、試験の配点を送ってきました。がっかりです。記録のために書いておきました。生徒たちが試験に受かってくれることを祈っています。