ハノイの日本人

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作詞家 阿久悠と スター誕生! その5「マイケル・ジャクソンは日本起源である」

前回、阿久悠の「世界制覇」について書くと予告しました。我ながらぶち上げたもんです。しかし「非日常性のエンターテイメント」という手法は、世界にも例を見ない手法でした。手塚治虫アメリカ映画を二次元に落とし込むことで、ストーリーマンガや日本製のアニメを作り上げ、その世界を象徴する人物となりました。そして、阿久悠は都倉俊一と共に歌のアニメ化と本人が語るような手法を用いて新しい音楽を作ったのです。阿久悠はそのことでも評価されなければいけないはずです。


この手法が出来たことで、日本はアイドル王国になったと言えそうです。80年代については次回に書きますが、阿久悠=都倉俊一で作り上げた、山本リンダフィンガー5ピンクレディーを中心にした作品群以降も、この手法は活かされているのです。アイドル評論家の中森明夫は『AKB白熱論争』という本で、ピンクレディーはシステムだと語り、その手法を「どこへだって行ける、何にだってなれる」と説明しました。


◉作詞家 阿久悠と スター誕生! 番外編「阿久悠神話を解体したい人たち」
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20130531/1370014094



非日常性のエンターテイメントという手法は現在も通用しています。と言うか、いま再びブームが訪れているのです。現在、一番人気のあるアイドル ももいろクローバーZ は非日常性のエンターテイメントを用いたアイドルです。ももいろクローバー『行くぜ! 怪盗少女』には「♪ 制服 脱ぎ捨て 華麗に 変身! その名も 怪盗ももいろクローバー」という歌詞があります。これ以降、「どこへだって行ける、何にだってなれる」ももクロ が誕生したわけです。この曲の作詞、作曲、編曲した 前山田健一は、意識してこの手法を使っています。非日常性のエンターテイメントの継承者と言っていいでしょう。



◎1969年10月 ジャクソン5『 I want you back』でメジャーデビュー
◉1973年8月 フィンガー5『個人授業』発売
◉1978年6月 ピンクレディー『モンスター』発売
◉1979年5月 ピンクレディー『Kiss In The Dark』で全米デビュー
◎1979年8月 マイケル・ジャクソン、アルバム『Off The Wall』発売
◎1981年8月 MTV 放送開始
◎1982年11月 マイケル・ジャクソン、アルバム『Thriller』発売
◉1983年4月 東京ディズニーランド開園
◎1983年5月 モータウン25周年コンサートで、マイケルがムーンウォークを初披露
◎1986年9月 東京ディズニーランドに『キャプテンEO』オープン


マイケル・ジャクソンは海外で初めて非日常性のエンターテイメントを採用したアーチストではなかったか?という仮説を私は持ちました。上の阿久悠作品とマイケル・ジャクソンの年表を見てください。最初は全米で大ブームを巻き起こした ジャクソン5 を真似て、フィンガー5が誕生します。フィンガー5は日本で大人気でしたが、このときはマイケルが存在を知るまでは行かなかったでしょう。しかし、70年代後半の ピンクレディー・ブームは別です。なぜなら、彼女たちは全米デビューしているからです。


彼女たちの全米デビューは巨額の資金を投入したにも関わらず失敗したと言われています。しかし、アメリカの3大ネットワーク NBC で60分のバラエティ番組『ピンクレディー アンド ジェフ』が放送されていたこともあり、知名度はそれなりにありました。例えば、ジェリーフィッシュ というサンフランシスコのバンドが来日したとき、ダウンタウンの番組で『S・O・S』のカヴァーを披露しています。ボーカリストは子供の頃、ピンクレディーのファンだったのです。



マイケル・ジャクソン は 1979年に発売したアルバム『Off The Wall』からクインシー・ジョーンズと組み、大ヒットを連発します。しかし、名曲『Rock With You』でも華麗なステップは見せていますが、まだ R&Bシンガーの範疇にいます。雰囲気が変わるのは2年後、次のアルバム『Thriller』からでした。このアルバムは非日常のエンターテイメント路線を採用したものだったのです。





まあ、普通は 1981年にスタートした MTV の影響だって言われるんですよね。ドラマチックな PV を作るために、ストーリー性のある歌詞を書いたと。でも、マイケルが ピンクレディー を面白がったという想像は楽しくないですか? あってもおかしくない話だと思うんですけどね。マイケルもクインシーも ピンクレディーが人気のあった西海岸に住んでいたのですし。どちらにしても、マイケル・ジャクソン は非日常性のエンターテイメントの継承者と言えるのではないでしょうか?