ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

渋谷系とデータベース消費5。

前回、佐々木敦著『ニッポンの音楽』の裏テーマが「YMO最高!」だったことが判明しました。テクノ方面からの評価はこれまでにも当然されてきたでしょうけど、ロック、ポップス全体を考えても大きな影響があったと示されたわけです。YMOなのか・・・



渋谷系とデータベース消費1〜4
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20160618/1466189435
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20160621/1466466582
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20160626/1466906658
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20160701/1467326435


YMO GO HOME

YMO GO HOME


ブームのときに小学生だった私のYMOのイメージは体育祭ですね。『RYDEEN』をバックに組体操をやらされました。この曲を聴くと体育教師の怒鳴り声が聞こえる、そんな期間がずいぶん長くありました。だから、YMOをちゃんと聴くようになったのもピチカートのミニアルバム『超音速のピチカート・ファイブ』(1991)を聴いてからです。これに収録された『サンキュー』には高橋幸宏のドラムがサンプリングして使われました。たしか小西さん自身の発言でそれを知ったはず。




YMOに大きな影響を受けたDJでありアーチストのテイ・トウワがいます。1990年、彼がメンバーだったDeee-Lite『Groove In The Heart』が全米4位になる大ヒットを記録。そして、アルバム収録曲『Good Beat』には、高橋幸宏のドラムがサンプリングして使われていたのです。それはArchie Bell & The Drellsのヒット曲をカヴァーしたYMO『Tighten up』から取られたものでした。それを聴いてテンションが上がった小西さんは自らの曲でも同じネタを使用したようです。





私が90年前後のピチカート・ファイヴに思い入れがあるのは、HIPHOPの聴き方を教えてもらったからです。Run DMC『Walk This Way』でHIPHOPに衝撃を受けたものの、今一つ入り込めない感じがありました。今から思うと、それはサウンドの質感にまで耳が届いていなかったからなんですけど。そして、そこに導いてくれたのがピチカートでした。それ以降は例えばGang Starrのかっこよさもわかるようになったわけです。でも、そうか。ポストモダン化した音楽が次々と出現したということか。そして、渋谷系YMOチルドレンだった・・・・



ポストモダン化は大きな物語の衰退を意味する。大きな物語の衰退は、現実認識の多様化を意味する。したがって、ポストモダンでは、多くの物語が、現実に依拠するのではなく、ポップカルチャーの記憶から形成される人工環境に依拠することになる。日本ではその変化は、ライトノベルの台頭にもっともわかりやすく現れている。いま日本の小説を支える想像力の環境は、近代的な現実を信じる自然主義的リアリズムと、近代的な現実から決別したまんが・アニメ的リアリズムに大きく分かれつつある。そして今後、後者の勢力は、拡大することはあっても縮小することはないと思われる。』(『ゲーム的リアリズムの誕生』P73)


東さんは上のようにポストモダンにおける物語のあり方について書かれています。「現実に依拠するのではなく、ポップカルチャーの記憶から形成される人工環境に依拠」して制作するというのは、音楽でも行われていることですね。佐々木さんはYMOを題材に音楽のポストモダン化について書かれていることがわかりました。



そして、今回のテーマは『キャラクターで売れてくる国』です。佐々木敦『ニッポンの音楽』にはYMOのメンバー細野晴臣の以下の発言が引用されています(『THE ENDLESS TALKING 細野晴臣インタビュー集』より)。


『細野(前略)「ライディーン」とかあのころのYMOは、マニュアルさえあれば、誰でもできるというスタイルだったんです。それだけにコピーする意味がないというか(笑)、音楽的な影響は日本では大きくなかった。キャラクターで売れてくる国だな、という感想を持ったことがありますね。最初は顔を隠して、匿名性を徹底してやろうと思っていた意志が崩されて、一人ひとりキャラクターとして扱われだして、どうしても顔が出ていっちゃう。逆に、僕たちのもくろみは外国で成功したと思うんです。匿名性という意味でも、音楽的な意味でも、ディテールに至るまでね。』


でも、細野さんがキャラ立ちを考えてなかったとは思えないんですよね。テクノカットだったり、人民服だったり、オリエンタリズムだったり。アメリカで勝負する為に、あらゆるものを動員したんでしょう。結果、日本では破格のブームになってしまった。私はピンクレディーの影響も大きいと思うんですよ。変身するアイドル。阿久悠さんの非日常のエンターテイメント。東さん、大塚英志さんの言葉で言えば「まんが・アニメ的リアリズム」に依拠したエンタメなのか。


ピンクレディーが宇宙人と恋愛する。ピンクレディープロ野球のピッチャーになって王さんと対決する。ピンクレディーがモンスターと恋愛する。あっ、wikiを見たらYMOが結成初期のライブで『ウォンテッド』を演奏したと書かれてあった。というわけで、現在のアイドルシーンにまで繋がる話だったわけです。