ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

山下達郎の規模の話。

山下達郎さんがこの前のライブで話されたことについて考えてました。達郎さんのライブはドームでもやらず、海外でもやらず、79年からずーっと数千人規模の会場で行われて来たそうです。そう言えば、ゲンロンでも東浩紀さん、黒瀬陽平さんが規模についての話をされていたことを思い出し、また文字化してみました(45分あたりから)。規模が大きくなり、わかりやすさに流れてしまい文化が壊れるという話です。黒瀬さんが話された「密室」の話は以下のリンク先で文字化しています。


TATSURO YAMASHITA on BRASS?山下達郎作品集 ブラスアレンジ?

TATSURO YAMASHITA on BRASS?山下達郎作品集 ブラスアレンジ?



◉ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校 第3期の開講のおしらせ(2017/1/10)
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/20170110/1483979570


黒瀬陽平:東さんがやろうとしてる哲学や思想、ある程度ちゃんとした活字があって、思弁的なものができる、そういうものの日本における適正の市場規模ってどのくらいだと思ってますか?
東浩紀:「ゲンロン友の会」はいま2000人なんだけど、あれは僕の感じだと3000人か4000人はいけると思うんだよね。
黒瀬:ああ、それくらいの、5000人以下ってことですよね。
東:5000人以下だね。会員とかになるのは。でも『ゲンロン』という雑誌で言えば、プラス5000人くらいまでは行ってもおかしくない。だから1万だよね。
黒瀬:どんなにブレイクしても1万。でもそんなもんだと思いますよね。
東:ぜんぜんそれは変なことではなくってさ、僕は『エヴァンゲリオン』が放送直後にさ、庵野秀明にインタビューしてるんだよね。このインタビューって2時間ぐらいやったのにさ、『スタジオ・ボイス』で半ページくらいにしかなってないんだよ。さらに、これは凄く長くインタビューしたので、8ページくらいで再構成するというのが、96年末の『スタジオ・ボイス』でやるはずだったんだけど、それが方針転換で萌え方向に振れて、綾波レイの名場面集に・・・
黒瀬:えっ!『アニメージュ』じゃないですか?
東:『スタジオ・ボイス』。


STUDIO VOICE vol.410

STUDIO VOICE vol.410


黒瀬:『スタジオ・ボイス』が萌え方向に振るということがあるんですか?
東:だから、いま言う萌えとはちょっと違うんだけど、綾波レイの名ゼリフをばんばん配置するみたいな、くだらない方針転換をしたことで・・・
黒瀬:(笑い)それは悲しいですね。
東:それで俺の8ページ再構成は飛んだんだよ。(笑いながら)それはこの世界にあるんだよ。俺がデータで持ってるんだよ。
黒瀬:(大笑い)
東:俺がインタビュアーで庵野秀明が2時間それに答えてるんだ。いいだろ?
黒瀬:それは凄いですね(笑い)。
東:そのとき凄く印象に残っているのは、庵野さんはこう言ったわけ。「僕たちの顧客は2万です。レーザーディスクが2万部売れたらそれでいいと思って作ってます」と。
黒瀬:おおーなるほど。うん。うん。
東:「結果的に、今回はもうちょっと売れそうなんで、うれしいですね」みたいな。だから、その段階のインタビューなんだよ。放送直後の4月くらい。で、その後化けていくんだけどさ。僕は「2万」という数を凄い覚えてて。でもさ、最近宮台さんが凄く話題にしてるんだけど、ルソーが民主主義の理想だと言ったジュネーブの市民の数がだいたい2万から3万なんだよ。
黒瀬:(笑い)
東:だから、ここら辺なんだよ。
黒瀬:(笑いながら)オタクのハードコアの数と民主主義の理想の適正人数が一緒。
東:だから人類は2万から3万で行くべきなんですよ。
黒瀬:(笑いながら)2万から3万のユニットで行くべきなんだ。
東:これは絶対的な真実だと思うんだよ。まったく別の例で言うと、これは小学校の校区と一緒なんだよ。
黒瀬:だから、宮台さんの世田谷主義とどんどん近くなる。
東:だから我々がコミュニティだと認識するマックスな数は2、3万で、この数を超えて行くと、いろんな物が壊れて行くんだよね。
黒瀬:そうですね。
東:2、3万の数で考えて、それを維持して行くというのが、文化的な活動をする上では、結構大事なんじゃないかな。もちろん、規模って大きいことだから、やっぱり数が大きくなるとお金も入るし、商品が売れるのは好ましいことなんだけど。ただ、重要なのは、この2、3万のコミュニティをどう維持して行くかということを考えて行かないと、表現は拡散して、ダメになって行く。
黒瀬:そうですね。
東:そういう意味で言うと、日本も文学にしても芸術にしても、きっとよかった時代には2、3万のコミュニティがあって、その中に作家もいて、ギャラリストもいて、コレクターもいて。
黒瀬:それはオールジャンルで2、3万ってことですか?
東:いや、違う違う。各ジャンル。
黒瀬:そうですよね。
東:各ジャンルで2、3万の人数をある段階から大切にしなくなって、壊れて行くことによって、今に至ってるんじゃないか?
黒瀬:うん。うん。そういう時代の中で、例えば『君の名は。』とか『シン・ゴジラ』みたいな異常なヒットが出ると、それに目が行っちゃうわけですよね。
東:『君の名は。』とか『シン・ゴジラ』の問題に関して言えば・・・ 『シン・ゴジラ』はどうのこうの言っても大丈夫と言うか・・・庵野さんを中心としたオタク第一世代のコミュニティって凄く強いから。彼らはあれで動じないと思うんだよね。彼らが動じて崩壊してるとすれば、初期の『エヴァンゲリオン』のときで。あれをくぐり抜けてるし、『シン・ゴジラ』ごときでは動じない。彼らが創りたいものは揺るがないし、観てる顧客層も揺るがない。
黒瀬:たしかに。
東:『君の名は。』はダメだと思う。あれは規模がでかいし。新海さんも別に何かを持ってるわけでもないし。あの波がどこにたどり着くか、僕もぜんぜんわかんないけど。日本のアニメ界も変わるし。映画産業も変わるし。あれは大変なことだよね。あの影響は10年間くらい及ぼすんじゃない? 凄い現象ですよ、『君の名は。』は。


ここから『君の名は。』では、成長を就職と結婚としか表現されていなくて、それを日本で2000万人が観てるというのは、ほとんど日本沈没ですという話されています。動画で観てください。