私が建築に興味を持ち出したのは、「音像」というような現代の音について考えるようになったからだと思います。サウンドを立体的に捉えるようになったことと連動してる気がします。ホールとか、ライブハウスの空間がどのようであるかを常に気にするようになりました。今年観たライブでは、5月に大阪NHKホールで観たJuice=Juiceが最高でした。最高の音と素晴らしい歌唱で、いい「音像」を聴かせろやと思ってる人たちには、ぜひ体験して欲しいグループです。中野サンプラザで観たMaison book girl も素晴らしかった。やっぱり、打ち込みの方が響かせやすいのは事実でしょう。
そう言えば、文字起こし前回分で、細野さんがモーニング娘。のサウンドを作ってる人はゲーム音楽を作ってるような人たちが、わからないまま作ってるのではと推測されていました。つんくさんは2012年から K-POPやきゃりーぱみゅぱみゅに刺激を受けて、EDM路線に行ってるんですよね。2012年と言えば『ピョコピョコウルトラ』がありました。確かにこれはゲームミュージックっぽいw このことを言ってたのか。
テイ:ですから、倍音を分離させたりとか。位相をいじって。1回逆相だけ聴いて。そういうマスタリング・スタジオでしか見なかったことが、プリセットで・・・
細野:ミュージシャンがやりだした(笑)。
テイ:そういうことなんです。だから、僕は、言い訳なんですけど、砂原くんみたいにならないように・・・
細野:ならないように。(一同笑い)
テイ:7年ぶりのアルバムとかね(笑)。気をつけて。Ozoneとかのプリセット聴いて。真面目な話すると、要するに、無駄な倍音とかが出てる場合は、プリセットかけたときにガラッと変わるわけです。どのプリセットしてもあんまり変わらなくなったら、まりんに渡していいかなって。
細野、砂原:なるほどね。
細野:すげー専門的な話だな。(一同笑い)
テイ:全部カットでもいいですよ。わかる人いるかな?
細野:いないと思うね(笑)。
砂原:でも、言葉にはしずらいんですけど、さっきもグローバルって言葉で言いましたけど、世界中でそのことをぼんやり気にしてやってるんですよね。
細野:まだぼんやりしてるんだよね。でも、アメリカの音楽産業はぼんやりしてないんだよ。凄い確信的にやってるじゃん。
砂原:ああ、なるほど、なるほど。
細野:それで僕はテイラー・スウィフトとかって言ってるんだよね。
テイ:ファレルとかこういう話できそうですよね。
細野:ファレルは凄いな。もうなんかこう大先生になっちゃった(笑)。
テイ:そうですね。あんなんになるとは思ってなかったですね。
細野:だから、僕にとってはテイくんもまりんも大先生なんだ。
テイ、砂原:いやいや(笑)。
テイ:細野さんの音楽を聴いてやってきたつもりなんですから。
細野:もう71歳ですから。49歳?まだ。
砂原:そうなんです。
細野:若い! テイくんはいくつ?
テイ:54、妻子持ちです(笑)。
砂原:でも YMOを聴いてた世代でも下の方なんです。それでももう50歳。
細野:時間が経ったね。
テイ:僕よりも上の人も多いもんね。
細野:こういう歳になってこういうことをやるとは思わなかったな。自分で。
テイ:正直、細野さんここ10年以上BOOGIEとか、どこでしたっけ? 青山の近くでライブを拝見したりして。「楽しいな、でも、もう打ち込みは聴けないな」とか思って。
細野:それで観にこなくなったんだね(笑)。
テイ:そんなことないです(笑)。
砂原:僕、細野さんの今やってる音を、演奏とか音楽としても普通に聴くんですけど、それより音像を凄く気にしてる。
テイ:そう、そう。
細野:恐ろしいね(笑)。
テイ:ああ、何やってるのかなーとか。
細野:僕も今は人のやってるのをそうやって聴いてるんだよね。音像を聴いてるんだ。
砂原:はい、はい。
テイ:やっぱ音いいですね。『HoSoNoVa』とか、あの辺の。
砂原:全部いいですよ。
細野:そうですか? でも、僕にとっては前時代の音なんで。やり直したい。マスタリングだけでもね。
砂原:ああ、今それだけでも結構変わりますからね。
細野:そうなんだよ。ただ、僕はポップ・ミュージックのグローバル・サウンドを目指してるんじゃない。「グローバルの先に何があるんだろう?」って考えてたわけ。それはユニバーサル・サウンドって言うんだ。(一同笑い)
細野:それは凄い可能性があるわけ。それは生でもいいし。
砂原:そうですよね。
細野:独自の音像、今の音像に共通したものを拡張していくと、ユニバーサル・サウンドができる。
テイ:生の場合って、撮り音も大事ですか。いっとき、Lo-Fiが流行ったときって、適当に録っておいて、あとでプラグインでどうにでもなるって時期があったじゃないですか。
細野:プラグインは限界だね。
テイ:撮り大事ですよね。
砂原:全行程がその方向に向いてるのが理想なんですよ。
細野:そう、そう。昔は暗中模索が多かったの。こんなのができちゃったなとか、こんないいのができたとかね。たまたまできたりして。今は音像の理想が先にあるわけだよね。それを目的に作っていくわけだから。最初から音像のソフトを入れてやってるわけだよね。
砂原:はい。抜いたり。外したりしながら・・・
細野:そう、そう(笑)。聴き比べしたりして。
テイ:やってますね。
細野:そこら辺は今のミュージシャンが変わってきた。日本もグローバルを取り入れてると言うかね。徐々にね。そうじゃない音楽は「あれ?」って思っちゃう。
砂原:そうなんですよ。どんなにリズムかっこよかっても、歌がうまくても、そこがダメだと全然面白くないってなっちゃう。
細野:やっぱりね(笑)。
砂原:そこがよかったらハードロックでも聴けるんじゃないかって感じなんですよ。
細野:そう、そう。本当。おんなじ! なんでも今聴いてるの。つい数ヶ月前まで何にも聴かなかったのに(笑)。
テイ:凄いですね。その辺の細野さんのダイナミック・レンジと言うか。
細野:こういうことは時々起こるよね。20年に1回・・・10年に1回起こるよ。
テイ:僕1回、細野さんにもお伝えしたことがあると思うんですけど。最初に出会った頃の手前くらい。僕はニューヨークにいたんで。細野さんは The Orb とか、イギリス、もしくはサンフランシスコの、アンビエント系4つ打ちの人たちと行かれたじゃないですか。
細野:そうだね。
テイ:そのときが一番近いようで遠い気がした。でも今聴くと・・・
細野:どうなの? 近いの遠いのどっち?
テイ:いいなって思う。『オムニ・サイト・シーイング』とか『MEDICINE COMPILATION』とかもかっこいいなと思って。あのときは僕、黒人以外よくないって思ってたんで。(一同笑い)
テイ:ニューヨークにいたんで。ア・トライブ・コールド・クエストとかと一緒にいたんで。
細野:そうか、そうか。
テイ:黒人の作る音楽以外、全部白っちいなーとか思ってたんですよ。
細野:じゃあ僕の場合は、黄色っちい。
テイ:よくわかんないなーと思ったんですけど。今よりは。ワンアンドオンリーですよね。
砂原:あの頃まだ、都市が音楽を鳴らしてる感じはありましたけど・・・
テイ:そう、そう、そう。
砂原:今はだいぶ減ってきて・・・
細野:都市じゃないね。
砂原:ええ。
テイ:そのユニバーサル・サウンドのことで言うと。
砂原:インターネットでこういうコミューンがあって、ここにいるヤツはこんな音出してる。それは東京に住んでいても、シスコに住んでいても一緒だとかそんな感じですよね。
テイ:そうだね。
細野:うん、うん。
テイ:かけます?
砂原:僕じゃあ1個持ってきたの。そんなに新しくないんですけど、音像の話してたんで、これはちょっといいかなって。
細野:楽しみだな。
砂原:音像でしかない。(どの曲かわかりませんでした。)
細野:それだけで聴けるからね。あと歌がうまいよね、連中。こういうの好きだよ。
テイ:まさに細野さんの『肝炎』に入ってるような音が後ろで鳴ってるね。
細野:ああ親しみがあるね。
テイ:横尾さんとやった、『コチン・ムーン』にビートを乗っけただけみたいな。(一同笑い)
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砂原:まあ音像の話だったんで、そんなに新しくはないですけど。2015年とかだったんで。
細野:まあその頃からあるよね。
砂原:これはなんて読むんだろ? バイドード? あのリカルド・ヴィラボロスのなんですけどね。
テイ:ああ、好き好き。去年、LAかなんかでかかってて買ったら、その人だった。
砂原:音像楽しいなってだけなんですけど。
テイ:でも、いい曲は書かなさそうだよね。
砂原:そうだね(笑)。
細野:最近メロディーとか、和音って関係ないじゃない。これはデザインかな。
テイ:『HOSONO HOUSE』って全部曲がいいじゃないですか?
細野:これが難しい。メロディーと和音があるんで(笑)。
砂原:それをちょっと間引いて。ちょっとぼやかせたりして。半無意識で聴くとそれがわかるみたいな感じ。
細野:(笑いながら)難しいこと言うな。
テイ:凄いね。言うのは簡単だけど。
砂原:そうなんですよ。なんて言うんですか、メロディーとコードとかがはっきりしてると、予測がついたりするじゃないですか?
細野:そりゃしょうがないよ。
砂原:その予測をある程度なんとかわかんなくするために音を抜いて行ったりして。
テイ:言うのは簡単だけど。
砂原:言うのは簡単だけど。
細野:それは今回できないかもな。
砂原:僕そういうのをやりたいと思ってるんです。まだやれてないですけど。
テイ:僕、まりんとも言うかな。音符的というか、音符が読み書きできない人だからかもしれないですけど、音符っぽすぎるとそういうのありますよね。
砂原:あります、あります。譜面っぽいというか。
細野:すごくわかる。
テイ:譜面的に次、展開くるの新しいとか。聴いててわかっちゃうから。比較は難しいけど、絵を描く五木田くんとも話すんですけど。2次元的なことと譜面的なことは近いのかなと思って。僕らの話してること、もうちょっとサウンド、ソニック・スカルプチャー的なことを言ってるのかなと。
細野:なるほど。
テイ:前に出てくる、出てこないとか。それはもちろん歌詞とかと渾然一体となってですけど。どっちがいいとかじゃなくて。
細野:いまどきの音楽はそういうことだよね。メロディーとか旋律から解放されてるから。楽譜使ってないからね(笑)。
テイ:逆にサウンド・デザイン的にいまいちだけど、曲はいいのになってときには、音符的にいいのにな・・・
砂原:はい、ありますね。
テイ:音符的にいいねとか言って。(一同笑い)
細野:楽器もやらないの?
テイ:僕はやらないですけど、まりんは最近シンベ。
砂原:でも、弾こうと思って弾いたわけじゃない(笑)。誰もいないんでやってます。
細野:凝り性だもんね、まりんは。
砂原:そうでもないんですけどね。
テイ:META FIVE のときにはたまたま弾く人が誰もいなかったんで。
細野:テイくんなんかかけてよ。
テイ:毎回たぶん細野さんとこにくるとJBをかけてると思うんですけど。昨日届いたやつ、リマスター物を聴きましょうか。勝手にリマスター、勝手にエクステンデット。最近、アナログ盤、針細いじゃないですか。あのあとカートリッジに這ってる4本の線とかわかりますか?
砂原:わかります。なんか線がありますよね。
テイ:リード線って言うんですけど。すっごい細いんですよ。それがパンパンになるくらいぶっといヤツが売ってて。それに替えたら中域から、スネアの低いとこから、タムの胴鳴りとか。このレコードはそれほどでもないんですけど。気持ち良かったりする。
砂原:あそこ気にしたことなかった気がする。
テイ:でしょ? それ五木田くんが気にして。
細野:オーディオマニアの世界だね。
砂原:いつも細い線だなーとは思って見てましたけど。そうか、そうか。
細野:太いほうがいいのか。
テイ:たぶん。それでまた聴きなおしたりとかして。
細野:JBの映画を観たんだけど、数年前。若い頃のレコーディングの風景が出てきて、ラッパの人に注意するんだよね、JBが。お前のやってるのは違う。ラッパもドラムなんだってセリフがあって。
砂原:なんか生なんですけど、実は全部パーツっぽいんですよね。
テイ:パターンだけでできてる。
細野:そう。パターンだけでできてる。
砂原:打ち込みっぽいですよね。
細野:オークランドとかの方でタワーオブパワー(聞き取れない)それで思い出したけど、スライってすごい音像が独特。今のグローバルっぽいの聴いてると、びっくりする。
砂原:どんな風に?
細野:なんだろう、独自の。
砂原:オリジナリティが。帰って聴いてみよ。
細野:たぶん自分でめちゃくちゃやってるんだろうけど。エンジニアがやっちゃダメって言うのをやってる。それが面白いんだよな。
砂原:それはやりたくなる。ダメと言われると。
テイ:ドンカマを使ったのは結構早いんじゃないですか?
細野:最初だろうね。
テイ:ああいうファンクの人で。エレクトーンの人とかはいましたけど。
細野:(笑いながら)エレクトーンはいたね。それで思い出すんだけど、当時、スライの『FRESH』が出る頃、70年代だよね。ティンパンアレー・・・はっぴいえんど終わった後だっけな? ギタリストの鈴木茂と、ビンテージレコードばっかり聴いてたんだよ。ガーシュインとか。
砂原:60年代とかですか?もっと前の。
細野:もっと前。戦前とか。古いレコード聴き漁ってたわけ。二人で。あるとき茂が、「このままで僕たち大丈夫かな?」って言うんだよね(笑)。
砂原:帰って来れなくなる不安で。
細野:そう、そう。一年ほど続けてたから。そのときラジオで『FRESH』がかかったわけ。あのドンカマのね。
砂原:はい、はい。
細野:うわーっと思って。今と似てるんだ。
砂原:目が覚めた。
テイ:今回、細野さんがグローバル・サウンドに目覚めたきっかけはその作ってて、『HOSONO HOUSE』を打ち込んで聞き返して、なんか違うなって思ったんですか?
細野:昔の音源使ってて、凄い苦労したから。加工に凄い時間がかかって苦労したから。こんなことやってられないからやめたの。で、今入れ直してる。だから、古い感じのも入ってるし、変なアルバムになっちゃう。メロディーもあるし。
テイ:打ち込みもあって。生楽器も弾かれてます?
細野:生もやってる。
テイ、砂原:全然想像がつかない。
細野:だから僕もわかんない。