ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

劇団マームとジプシーを観た話。

 

もっと早く書きたかった。でも、どう書いていいかわからなかった。藤田貴大が主宰する劇団「マームとジプシー」の話です。昨年、香川県にある四国学院大学で『BEACH CYCLE DELAY』という3部作の中の『DELAY』を観ることができました。素晴らしかったです。私が観たかったのはこの作品だとわかりました。

 

 

2020年の年末にここで発表した「アイドルソングBEST10」で1位に選んだのが、その年解散した楽曲派アイドル sora tob sakana のラストライブと、もう一つ、声優ユニットイヤホンズの『記憶』でした。この作品は口ロロの三浦康嗣がプロデュースを手がけています。初めてその作品を聴いたときに直感したんです。これはマームとジプシーにオマージュを捧げたものだと。

 

マームとジプシーを最初に観たのは WOWOWでした。今日マチ子のマンガを原作にした『cocoon』が放送されていたのです。戦時中の沖縄、ひめゆり学徒隊をテーマにした作品でした。いまもそうですが、私は演劇に慣れてるわけではありません。どちらかと言うと当時はセリフの話し方が苦手だと思っていました。しかし、これは違った。リズミカルなセリフと、そのリズムに合わせて動く俳優たちが強烈に印象に残りました。それ以来、ずっとその劇団を観たいと思っていましたが、なかなかチャンスが訪れなかった。演劇に力を入れる四国学院大学で、やっと観ることができました。

 

素晴らしかった。感動しました。でも何がどう凄いのかわからなかった。若者同士の割と日常的な会話がずっと続きます。難しい話ではありません。バイトの話です。でも個人的な理由で少し混乱もしました。書くのに時間がかかったのです。

 

先月、沖縄に新しくできた那覇市文化芸術劇場なはーとで、藤田貴大の新作『Light house』が公開されました。そのタイトルも含めて、これは観に行くしかないと思ったわけです。それは『DELAY』のラストと繋がる作品のようにも観えました。かなり過剰な内容、正直、私は頭が疲労して最後の方は観てはいるが意識は飛んでる感じで。食卓で「全部乗せは美味しい」というセリフがありましたが、そのような意図もあったかもしれません。これから何度も作品を上演する中で、暗闇の中での「希望」を見出そうとしているのだと思います。また観たいです。東京では今日、明日まで、観れますよ。

 

 

この舞台を観て、やっと『DELAY』のどこに驚いたかがはっきりしました。マームとジプシーの演劇は、音楽を聴くようにストーリーを観せます。リズミカルに語られるセリフを音楽のように聴くのです。同時に初見でセリフの意味まで聞き取ろうとします。物語を観てるのだから当然と言えば当然です。しかし、困ったことにセリフは必ずしもその一つ一つに意味を有していないのです。心地よい言葉のリズムの反復の中で次第に意味が浮かび上がってくる。難しい話をしてるわけでもないのに、やたら頭が疲労するんです。振り回されているのです。普段使わないような頭の使い方をしてるのでしょう。『Lighthouse』において、それは食事にまつわる会話。それ自体は楽しい会話です。

 

『DELAY』では脳の疲労が極限まで行きついた先で、解放が待っていました。「パッカーん!」と蓮の花が開いたような感じ。これはヤバい。クセになる。サッカーで相手に攻め込まれながら、我慢して我慢した最後に反撃してゴーーール!!!みたいな感じ。藤田さんの場合はレイヴにハマった経験があるのかも。音楽ファンにはぜひ体験して欲しい。最後に、2020年のベスト、もう一つの sora tob sakana『Lighthouse』を。