ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

映画『さかなのこ』を観た。

 

 

 

沖田修一監督の映画『さかなのこ』を観てきました。さかなクンの自伝が原作の映画ですが、主演が女優「のん」ということで話題になっています。とても面白かった。監督の名前をどこかで聞いたことがあると思ったのですが、映画『横道世之介』の監督だそうです。あの映画はどこがどう面白いとは説明しにくいのですが、不思議に印象に残る作品でした。この『さかなのこ』もそうです。

 

 

この映画では、井川遥が演じるお母さんの存在がかなり大きいのです。お母さんはお魚のことばかり考えているミー坊(さかなクン)を完全に肯定します。しかし、お父さんはそうではありません。はっきりと言葉にはされていませんが、両親の離婚はミー坊に対する教育方針の違いが原因のようです。そう考えると、かなり激しい映画なのだとわかります。好きなことだけで生きて行くのは、やはり過激なことなのです。それでも監督はこの映画をファンタジーにしませんでした。

 

 

 

ミー坊の人生は苦難の連続です。仕事では失敗してばかり。職を転々とするのです。そう言えば「髪結の亭主」が出てきますよね。さりげなくですが、ミー坊が一人暮らしをするアパートの隣に美容室があって、その外でずっとタバコを吸ってる男性がいるのです。美容室の営業が終わると中に呼び込まれる。人間の価値を労働力やお金を稼ぐ能力だけで計らない。そういう価値観が随所に刻まれているのです。

 

 

以前私は、アニメやアイドルの文章で「行き過ぎた資本主義をどのように止めるか?」という難題を提示し、そのまま置いてきました。何らかの糸口を見出すための書籍を買ってはいるものの、まだ積んだままです。

 

 

 

そんなとき、まったく思いもしなかった方向から、資本主義を逆回転させるような出来事が起きました。それはもちろん COVID-19という感染症です。グローバリズムは一旦休止。世界各国は国境を封鎖し、その病気と過剰に取り組んだのです。経済活動は明確にスローダウンしました。

 

 

それだけではありません。今年に入って東西冷戦が再熱します。プーチン大統領のロシアが、隣国ウクライナに侵攻。アメリカを中心にしたNATO諸国はウクライナを支援することで戦争に加担。アメリカ側の諸国と、ロシア、中国を中心とした非アメリカ側諸国とに世界は分断されたのです。

 

資本主義に敗北したかのように見えた社会主義国が新たな姿で力を示し始めました。世界は大きく2つに分断され、アメリカの覇権は大きく揺らいでいます。大きな時代の分岐点です。「行き過ぎた資本主義」は、このような形でスローダウンしたのです。

 

もちろん、それは私たちが望む世界ではありません。ロシアのウクライナ侵攻は酷い行いです。そして、武器を売るためにその状況を作り出したアメリカも非難されるべきです。これは「行き過ぎた資本主義」が作り出した戦争と言ってもいいはず。アニメ『攻殻機動隊SAC_2045』の言葉で言えば「サステナブル・ウォー」です。実質、アメリカと中国による世界大戦の導入部ではないかと考える識者もいて、大きな危機感に世界は覆われています。

 

 

ぜんぜん映画『さかなのこ』の話ではないと思われるかもしれませんが、そうではないのです。この映画は「行き過ぎた資本主義」に対抗する価値観で覆われているからです。日本は海に覆われた島国ですからね。いまの状況を立ち止まって考えるチャンスです。まずは観てほしい。

 

 

一つだけ苦言を。2時間に収めて欲しかった。最近は3時間を超える映画も多いけど、この映画は子供にも観てほしい映画だと思うから。そもそも夏休みに子供に観てもらう映画として作られたんだよね? なんで9月1日に公開してんの? ワンピースとか、トップガンとか、3つずつ枠ゆずれよ。そういう貧乏臭さが日本映画の嫌なとこなんだよ。発想が貧しいんだよ。