ハノイの日本人

アイドル、ジャニーズ、サッカーなど。

アイドル楽曲派・冬季講習会。ラスト&追記

 

 

 

 

アイドル楽曲派・冬季講習会。3 - ハノイの日本人

 

前回はラップを理解するという目標を立てました。どうでしょう? 少しはとっかかりが見つかったでしょうか? 私としては、一つ掴んで欲しい事柄がありました。2曲目から5曲目までを聴いて、気づいて欲しいラップの特質があったのです。自分で気づきたい人は、これから先を読まずに、もう一度リストを聴いてください。Spotify には私があげた『冬季講習』というリストがあります。

 

 

◉冬季講習・10曲リスト。

1. Ditto / NewJeans(2022年)

2. Dopeman / N.W.A(1987年)

3. C.R.E.A.M. / Wu-Tang Clan(1994年)

4. Family Affair / Mary J. Brige(2001年)1992年デビュー

5. My Adidas / RUN DMC(1986年)

6. Loser / Beck(1993年)

7. Hold On / En Vogue(1990年)

8. Right Here - Human Nature / SWV(1992年)

9. Girl Talk / TLC(2002年)1992年デビュー

10. The Boy Is Mine / Brandy, Monica(1998年)

 

 

 

 

具体的に話しましょう。Mary J. Blige『Family Affair』を聴いてもわかることです。イントロで鳴っているリズムが最後まで続く。これはロックとは大きく違いますよね。もちろん Aメロ、Bメロ、サビなんてない。それに気づいてもらうために、2〜5曲目はループがわかりやすい曲を選びました。もう一度、同じリズムが続くを意識して、この曲を聴いてください。

 

上に乗っているラップや歌は次々と変化して行きます。でもリズムは同じです。このことに慣れる。ループに気持ち良さを感じる。それがラップを聴けるかどうかの分かれ目と言ってもいいはず。まあ『フリスタイルダンジョン』とかで、その感じはみんな知っているのか。シンプルでも、土台がしっかりしてれば、いろんな物を乗せられる。

 

 

 

冬季講習の最後の授業はロックです。Beck のとこでも少し書きましたが、HIPHOP によってロックはどんな影響を受けたかを考えてみたい。最初はこの曲を聴きましょう。ビートルズの『Come Together』です。ここでは何度も取り上げてきました。「師匠がこのサウンドで演奏してるのに、若いミュージシャンはなぜ、古いサウンドのままでいるのか?」と煽り気味に書いていたんです。

 

ビートルズのレコードは、時代、時代のサウンドにミックスし直されてきました。どの時代がいいかは聴く人次第ですが、大きな流れとしては、モノラル➡︎ステレオ➡︎空間音響と変化しています。2018年に発表されたこの『Come Toghether』は、まるで現代の R&BK-POP を聴くみたいに、音像を感じることができる。それぞれの楽器の音が干渉せず、ボーカルが真ん中に配置されている。

 

 

この空間音響的なサウンドは、いつ頃から登場したか? リストに入れた N.W.A『Dopeman』は 1987年の曲ですが、当時から空間音響的なサウンドだったかはわかりません。クラブではそういうサウンドで鳴っていたかもしれない。でも A Tribe Called Quest のエンジニアの人が、低音おもいっきり鳴らしても、ラップとぶつからないようにするのに苦労したという話は、ドキュメンタリーで観た気がします。1990年くらい? 

 

あと Quest の中心メンバー Q-Tip も登場するテイ・トウワさんの Deee-Lite『Groove in The Heart』も立体的です。テカリはまだない? 前も一度探したことがあるけど、なかなか判定は難しい。

 

 

レコードプレイヤーがあったら検証できるんだけど。空間音響的なサウンドは、2000年代後半くらいか? そう言えば、ジャネット・ジャクソン『Dosen't Really Matter』(2000年)はテカリあるサウンドだった気がする。これはジャム&ルイスのプロデュース。この動画はミックスしなおしたサウンドだけど。粒みたいのが跳ねてる。

 

 

 

ビートル師匠が数ヶ月前に出した新曲も聴いておきましょう。これケミカル・ブラザースの曲に似てるよね。ドラムが同じ感じで・・・叩き直してる。

 

 

 

では、私が作った 10曲リストです。ロックのリストを作るつもりが、ロックと他のジャンルの境界みたいな曲が集まりました。普通のロックが聴けなくなってるんです。

 

 

 

◉アイドル楽曲派・冬季講習会。10曲リスト

1. YMO『TIGHTEN UP』(1980年)

2. Johnny Cash『Cocaine Blues』

3. Bob Marley & The Wailers『KinKy Reggae』(1973年)

4. New Order『Blue Monday』(1983年)

5. Happy Mondays『Kinky Afro』(1990年)

6. The Chemical Brothers『Let Forever Be』(1999年)

7. Beasty Boys『Sure Shot』(1994年)

8. Sonic Youth『Bull In The Heather』(1994年)

9. TortoiseTNT』(1998年)

10. Boris, Merzbow『Away from You』(2020年)

11. 赤痢『夢見るオマンコ』(1985年)

 

 

1曲目は YMO 。ドラムの高橋幸宏さんが亡くなられました。ずっと闘病中だった。この曲はカヴァーですけど、東京 No.1 ダンスバンドという設定で演奏してて、なのに日本人の男たちは踊ってくれないというジョークになっています。何度も何度も「Stand up, please!」とキレ気味に繰り返されるのが最高です。いろんな意味が含まれた言葉ですよね。立ち上がらない。高橋さんのドラムがあることでジャンルを越境しています。

 

 

追記:ごめんなさい。YMO のこの曲を「大人しく聴いてる人」への批判と受け取った方がいたみたい。もう少しちゃんと書くべきでした。

 

YMO『TIGHTEN UP』に登場する「Stand up, please!」について「いろんな意味が含まれた言葉」と書きました。その中身を説明しますね。コントだからあまり説明するのも・・・と思ったんですけど。

 

恐らくこれは日本に存在しない「スタンダップコメディ」への愛を込めた曲だと思います。だから日本紳士は「スタンダップしない」となっているのです。また当時の典型的な日本人の風刺として「音楽で踊らない」人物を登場させるコント風になっている。私はそう解釈しました。ジョークだから怒らないで。

 

さらに、これだけ問題が山積みの日本で、それでも選挙がくれば、また与党が大勝する。そんな状況を思って「立ち上がらない日本人」という意味を、私自身はこの文章に忍ばせました。決して、日本人の音楽の聴き方を問題にしたわけではありません。それどころか、ループやサウンドの質感に耳を向かわせる訓練をここでやっているのです。これで伝わるといいけど。

 

 

 

2曲目、ジョニーキャッシュはカントリーミュージックの大御所ですが、90年代には RUN DMC のプロデュースでも知られるリック・ルービンのレーベルに所属しヒットを飛ばしています。私が知ったきっかけはライクーダー『Get Rhythm』がジョニーキャッシュの曲だと知ったことからです。ホアキン・フェニックス主演の映画『Walk the Line』は、ジョニーキャッシュの伝記映画でした。このタイトル曲はまんま『Walk This Way』の元ネタですね。

 

 

次、ボブ・マリーです。いまの若い人たちってレゲエは聴くのでしょうか? そういう私も久しぶりに聴きました。HIPHOPの誕生に大きく影響を与えたのがジャマイカ移民たちが持ち込んだサウンドシステムでした。ボブ・マリーはレゲエの中でもロックよりの人で、カリスマ性があり、それゆえに世界的な人気を得たのです。

 

 

New Order『Blue Monday』。元々 Joy Division というマンチェスターのバンドだったんですが、ボーカリストが自殺してしまう。その自殺を知った月曜日について書かれたのがこの曲です。私は好きな曲たくさんあるんですけど、世間的に一番人気なのはずっとこの曲ですよね。

 

 

そして同じくマンチェスターから、その曲に影響を受けてグループ名をつけた Happy Mondays です。電気グルーヴの瀧さんみたいなメンバー、ベズがいることでも知られています。80年代末から90年代前半にかけてアシッドハウスのムーブメントがイギリスで起こります。その中心が工業都市マンチェスターでした。ケミカルドラッグを服用して、ハウス、テクノなどで朝まで踊るのです。

 

法律でレイヴが禁じられるまでそのムーブメントは大きな影響を持ちました。そのシーンの中からダンサンブルなロックバンドも生まれたのです。ギター、ベース、ドラムと編成はロック的ですが、明確にループを感じることができます。さらに上の2つのバンドと同じ場所から出てきたのがケミカル・ブラザーズです。動画は上の方で紹介。

 

 

 

イギリス関係が続いたのでアメリカに行きましょう。ラップでもロックファンに人気の人たちもいます。筆頭はビースティーボーイズでしょう。特にこの曲が収録されたアルバム『Ill Communication』はバカ売れしたはず。やっぱりシャウトが必要なんでしょうか? ビースティは元々パンクバンドをやってた人たちです。

 

 

 

ソニック・ユースはどう説明するべきでしょう? パンクバンドですけど、オルタナティブという90年代に名付けられたジャンルの代表的バンドという気がします。かっこいいですよね。これはライブで観ておきたかった。

 

 

本来、HIPHOP がロックに与えた影響ということで書くつもりでした。その中でメインは「音響系」「ポストロック」を取り上げようと考えていたのです。しかし当時それほど興味がなかった。クラブミュージックであれば、クラブでの音響こそ命と言ってもいいわけです。何を今更、という感じもしました。でもロック系での影響は大きかったはず。夏までに勉強しておきます。とりあえず一番有名なグループのものを入れました。ライブの音響を聴いてみたいな。来日したら行こう。

 

 

最後2つは日本のバンドです。BORIS はなんて説明すればいい? ポストロックと言えばそうですよね。90年代から活動しているバンドで、海外ツアーもしているそうです。その BORISMerzbow が制作したアルバムが Spotify に入ってました。かっこいい。

 

Merzbow は10代の頃にライブ映像を観たことがあります。関西テレビが深夜に、大阪のライブハウスで演奏したバンドたちを1曲ずつ放送したんです。これをビデオに撮っていました。インディーズの頃の すかんち や、デランジェ、かねてつおかげ様ブラザース、など色々観ました。でも一番印象に残ったのはノイズの人たちでした。非常階段やマゾンナ、そして今回入れた Merzbow です。学校にあるような押しピンが入った金属の缶を使ってノイズを作り出していました。これが気持ち良くて何度も観ました。

 

よく K-POP の何がいいかを説明するとき、空間があって、そこに各楽器のサウンドが干渉せずに、クリアに配置されてるとか説明してました。そしたらノイズを聴けとか言ってくるロックファンがいたんです。ポップミュージックの対局にノイズがあって、狂ったサウンドを聴かせるとか思ってるわけです。でも違う。

 

ノイズにも色々あって、少なくとも Merzbow や非常階段は、奇をてらって音楽をしてるわけではない。放尿とか、ハプニング的なこともするけど、そこには音像であったり、サウンドの質感だったりを追及する姿勢がある。私もそれほど聴いてる訳ではないけど。

 

 

最後に京都の高校生パンクバンド赤痢です。先日、サエキけんぞうさんが NHKラジオで、つボイノリオ金太の大冒険』をかけたと話題でした。つボイさんは名古屋で有名な方ですが、京都の深夜放送でも熱狂的なファンがいたんです。猥歌を中心に、替え歌をリスナーが作りカセットで送ってくるコーナーが人気でした。時には PTA おばさんの苦情電話が入り、生放送でその喧嘩を流したり。赤痢のメンバーも聴いてたかな? 金太へのアンサーで女性器の歌を入れときます。